フランスのボルドーのワインでは“プリムール”(正確にはアン・プリムール、en primeur)と呼ばれる販売方法が根付いています。一種の先物取引で、例えば2014年のワインであれば2015年の6月頃にプリムールの価格が発表されます(ロバート・パーカーの評価がこの価格に大きく影響するので、ボルドーにおけるパーカーの存在感は極めて大きくなっています)。消費者はプリムールを扱う業者や小売店を通して購入を予約します。実際にワインが手に入るのは約2年後になります。

ワイナリーにとっては、熟成中に資金が回収できることによって、経営的なメリットがあり、消費者にとってはリリース時よりも安くワインを買えるチャンス(高くなる場合もあります)となります。

このような仕組みをナパのレアワインにも導入しようという試みが始まっています(Trying to Create an American Model of Wine Futures | News | News & Features | Wine Spectator)。

E-Cepという、ナパ版のサービスを立ち上げたのはセルジュ・マルキエとサリー・ウィルキンソンのカップル。マルキエはハーバード大でゲーム理論の博士を鶏、ゴールドマン・サックスのラテンアメリカフィナンシャルグループのトップでした。ウィルキンソンはドイツ銀行の英国エコノミストで英国保守党の財務アドバイザーを務めていました。

このように財務のプロである2人が立ち上げたサービスなので、消費者はワインそのものではなく債権を購入するという形になります。その債権がリリース時にワインを提供することを保証します。

2人はパイン・リッジの共同創業者であるナンシー・アンドラス・ダックホーンの協力を得て、参加するワイナリーを募りました。その結果、カーター・セラーズ、ダナ、スケアクロー、アウトポスト、ダンシング・ヘアーズ、コンティニュームといった超一流のワイナリーが加わることになりました。

2013年11月に始まり、2014年2月、4月、6月、9月、11月とこれまで6回募集をかけています。例えば2014年2月に募集されたコンティニュームの場合、2012年のワイン3本が540ドルとなっています。

また、現在募集中のものだとダンシング・ヘアーズの2013年ダブルマグナムが1本680ドル、コンティニュームの2013年エッチング入りダブルマグナムが1本1485ドル、カーター・セラーズの“The G.T.O”2013のダブルマグナムが1本1198ドルなどとなっています。値段はメーリングリストで購入するのと大きくは変わらないといっていいでしょう。

この仕組み、消費者にとってはメーリングリストのように毎年購入することを強いられないのがメリットです。例えば、子供のバース・ヴィンテージだけ買いたいといったニーズに応えられます。ワイナリーにとっては、例えばマグナムやダブルマグナムといった、どれだけ売れるかわからないフォーマットを売りやすいというメリットがあります。ただし、メーリングリストで即完売となるようなワイナリーにとって、この仕組みを使うメリットがどれだけ感じられるかは未知数です。

なお、日本からも購入可能です。最初にE-Cepに登録する必要があります。