トレフェッセンはもっと評価されていいと思う(前編)の続きです。

後半の1本目、メルローから続けます。

メルロー2014円はカシスやブラックベリーの風味。きめ細かなタンニンが印象的です。シルキーな舌触りで上品。

メルローは1990年代にブームになりましたが、その後、映画『サイドウェイ』の呪いで長期低迷に陥りました。実際、ブームのときに作られたメルローの多くは品質が不十分だったのですが、近年はまた品質が上がってきている感じがあります。トレフェッセンでは主に2010年に植え替えた新しい樹の果実を主に使っています。
トレフェッセンのメインランチ
上の写真でいうと左側のブロックの一番上(北側)の東側です。質の向上には量を減らすことが肝心であることがわかったため、ブドウの枝1本あたり、ブドウの実を1~2個に絞っているとのこと。
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お造りのイカは白ワインで食べましたがマグロは赤で。醤油ではなく塩をつけてみました。本当だったら「ワインと食事のマリアージュに「ブリッジ食材」のマジック」で書いたたまり醤油があるとよかったのですが。

また、話が変わりますが、上の写真で示したトレフェッセンのメイン・ランチの畑。平地にただ広がっているように見えますが、実際には土壌が20種類もあるとのこと。畑の北端い緑のところがありますが、そこに枯れた川があり、そのおかげで土壌が多様化したとのこと。
ドラゴンズ・トゥース
次は2014年の「ドラゴンズ・トゥース」。これだけは品種名が入っておらず、ラベルも他のワインと違っています。このワイン、マルベックとプティ・ヴェルドを中心にしたのブレンドというユニークなもの。マルベックは軽い味わいでプティ・ヴェルドはストラクチャがあります。どちらもボルドー・ブレンドで使われる品種ではありますが、その2つだけブレンドしたのはユニークです。

このブレンドは意図して作ったというより、畑から出てきたもののようです。トレフェッセンのメインランチで、マルベックとプティ・ヴァルドは隣り合った区画。最適な場所を選んでいった結果としてそうなっています。そこで、ワインでもこの二つを中心にしてみることにしたようです。

ブラックベリーとスパイス。杉の風味にヨーグルトのようなニュアンスもあります。とてもきれいでスムーズ。今飲んでも美味しいし、熟成してもおいしいでしょうね。素晴らしいワインです。

西京焼きとクワイ
料理は西京焼きとクワイの揚げたの。クワイはシャルドネが合います。

最後の3本はカベルネ・ソーヴィニヨン。ヴィンテージ違いで1999年、2008年、2014年です。

1999年はカシスやブルーベリーの味わい。杉の風味。複雑さが出ています。酸が高めで芯が通った印象。
2008年は1999年以上に酸の高さを感じます。果実もブルーベリーというよりは、もっと酸の強いブラックベリー的味わい。
2014年は、まだかなりタニック。若さを感じます。ブルーベリーの風味。これも酸は高め。

モダンな作りのカベルネ・ソーヴィニヨンの場合、熟成していったときに果実味が落ちるだけで、複雑さなどプラスの部分があまり出てこないことがありますが、トレフェッセンの場合はどれもきれいに熟成していっているのが印象的でした。また、どれもオークノールの特徴だという「酸と明るさ」がよく出ていました。

面白いのは、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロー(数%と比率は低めです)を混ぜて一緒に発酵・熟成させているという話。その方がより味わいがまとまってくるのだとか。
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和牛の脂身にカベルネ・ソーヴィニヨンは合わないはずがないですね。どちらもおいしいです。

トレフェッセンは、いわゆる自然派として売っているワインではありませんが、畑では自然農法を取り入れています。ロレンゾ氏によると、日本の自然農法家として知られる福岡正信氏に心酔して、その農法を取り入れているとのこと。その姿勢は、表面的に自然派をなぞっているわけではなく、のめり込んでいると言っても過言ではないレベルですが、それをマーケティング的に使わないところに好感が持てます。

また、畑などの労働者100人をすべて社員として抱えているのもカリフォルニアでは珍しいところです。ワイナリーと畑が隣接していることもあり、収穫は最適なタイミングで行え、収穫したブドウはわずか数分でワイナリーに到着します。

トレフェッセン、想像していた以上に様々なことに取り組み、試行錯誤の結果として今の形に行き着いています。ただ、長く続けるだけの伝統ではなく、いいものにしようとし続けての50年。一般にイメージするカリフォルニアワインとは少し違うかもしれませんが、本物の味わいです。ぜひ飲んでみてほしいです。

個人的には特に、ドライなスタイルで魅力的なリースリングとエレガントでストラクチャーもあるドラゴンズトゥースをお薦めしておきます。