10月23日に東京で、10月26日には大阪で、インポーター4社による「ニュー・カリフォルニアワイン」をテーマにした試飲会が開かれました。ニュー・カリフォルニアワインというのは2013年に、当時SFクロニクル紙のワイン・エディターだったジョン・ボネ(現在は独立)が書いた同名の本から呼ばれるようになったもので、従来高級なカリフォルニアワインの象徴であった「爆発的な果実味を中心とした濃厚な味わい」を中心とした価値観から脱却したワイン作りをするさまざまな生産者を取り上げていました。解散してしまったIPOB(In Pursuit of Balance)もこの本から大きな影響を受けていました。

ただバランス重視というのはニュー・カリフォルニアワインの1つの側面であって、それ以外にも土着品種の見直しなど、ニュー・カリフォルニアワインには多様な要素があります。結果として今回の試飲会はIPOBの試飲会と比べてもさまざまなカリフォルニアワインの姿が出ていたように思います。

前置きが長くなりましたが、4社(中川ワイン、富士インダストリーズ、布袋ワインズ、ワイン・イン・スタイル)の中から中川ワインと富士インダストリーズのワインをまず紹介しましょう。
Au Bon Climat@New California試飲会
オー・ボン・クリマは90年代に堀賢一さんが、ブラインド・テイスティングで多くのソムリエがオー・ボン・クリマのピノ・ノワール「イザベル」をロマネ・コンティと間違えたというエピソードを披露したことから、すごい人気を博しました。近年は昔ほど話題には上りませんが、良質なワイン作りを続けています。シャルドネ「ニュイ・ブランシェ」はかつては、「果実味たっぷりで樽を効かせた」スタイルでしたが、現在はバランスが取れたワイン作りになっています。とはいえ、新樽もある程度(以前聞いたときは60%という話でした)使っていますし、マロラクティック発酵もしているクラシックなシャルドネのスタイルですが、やり過ぎにならないところがすごくいいワインだと思います。もっと評価されていいワインだといつも感じます。

Lioco@New California試飲会
IPOBの中心メンバーだったワイナリー。IPOBの試飲会では、確かにワインはバランスが取れておいしいのですが、逆にアルコール度数や果実味を抑える方向にワインの焦点がいってしまっていて、複数試飲していると単調に感じられてしまうこともなきにしもあらずでした。このシャルドネ「エステロ ロシアン・リバー・ヴァレー2014」は、そこに陥らず、果実味を含んだ様々な要素が現れていると思います。ピノ・ノワールの「ラグーナ ソノマ・コースト2013」もお手本的においしいワインでした。

Rhys@New California試飲会
リースのシャルドネ「アルパイン・ヴィンヤード2014」は、いわゆるミネラルっぽい味わいを持ったワイン。果実味もあるのですが、それ以外の味わいが重厚さ(味が重いということではなく)を出しています。ピノ・ノワールの「ホースシュー・ヴィンヤード2014」も果実味以外の、落ち葉やなめし革のような味わいをしっかりと持ったワイン。熟成が楽しみなタイプのピノ・ノワールです。

Mount Eden@New California試飲会
マウント・エデンのシャルドネ、ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨンはどれもハイレベルで長熟が可能なスタイル。今回は特に山カベスタイルのカベルネ・ソーヴィニヨンがいい感じでした。

リースとマウント・エデンはともにサンタ・クルーズ・マウンテンズのワイナリー。この地域にはほかに長熟なカベルネ・ソーヴィニヨンで知られるリッジもありますし、今はこの地域を去ってしまいましたが高品質なシャルドネやピノ・ノワールでIPOBのメンバーだったヴァーナーもありました。ニュー・カリフォルニアワインとこの地域との相性がいいのか、気になるところです。

ここからは富士インダストリーズのワインです。中川ワインがシャルドネやピノ・ノワールを中心としたある意味トラディショナルなセレクションだったのに対し、ここのワインはもっととんがっています。

Mo-Ma@New California試飲会
今回、日本に届いたばかりというのがラ・クラリーヌ・ファームのワイン。シエラ・フットヒルズにあるこのワイナリーは日本の「自然農法」提唱者である福岡正信の影響を受けた農法を実践しています。一時はバイオダイナミクスの認証まで受けましたが、「プレパレーション」を多用したその方法はむしろ自然ではないということで、この農法に行き着いたとか。ワインはスペイン系の品種を使ったものが多いようです。「モマ(Mo-Ma)」というこのワインは赤ワインを作るムールヴェードルと白ワインを作るマルサンヌの頭文字を2文字ずつ取ったもの。収穫後に一緒にプラスティック製タンクに入れて天然酵母で発酵、そのまま熟成して瓶詰めしているとのこと。色はロゼというより薄い赤で、「うすうま」という言葉がよく似合うワイン。癖になりそうな味わいです。


Liquid Farm@New California試飲会
リキッド・ファームはサンタ・リタ・ヒルズのワイナリーで、自然なワイン作りを志しています。「ホワイトヒル シャルドネ2014」はシャブリを意識しているといいますが、オレンジやクリームの味わいもあり、おいしいシャルドネ。もう1つの「ゴールデンスロープ シャルドネ2014」はとても旨味を感じるシャルドネ。どちらもおいしいです。

Broc Cellars@New California試飲会
アーバン・ワイナリーとして何回か紹介したブロック・セラーズはカリフォルニア各地の知られざる畑からワインを作っています。古い畑や急斜面など、非常にユニークな環境のものが大多数。「スパークリング・シュナン・ブラン2016」はパソ・ロブレスにあるシェル・クリーク・ヴィンヤードという有機栽培の畑のもの。植樹は1972年というからかなり古い畑です。やわらかな酸でクリーミーなスパークリング・ワイン。

Love White@New California試飲会
Broc Cellars Zinfandel@New California試飲会
ブロック・セラーズからあと2本紹介します。ラブ・ホワイトはここの入門的ワイン。オレンジの風味。とても飲みやすいワイン。ここのワインが好きになるかどうか気になる人は、まずラブ・ホワイトとラブ・ロゼを飲んでみるのがいいと思います。もう1つのジンファンデルはジンファンデルとしてはかなり酸が強く、うまみのしっかりしたワイン。いわゆるジンファンデルの概念を改めるようなワインです。好き嫌い分かれるところかもしれませんが。