アルノー・ロバーツは「ニュー・カリフォルニア」と呼ばれるワイナリーの1つ。アルコール度数を下げ、繊細な味わいのワインを作っています。今回、ワイナリー創設者の一人であるネイサン・ロバーツ氏が来日、その試飲会に参加してきました。

ネイサン・ロバーツ氏

ダンカン・アルノー・マイヤーズ氏とネイサン・ロバーツ氏は幼馴染。ネイサン・ロバーツはロバート・モンダヴィの奥さんだったマルグリット・モンダヴィの孫で、父親は樽職人。アルノー・ロバーツの樽は本人が作っています。またラベル・デザインはマルグリット・モンダヴィによるものだそうです。

2002年にワイナリーを始め、今では生産量が7000ケース。作っているブドウの種類が10種類、畑が23カ所と少量多品種でワインを作っています。

アルノー・ロバーツは「ニュー・カリフォルニア」という言葉が生まれる契機にもなったジョン・ボネの書籍「ニュー・カリフォルニア・ワイン」でも冒頭に登場します。では、何がニューなのでしょうか。

カリフォルニアワインというと一般的なイメージでは、果実味が強く、アルコール度数も高く、濃厚な味わいのカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネになるでしょう。「ニュー・カリフォルニア」はこれとは逆に、アルコール度数は低く、マイナーな品種にも積極的に取り組み、繊細な味わいのワインです。

私もこれまで何回かの試飲会でアルノー・ロバーツのワインを試飲しましたが、100種類以上のワインを試飲するような会においては、その繊細さが故に、味わいを評価するのはなかなか難しく感じることもありました。今回はアルノー・ロバーツのワインだけをまとめて試飲することで、ようやくその姿が見えてきたような気がしました。

アルノー・ロバーツのワインを一番特徴付けるのは、その畑といっていいでしょう。冒頭に23の畑と書きましたが、その大部分が世の中に知られていないところ。とりわけ冷涼な地域にフォーカスしています。例えばソノマ・コーストの畑からシラーを作るというのは、「異端」といってもいいかもしれません。

ワインはいずれもアルコール度数が低く、果実味も抑えたスタイル。ただ、それでも「薄くて味が弱い」とか「酸っぱすぎる」といった形にならず、凝縮感すら感じるのは、単純に収穫時期を早くすることで糖度を低くしているのではなく、しっかりぶどうが熟成しても糖度が上がらないような畑を選んでいるからだとのことです。

今回試飲したのはシャルドネ2種、リボッラ・ジャッラ1種、ガメイ・ノワール1種、トルソー1種、ピノ・ノワール2種、カベルネ・ソーヴィニヨン4種、シラー4種。

おそらくこの中で一番初心者向けなのはソノマ・コーストのシラー。ここでは数少ないAVAのワインです。親しみやすい味わいですが、スパイスやケモノっぽさもあります。ちなみにここのシラーは除梗なしで作るのが特徴の一つ。ピノ・ノワールも除梗なしで、カベルネ・ソーヴィニヨンも3割は除梗なし。それも味の深みを出している要素の一つのようです。
IMG_20180514_144444

クラリ・ランチのシラーもよりスパイス感が強く、ジューシー。かなりおいしいです。これだけはラベルのデザインも違っています。
IMG_20180514_144459

サンタ・クルーズ・マウンテンズにあるフェロム・ランチのカベルネ・ソーヴィニヨンは、ここのワインの中では濃厚なタイプでタニック。杉の香など、複雑さがあるワイン。
IMG_20180514_144403

シャルドネのトラウト・ガルチはサンタ・クルーズ・マウンテンズの畑。ミネラル感がありマーマレードのような風味もあって美味しかったです。
IMG_20180514_144054

ピノ・ノワールのリーガン・ヴィンヤードもサンタ・クルーズ・マウンテンズの畑。革のニュアンスがあって複雑な味わい。
IMG_20180514_144250

アルノー・ロバーツのワインはわかりやすい美味しさのものは少なく、飲み手にも知識や経験などを要求するところがあるように思います。ひと味ちがうワインを求めている方ならトライする価値は大きいと思います。