日本では「自然派ワイン」というと何やら高尚で、優れたワインのように受け取られることが多くあります。実際、ワインの味よりも「自然派」かどうかの方が重要だと思う人も少なからずいるようで、「自然派ワイン」という言葉はマーケティングのために使われていると言っても過言ではないようにさえ見えます。

ビオディナミを歌うレイモンドの畑

ところが、米国、特にナパでは「有機栽培」や「ビオディナミ(バイオダイナミクス)」という言葉はむしろこそこそ使われているようなのです(Organic Wines Keep it on the Lowdown | Wine News & Features)。実際にはかなり多くのワイナリーがそれを採用しているにもかかわらず。

米国では有機栽培は流行っていないのかというとむしろ逆で、スーパーマーケットなどでは有機栽培のものを積極的に扱う店が人気になり、有機栽培の果物などを高いお金を払って買っています。

では、なぜワインに関しては有機栽培と積極的にうたわないワイナリーが多いのでしょう。

それはかつてあった酸化防止剤を使わない「有機ワイン」への苦い思いがまだ消費者の印象に残っているからのようです。また、有機栽培とうたったからといって 高い値段を払ってくれるということもあません。

「有機栽培」を標榜しているガーギッチ・ヒルズによると、欧州では実際に「有機」を歌うことでよく売れるとのことで、米国とは状況が大きく異るようです。

ナパの人気ワインメーカーの一人であるスティーブ・マサイアソンは、有機栽培を行っていますが、その認定を受けていません。認定を受けないのは、自由度を失ってしまうことなどの理由があるから。一方で認定を受けないのは「怠慢だ」と考える人もいるようです。

最後に、ちょっと面白い話があります。ガーギッチ・ヒルズで自社畑の健康なブドウと葉っぱの病気に侵されたブドウとでワインを作ってみたところ、病気に侵されたブドウで作った方がずっと美味しかったとか。病気に侵された方が収量が少なくなるのが1つの理由のようです。

スティーブ・マサイアソンも、ブドウの葉が多少白カビ病に侵されてもあまり気にしないと言っています。

一般に、有機栽培にすると収量は減ります。それを受け入れられるか、コストに転嫁できるかといったことも、それを採用できるかどうかに影響しています。

有機栽培をするかどうかという話と、そのマーケティングの話と、ややごっちゃになっている感はありますが、興味深い記事でした。