カリフォルニアのワインメーカーの中でも、今一番尊敬され、引く手あまたな一人であるのがトーマス・リヴァース・ブラウン。現在45歳を迎えたばかりでありながら、これまでロバート・パーカーのWine Advocate誌でいわゆる「パーカー100点」を20回も取っているのです(中にはパーカー以外のレビュアーがつけたものもあります)。そのうち17回はシュレーダー(Schrader Cellars)が占めていますが、それ以外にもマイバッハ(Mybach)が2回、アウトポスト(Outpost)が1回となっています。

トーマス・リヴァース・ブラウン

ナパのカリストガにあるワインショップでワインのキャリアを始めたトーマスは、1997年にはターリー(Turley)のアシスタント・ワインメーカーに抜擢。2000年にはアウトポストやシュレーダーでワインメーカーになります。当時は無名だったこれらのワイナリーですが、瞬く間に頭角を現し、2008年12月には最初のパーカー100点を獲得しました。当時37歳。最年少でのパーカー100点の記録はいまだに破られていません。また、2007年のシュレーダーのOld SparkyとCCSという2つのワインはWine Advocate誌とWine Spectator誌の両方で100点を取った稀有のワインとなっています。

現在はコンサルタントとして契約しているワイナリーだけでも約40。毎週のように依頼の電話はかかってくるもののほとんど断っているという彼はあまりにも多忙で今回が初来日。
トーマス・リヴァース・ブラウンのコンサルトするワイナリー(一部)

開かれたセミナーでは、彼が妻のジュヌヴィエーヴ・マリー・ウェルシュと作るリヴァース・マリー(Rivers Marie)のピノ・ノワール6種を試飲しました。
リヴァース・マリー
試飲の順序はフラグシップのスーマ・オールド・ヴァイン(Summa Old Vine)が最初という異例の構成。トーマス自身の希望で、軽いワインから重いワインへという順番にしたいというのがその理由です。

スーマはソノマ・コーストでも太平洋から約10kmしか離れていないかなり冷涼な地区にある畑で、1980年代から1990年代にかけてはウィリアムズ・セリエムがここのピノ・ノワールを作って人気を博しました。すぐ南側にはシャルドネで有名なティエリオットの畑があり、リヴァース・マリーはそこのシャルドネも作っています(余談ですが、奥さんはシャルドネ好きで、ティエリオットのシャルドネもリヴァース・マリーで作っています。そちらはトーマスではなく奥さんの意見が多く取り入れられているようです)。

2002年にここのブドウを入手できるようになったのがリヴァース・マリーの発端で、最初はわずか130ケースだったそうです。2010年には畑を買い取り、完全に自社畑として運営しています。

スーマ・オールド・ヴァインは新樽率100%なのですが、それを全く感じさせない作り。紅茶や落ち葉のような香りにオレンジのニュアンス。控えめな赤系の果実味。豊かな酸。非常に複雑な味わいです。100点のカベルネを作る人というと、濃いワイン一辺倒なのかと思いがちですが、驚くほどにエレガントなワインです。

2番めに試飲したスーマは、スーマの畑の中でも比較的樹齢が若いブロックのもの。味わいは、1番めのワインをやや親しみやすくしたような感じ。わずかに青系の果実も感じられる分、最初のワインよりは重くなっています。生産量わずか60ケース。

3番めはソノマ・コーストのピノ・ノワール。主に使われているのはリドル・ランチという畑のピノ・ノワール。それ以外に、単一畑に入れられなかったワインや、スーマの畑の樹間に植えられた樹の実などが使われています。

新樽率0%。豊かな果実味と酸。美味しいです。

長くなったので後編に続きます。