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ダックホーン/パラダックス・セミナー 赤ブレンド老舗の気概

さて、後半は試飲です。まず着席でパラダックス(Paraduxx)のワインを5種試飲し、その後は約20種のダックホーン傘下のワインを試飲しました。

パラダックス、日本で販売しているのはメインのカベルネ・ソーヴィニヨンとジンファンデルのブレンドだけですが、そのほかに10数種類のブレンドを作っています。今回は、その中からサンジョベーゼ、テンプラニーリョ、マルベック、シラーのブレンドを試飲しました。

まずはジンファンデルとのブレンド。カベルネ・ソーヴィニヨンが65%で、ジンファンデルが30%、メルローが5%です。とても色が濃く、ブルーベリーやカシスなど青系のフルーツにペッパーなどのスパイスを感じます。タンニンも酸もかなり強く、ジンファンデル・ブレンドでありながら甘みはあまり感じません。ボリューム感もストラクチャーもあるワイン。このストラクチャーはやはりカベルネ・ソーヴィニヨン中心のブレンドだからでしょうね。アルコール度数は14.9度とそこそこ高いですが、ワインは重さを感じません。酸が効いているからでしょうね。

これ定価6000円は安いです。カベルネ・ソーヴィニヨンでこのレベルだったら1万円してもおかしくないです。

ちょっと脱線しますが、「赤ブレンドのブームは追い風か」という質問をしたのですが、「確かに追い風である」と。ただ「一番売れているオリン・スイフトの『プリズナー』はパラダックスではなく(もう少し普及価格帯の)デコイ(Decoy)とぶつかるワインだ」とのこと。

実際、米国の価格だとパラダックスの方が10数ドル高いのですが、実は日本の価格だとプリズナーはパラダックスの倍もします。1万2000円台なのです。ちょっとびっくりな値段で、ドンさんにそれを教えたら目を丸くしていました。

それでもプリズナー、売れているようですが、それだったらパラダックスの方がずっと上、と思います。

さて、次のサンジョベーゼとのブレンドですが、カベルネ・ソーヴィニヨンは先日ガロに売却されて話題になったステージコーチのもの。サンジョベーゼはアンティノリから買っているそうです。

これはかなりガチガチのワイン。タンニン強く、土っぽさを感じます。と書くとおいしくなさそうですが、個人的にはかなり気に入りました。熟成にかなり時間がかかりそうではありますが。

次のテンプラニーリョとのブレンドは、やや軽く、ボディーにしなやかさを感じます。
4本目のマルベックとのブレンドもやや軽さを感じます。スパイシーな香りがありますが、ストラクチャーはやや軽く、甘酢っぽさもあります。

最後はハウエルマウンテンのシラーのブレンド。これはパワフルでタニック。ヴィナスのヴィンヤード・マップで調べたところ、ダックホーン所有の畑はハウエル・マウンテンの雄Dunnの畑の隣にあるそうです。これはタニックになるわけです。ステージコーチと同様、これも明らかに山のワイン。美味しいです。

なかなか個性的な5本で面白かったですが、さすがにジンファンデルとのブレンドはよくできているなあと思いました。

その後はダックホーンの6ブランドの試飲です。まずはデコイ。2014年のものが6種類(ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、ピノ・ノワール、ジンファンデル、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン)です。

白では、ほのかに甘みを感じるソーヴィニヨン・ブランが好印象。赤ではややエレガント系のジンファンデルと、ダックホーンの代名詞的品種であるメルローが好印象。

次はロシアン・リバー・ヴァレーのマイグレーション(Migration)とメンドシーノのアンダーソン・ヴァレーにあるゴールデンアイ(Goldeneye)のピノ・ノワール組。

ゴールデンアイのピノ・ノワール ゴーワン・クリークはかなりのおいしさ。ただ、価格も1万1000円とかなりします。一方、マイグレーションのピノ・ノワール ロシアン・リバー・ヴァレーは5700円とそこそこの価格でおいしいです。コスパを重視するならマイグレーションがお薦め。

次はワシントン州のキャンバスバッグ(Canvasback)。2014年のカベルネ・ソーヴィニヨン レッド・マウンテンは、カリフォルニアのカベルネとは印象が異なる、引き締まった味わい。これもかなりおいしいです。果実味よりも複雑さとかストラクチャーとかを重視するなら、お薦めです。5500円という価格もいいところではないでしょうか。

最後は本家本元のダックホーン。白はソーヴィニヨン・ブランに、近年ついに作り始めたシャルドネ。

ソーヴィニヨン・ブランは草っぽさとかグレープフルーツの風味が、いかにもソーヴィニヨン・ブラン。シャルドネもバランスよく、予想以上においしい。

赤はナパ・ヴァレーのメルロー、メルローのスリー・パームス、カベルネ・ソーヴィニヨン、ザ・ディスカッションという赤ブレンド(ボルドー系)。

ナパ・ヴァレーのメルローはさすがに上手にまとめているなあという印象。
そしてスリー・パームスはやっぱりこの日のハイライト。90年代のメルローブームのときに粗悪なメルローに山ほど当たってきた私としては、映画「サイドウェイ」のマイルズのように「くそったれなメルロー」と言いたい気持ちはよくわかるのですが、このメルローは文句なし。しなやかでエレガント、でもしっかりとストラクチャーもある。1万4000円はもちろん安い価格ではないですが、同価格帯のカベルネ・ソーヴィニヨンを考えたらこちらを選びたくなるケースはままあるでしょう。

カベルネ・ソーヴィニヨンなども悪くはないですが、あえてダックホーンでそれを選ぶ理由は少ないような気がしてしまいました。それだけメルローが美味しいということです。