シャトー・イガイ・タカハの新作ワインをグレッグ・ブリュワーが解説(後編)
「シャトー・イガイ・タカハの新作ワインをグレッグ・ブリュワーが解説(前編)」の続きです。
セミナーは、サンタ・リタ・ヒルズの特徴の説明から始まりました。
カリフォルニアは暖かいところというイメージが強いですが、意外と緯度は高く、サンタ・リタ・ヒルズの緯度は日本で言うと仙台と同じくらい。北になる分、夏場の日照時間は長くなります。
サンタ・リタ・ヒルズをカリフォルニアの中でも特別な地域にしている最大の理由が山脈の向きです。ナパとソノマを隔てるマヤカマス山脈に代表されるように、カリフォルニアのほとんどの地域で山脈は海岸と平行、すなわち南北に向かいます。ところが、ここは海岸線が折れ曲がることによって山脈が東西に走っています(下の図で赤いのがサンタ・バーバラ郡でサンタ・リタ・ヒルズはこの中にあります)。
その結果、海からの風や霧が非常に入り込みやすく、涼しい気候になります。特に海からの風はすさまじく、この地のブドウの木は全部東側に傾いて生えているのだそうです。
また土壌も海の砂と海からの珪藻土が主体(グレッグの元のワイナリDiatomは珪藻の意)。ちょっと塩っぽいような海のニュアンスがワインにも現れます。グレッグは、これが海に囲まれた日本と似たところがあるとしていました。
ワイン作りでは日本の思想に影響を受け、ミニマリズム的な考えを持っています。
一般的なワイン作りでは、収穫したブドウに樽やバトナージュ(発酵中にワインと澱を混ぜること)、マロラクティック発酵、さらにシャンパーニュではドサージュ(瓶内の澱を抜いたあとにワインやシロップを加えること)といった、味わいを付加する方向に様々な手を加えます。
これに対して、グレッグはブドウをしっかり熟した状態で収穫し、そこに味を加えるのではなく、むしろ引き算によって味わいを引き出していくことを志向しています。「引き算の料理」と言われる日本食とグレッグのワインに共通するところです。
試飲は3つのシャルドネから始まりました。「波紋」はブドウ畑にかかる霧のイメージから、「美夜」はブドウ畑に行ったときに月がきれいだったところから名付けたと、杉本さんから説明がありました。また、美夜の畑はSweeney Canyonのクローン、波紋の畑はSea Smokeのクローン、侍の畑はClone4とHydeのクローンが植わっているとのことでした。
シャルドネ3種はどれも柑橘系の酸味を強く感じました。一番女性的な味わいだという美夜はミネラルっぽさを比較的強く感じ、一番丸い味わいだという波紋はハーブや完熟していないパイナップルのような味わいを感じました。侍は柑橘系の中でもレモンよりもオレンジっぽい感じ。温度が上がるとトロピカルフルーツのような味わいも出てきました。
ピノ・ノワールでは除梗について解説がありました。
グレッグが作るワインの中でBrewer-Cliftonでは100%除梗なし(全房発酵)、Melvilleでは1/3除梗なしにしているとのこと。サンタ・リタ・ヒルズではとてもよく熟したピノ・ノワールが収穫できますが、完全に除梗して作るとブルーベリーなど青系の果実のイメージになるといいます。除梗しないことによって青系の果実味がラズベリーなど赤系の果実味になり、ワインがフレッシュな味わいになるとのことです。シャトー・イガイ・タカハのピノ・ノワールでは「園」だけ除梗なしで作られています。
このほか、収穫するときの酸はやや低めになりますが、マロラクティック発酵をしないことで酸味を維持しているとのことでした。
ピノ・ノワール3種では全房発酵の「園」が一番タニック。イチゴやラズベリーに加え、海苔のような海を思わせるフレーバーを感じました。「風音」もややタンニンを強く感じました(若いせいもあるのでしょう)。赤系の果実に加えてミネラルっぽさを感じました。「鼓動」は一番丸い感じ。赤系の果実に加えてブルーベリーっぽさもあり、いちごジャムのようなフレーバーもありました。
個人的には、今飲むなら「波紋」「鼓動」。熟成を楽しむなら「美夜」「園」かなあと思いました。
最後にグレッグと通訳を務めた香奈さん。
セミナーは、サンタ・リタ・ヒルズの特徴の説明から始まりました。
カリフォルニアは暖かいところというイメージが強いですが、意外と緯度は高く、サンタ・リタ・ヒルズの緯度は日本で言うと仙台と同じくらい。北になる分、夏場の日照時間は長くなります。
サンタ・リタ・ヒルズをカリフォルニアの中でも特別な地域にしている最大の理由が山脈の向きです。ナパとソノマを隔てるマヤカマス山脈に代表されるように、カリフォルニアのほとんどの地域で山脈は海岸と平行、すなわち南北に向かいます。ところが、ここは海岸線が折れ曲がることによって山脈が東西に走っています(下の図で赤いのがサンタ・バーバラ郡でサンタ・リタ・ヒルズはこの中にあります)。
その結果、海からの風や霧が非常に入り込みやすく、涼しい気候になります。特に海からの風はすさまじく、この地のブドウの木は全部東側に傾いて生えているのだそうです。
また土壌も海の砂と海からの珪藻土が主体(グレッグの元のワイナリDiatomは珪藻の意)。ちょっと塩っぽいような海のニュアンスがワインにも現れます。グレッグは、これが海に囲まれた日本と似たところがあるとしていました。
ワイン作りでは日本の思想に影響を受け、ミニマリズム的な考えを持っています。
一般的なワイン作りでは、収穫したブドウに樽やバトナージュ(発酵中にワインと澱を混ぜること)、マロラクティック発酵、さらにシャンパーニュではドサージュ(瓶内の澱を抜いたあとにワインやシロップを加えること)といった、味わいを付加する方向に様々な手を加えます。
これに対して、グレッグはブドウをしっかり熟した状態で収穫し、そこに味を加えるのではなく、むしろ引き算によって味わいを引き出していくことを志向しています。「引き算の料理」と言われる日本食とグレッグのワインに共通するところです。
試飲は3つのシャルドネから始まりました。「波紋」はブドウ畑にかかる霧のイメージから、「美夜」はブドウ畑に行ったときに月がきれいだったところから名付けたと、杉本さんから説明がありました。また、美夜の畑はSweeney Canyonのクローン、波紋の畑はSea Smokeのクローン、侍の畑はClone4とHydeのクローンが植わっているとのことでした。
シャルドネ3種はどれも柑橘系の酸味を強く感じました。一番女性的な味わいだという美夜はミネラルっぽさを比較的強く感じ、一番丸い味わいだという波紋はハーブや完熟していないパイナップルのような味わいを感じました。侍は柑橘系の中でもレモンよりもオレンジっぽい感じ。温度が上がるとトロピカルフルーツのような味わいも出てきました。
ピノ・ノワールでは除梗について解説がありました。
グレッグが作るワインの中でBrewer-Cliftonでは100%除梗なし(全房発酵)、Melvilleでは1/3除梗なしにしているとのこと。サンタ・リタ・ヒルズではとてもよく熟したピノ・ノワールが収穫できますが、完全に除梗して作るとブルーベリーなど青系の果実のイメージになるといいます。除梗しないことによって青系の果実味がラズベリーなど赤系の果実味になり、ワインがフレッシュな味わいになるとのことです。シャトー・イガイ・タカハのピノ・ノワールでは「園」だけ除梗なしで作られています。
このほか、収穫するときの酸はやや低めになりますが、マロラクティック発酵をしないことで酸味を維持しているとのことでした。
ピノ・ノワール3種では全房発酵の「園」が一番タニック。イチゴやラズベリーに加え、海苔のような海を思わせるフレーバーを感じました。「風音」もややタンニンを強く感じました(若いせいもあるのでしょう)。赤系の果実に加えてミネラルっぽさを感じました。「鼓動」は一番丸い感じ。赤系の果実に加えてブルーベリーっぽさもあり、いちごジャムのようなフレーバーもありました。
個人的には、今飲むなら「波紋」「鼓動」。熟成を楽しむなら「美夜」「園」かなあと思いました。
最後にグレッグと通訳を務めた香奈さん。