フィリップ・メルカ初来日セミナーの続きです。

前半は「フィリップ・メルカ初来日、昼夜の寒暖差が少ない畑のメリットとは?

前半ではナパのメティス、ソノマのメケラを説明しました。ちなみに自社畑はナパのモンブルーとソノマのメケラの2つと言っていました。

メルカの第3のワインがマジェスティック(Majestique)。現在はパソ・ロブレスのシラーとフランスのサンテミリオンのワインがあります。パソロブレスのパデレフスキー・ヴィンヤード(Paderewski Vineyard)は、表土近くから石灰岩がある、カリフォルニアでは貴重な石灰岩の地層があります。

サンテミリオンのワインは、サンテミリオンで醸造、瓶詰めまで行い、米国に輸入して販売しているそう。日本には輸入されていません。

最後のワインがCJ。ワイナリーを始めた1996年に生まれた長女のクロエ(Cloe)と、その2年後に生まれた長男のジェレミー(Jeremy)の頭文字を取ったワイン(カベルネ・ソーヴィニヨン)。これだけは複数の畑のブレンドになっています。メインになるのはナパのソーダ・キャニオンにある2つの畑。ソーダ・キャニオンはAVAではなく、スタッグス・リープとアトラス・ピークに挟まれたあたり。若いうちから飲みやすいワインを目指しています。
今回のワイン
さて、メルカのワインというと前回も書いたように「眼」のデザインが強烈な印象ですが、以前は上の写真の一番右のようなラベルでした。

メルカの眼

現在のラベルに変えたのはマーケティング的な理由だとのこと。シカゴのデザイン・ハウスから提案を受けて採用したそうです。写真を撮ったときはシカゴで飲み過ぎていて、二日酔いだったとのこと。

眼のデザインには2つの意味が隠されています。1つはメルカが隅から隅まで目を行き届かせて作ったワインであること。もう1つはメルカが見る将来のビジョンを表しています。

また、このラベルにしたことで、それまではメティス以外のワインがメルカのワインであることをアピールしにくかったのが、だれが見てもメルカのワインだと分かるようになったという副次的な効果もあったそうです。

奥さんのシェリーさんは「クレイジー・アイボール」(笑)と言っていましたが、良きにしろ悪しきにしろ、とにかく印象に残り覚えてもらえるのは事実だそうです。

正直、これまでこのラベルで敬遠していた面がないわけでもなかったのですが、今回のセミナーでそれは払拭されました。また、フィリップ・メルカ本人はラベルと比べて非常に穏やかで優しい方でした。

さて、いよいよ試飲です。

最初は唯一の白ワイン。メケラのプロプライエタリー・ホワイトです。ソーヴィニヨン・ブランが97%で残りはミュスカデル。

これは、これまでのソーヴィニヨン・ブランの常識を覆すようなワインでした。驚くほどに濃厚で香気高いワイン。ヴァニラやライチの風味を感じます。果実の甘みと酸が一体となってうっとりするよう。余韻がすごく長いワインです。

このワイン、リーからエキスを十分に抽出できるように細長い(葉巻型と呼んでいました)特別な樽で熟成させています。

素晴らしいワインですが、価格も3万円も極めて高いです。メルカが作るもう1つのハイエンドのソーヴィニヨン・ブランであるレイルのジョージアと飲み比べてみたく思いました。

2番めは同じメケラのプロプライエタリー・レッド。2012年はWine Advocate誌で98点とメルカのワインでは過去最高評価を得ています。カベルネ・フランが51%、メルローが49%。シュヴァル・ブランを意識して作っているワインだそうです。

非常にシルキーでふくよかなワイン。若いワインでタンニンもしっかりとしているのですが、尖ったところをまるで感じさせないワイン。これは素晴らしいです。

と、いきなり最初の2つのメケラでノックアウトされてしまいました。

3番めはCJ。非常にきれいなワインで、若いうちから飲みやすい味わい。スパイスの風味もあり、高級感ある味わいです

4番めはマジェスティックのシラー。1/5だけ除梗なしで作っているそうです。意外なほどタニックで引き締まった味わい。カリフォルニアのシラーっぽくはなく酸が伸びてくる感じがします。

5番めはメティスのジャンピング・ゴート。2012年はカベルネ・ソーヴィニヨンが62%でメルローが27%、プティ・ヴェルドが11%という構成。セパージュの比率は年によってかなり変わるそうです。カベルネ・ソーヴィニヨン系としてはかなりエレガントで赤系の果実をかなり強く感じます。タンニンも強く、数年熟成させてから飲みたいワインです。

6番めは今回特別に提供された2006年のメティス。83%がカベルネ・ソーヴィニヨンということでブルーベリーなど青系の果実を2012年よりは強く感じました。とてもきれいに熟成しています。

試飲のワイン

今回はメティスも美味しいのですが、それ以上に最初のメケラの2本でクラクラきてしまいました。