ナパでも有名なワインメーカーの一人であるフィリップ・メルカ(Philippe Melka)がチェリー夫人とともに初来日しました。前後編でセミナーと試飲をレポートします。

(メルカの経歴についてはワインメーカーの系譜(9)――フィリップ・メルカ「アメリカンドリームを目指してフランスを飛び出す」 を参照)
フィリップ・メルカ夫妻

今では約20ものワイナリーのコンサルタントをしているというメルカですが、今回は自身のワイナリーであるメルカ・ワインズのワインを中心に解説をしました。

セミナー中

ボルドー出身のメルカは、ボルドーでシャトー・ペトリュスなどで働き、ペトリュスのオーナーであるムエックスによって、ドミナスで働くためにカリフォルニアに派遣されました。

奥さんのシェリーはカリフォルニアのリッジなどで働いていましたが、二人は結婚し、1996年にメルカ・ワインズを始めています。メルカ・ワインズの精神としてはカリフォルニアのワインにフランスのスピリットやフィロソフィーを入れたワインを作ることだそうです。

メルカのワインは大きく4つにわかれています。メインになるのがメティス(Metisse)。ナパの単一畑でテーマカラーはブラウン。メケラ(Mekerra)はソノマのナイツ・ヴァレーのワイン。テーマカラーはブルー。マジェスティック(Majestique)はそれ以外の地域で、現在はパソ・ロブレスのシラーとフランスのサンテミリオンがあります。

このほか、子供の名前の頭文字を取ったCJというワインがあり、メルカの中では一番の普及ラインになっています。こちらはナパのソーダ・キャニオンのブドウを使っています。

メティスは現在ナパの二つの畑から単一畑のボルドー系ブレンドを作っています。ジャンピング・ゴート(Jumping Goat)はセント・ヘレナの西側の斜面、スポッツウッドの隣にあります。川が近く、ボルドーのグラーヴのような石ころ混じりの土壌があることが、ここを選んだ理由。フランス流にブドウの木を密植させています。また、ここはセント・ヘレナのダウンタウンから近く、ボルドーの街の近くにあり、街の熱で夜間の気温が上がるというオーブリオンの環境にちょっと似ているそうです。

もう一つのモンブルー(Montbleu、フランス語っぽい名前ですが、奥さんの旧姓だそう。自分よりフランスっぽい苗字だったとメルカ氏は笑っていました)。ここは自社畑で、隣接した土地に現在ワイナリーを建築中だとのこと。ここは2012年から醸造と新しい畑で、最初の年はわずか80ケースしかできなかったとのこと。ここは火山性の地層で、ガラスのようなキラキラした成分を含んでいるとか。かつては先住民族が、そのガラスで装飾品をつくっていたそうです。水の層が深く、根も深く張るので、ほとんど灌漑なしの栽培ができるそうです。ここもセント・ヘレナですが、谷の東側で軽い西向き斜面になっています。

二つめがメケラ。ソノマのナイツ・ヴァレーといえばピーター・マイケルが有名ですが、それよりもさらに標高が高いところにある畑です。標高750mというからかなり高いところですね。小さな畑ですが、粘土質の土壌と火山性のところがあり、粘土質にはソーヴィニヨン・ブランやメルローを、火山性の土地にはカベルネ・フランやシャルドネを植えています。

ここの畑の特徴は昼と夜の温度差が小さいこと。霧が届かない土地なので、夏の朝7時に20℃くらいと、比較的高い気温です。標高が高いので、昼間はさほど温度が上がらず、夜も下がりません。ブドウの実が一定のスピードで熟成するので、ピンポイントで収穫日を決められるとか(収穫日は1日ずれてもダメだそうです。大学で収穫日の研究をしたそうで、このあたりはかなりこだわりがありそうでした)。

よく、「この畑は昼夜の寒暖差が大きくて、ブドウが酸を保ったまま成熟する」などといった話を聞きますが、寒暖差が少ないことを「売り」にするのは珍しいと思います。この点については「どちらがいい悪いではなく、スタイルの違い」だとメルカは言います。温度差がある方が濃いワインにはなるようです。メルカの目指すエレガントなスタイルには、こちらの方が合っているのかもしれません。実際メケラのワインは素晴らしかったので(詳しくは後編で)、こういうスタイルもあるのだなと勉強になりました。カベルネ・ソーヴィニヨンではなくメルローやカベルネ・フランであることも関係するのかもしれませんが、その点については質問できませんでした。

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さて、メルカのワインというとラベル上部の「眼」が印象的です。2007年から採用しているこのラベルの眼はメルカ自身のものですが、メティスが茶色い眼なのに対して、メケラはブルーの眼になっています。メケラのテーマカラーであるブルーに合わせて加工したのだそうです。

眼の話は後編で、もっと詳しく取り上げます。

サインをするメルカさん
おまけで、船橋・山城屋の積田さんがSFジャイアンツのジャージにサインをもらっているところです。山城屋さんのサイト「Cheers!カリフォルニアワイン」にはジャージの写真がたくさん載っていますが、サインをしているところの写真はレアではないかと。