ナパのトレフェッセン(Trefethen)の3代目になるロレンゾ・トレフェッセンさんが先日初来日し、ランチ会に参加させていただきました。場所はパークハイアット東京の「梢」という日本料理屋さん。
ロレンゾ・トレフェッセン氏
トレフェッセンはナパのオークノールにあります。1968年に設立されており、今年は50周年。まだナパにワイナリーが数十程度しかないころからワインを作っています。100%自社畑のブドウを使っており、畑の大部分はワイナリーの周囲のヴァレー・フロアにあります。

トレフェッセンには2016年にナパ・ヴァレー・ヴィントナーズのツアーでナパに行ったときにも訪問しています。当時は2014年の地震で大きく壊れたテイスティング・ルームのある建物の補修中でしたが、現在は補修が完了して再オープンしています。
Trefethenのテイスティング・ルーム
トレフェッセンはナパのワイナリーの中では、ちょっと地味な存在に感じていました。例えばWine Advocateの評価で見ると、大体90点くらいのワインが多く、ものすごく高評価というわけではありません。

涼しい気候を好むシャルドネやピノ・ノワールも、比較的温暖なところを好むカベルネ・ソーヴィニヨンも、ワイナリーの周囲で栽培しているというのも、ちょっと中途半端な感じがしていました。
トレフェッセンのメインランチ
いや、ごめんなさい。ほんと、ごめんなさい。
トレフェッセン、おいしいです。確かに濃厚なワインではありませんが、その分食事の邪魔をせず、今回のランチの日本食ともよくなじんでいました。「クラシック」とも言えるこのスタイルは、これまで50年の歴史を経て行き着いたもので、このスタイルに自信を持って取り組んでいるということも、今回よくわかりました。また、古いヴィンテージのものも、とてもきれいに熟成していました。

今回のランチでは9種のワインを飲みました。
今回飲んだ9種のワイン
1.ドライ・リースリング 2016
2.シャルドネ 1994
3.シャルドネ 2005
4.シャルドネ 2015
5.メルロー 2014
6.ドラゴンズ・トゥース 2014
7.カベルネ・ソーヴィニヨン 1999
8.カベルネ・ソーヴィニヨン 2008
9.カベルネ・ソーヴィニヨン 2014

まずはドライ・リースリングから。リースリングは「ドライ」といっても、そこそこ甘さを残したものも多く、消費者としてワインを選ぶときにはそのあたりがちょっと悩ましく感じられてしまうのですが、このリースリングは残糖が1リットルあたり5gということで、ほとんど甘さは感じません。オレンジやレモンの柑橘系の香りに、きれいで柔らかい酸、余韻に残るフルーツのフレーバー。これは美味しいです。
八寸
魚介類に合いますね。料理もすごく美味しい。

次はシャルドネ3種。ヴィンテージ違いで1994年、2005年、2015年です。
シャルドネ3種
これが3種が入ったグラス。どれがどのヴィンテージかわかるでしょうか?

一番色が濃いのが古いのかと思いきや、実は右から1994年、2005年、2015年の順になっています。2005年の色が濃いのは樽の違い。1994年が新樽率15%、2015年が20%なのに対し、この年は78%が新樽。マロラクティック発酵も1994年が0、2015年が4%に対して、21%となっています。トレフェッセンにも濃いワインを指向していた時期があり、2005年が一番その傾向が強かったころ。それが新樽率の高さにつながっています。

飲んでみると1994年はさすがに果実味はだいぶ落ちていますが蜜の香りがすばらしい。ゆでた豆や芋のようなフレーバーがあり、和食の豆類とよく合います。2005年はやはり樽のフレーバーが強く残っており、イースト香のような感じやちょっとひねた感じもあります。悪いワインではありませんが、魅力は1994年の方が強いです。2015年はレモンやオレンジの香り。口に含むと蜜のような味わいもあります。時間が経つに連れ、蜜のフレーバーが増してくるような感じ。これもいいですね。タコの黄身辛子和えに合います。

トレフェッセンは実は(今回「実は」って話がすごく多く、ピノ・ノワールはほとんどマムに売っているとか、ドメーン・シャンドンは最初トレフェッセンで作っていたとかいろいろ面白い話があったのですが、記事に書ききれなくて悩んでいます)シャルドネで輝かしい歴史があります。

1976年のパリ・テイスティングはだれでも知っていますが、1979年にワイン・オリンピックというのが開かれたのはご存知でしょうか。フランスの有名な食の雑誌「ゴー・ミヨ」が主催したもので、33カ国から330のワインを集めて評価しました。その中でシャルドネのベストに選ばれたのがトレフェッセンの1976年でした。
参考:Wine Olympics - Wikipedia
カベルネ・ソーヴィニヨンではスペイン、ピノ・ノワールでもオーストラリアのワインが1位を取っており、フランス勢の低迷のせいかどうかわかりませんが、このイベントはこのとき一回きりだったそうです。

赤ワインは後編で。