ナパのマウント・ヴィーダ―にワイナリーを構えるヘス・コレクションのワインメーカー、デイブ・ガフィ氏が初来日し、セミナーを開催しました。



ヘス・コレクションの創設者はスイス人のドナルド・ヘス。ミネラルウォータービジネスで財を築いたあと、1970年台にナパを訪れました。BVのカベルネ・ソーヴィニヨンやロバート・モンダヴィのシャルドネを飲み、ナパのワインの可能性に気づいたドナルド・ヘスはロバート・モンダヴィに直電。ナパでワインを造ることを決意したそうです。

ただ、ロバート・モンダヴィのアドバイスは「山は避けろ」だったのに、ドナルド・ヘスは山のワインの可能性に賭けてマウント・ヴィーダ―に畑を切り拓き、ワイナリーを構えます。1983年にワインを初リリースしました。

ワイナリーには美術館を併設し、ナパでも人気のワイナリーの一つになりました。特にカベルネ・ソーヴィニヨンでは非常にコスト・パフォーマンスの高いワインを造ってきています。

マウント・ヴィーダ―産のワインの生産量はナパ全体の1%ほど。ナパのヴァレー・フロアはずっとぶどう畑が広がっているのに対し、マウント・ヴィーダ―は今でも畑がごくわずか点在するのみです。地質は火山性で頁岩と岩が主体。痩せた土地で、ブドウの房も実も小さいそうです。

ヘス・コレクションは現在、マウント・ヴィーダ―の標高240mほどから600mほどのところに畑を3つ持っています。このほか、ナパの北東部にあるポープ・ヴァレーにアローミという自社畑も持っています。

試飲は赤ばかり4種類。


まずはアローミのカベルネ・ソーヴィニヨン2015。カベルネ・ソーヴィニヨン92%にプティ・シラーが6%、プティ・ヴェルドが2%です。アローミのあるポープ・ヴァレーはナパの中でも海からの距離があり、気温が高いところ。一般的に考えれば果実味が豊かで芳醇なカベルネができそうな場所ですがアローミのカベルネは意外にタンニンがしっかりあり、酸も豊か。もちろん芳醇さや濃厚さもあるのですが、これも山カベ(山地産のカベルネ・ソーヴィニヨンのこと)かと思うくらいのタンニンでした。

理由の一つには、ワインに重厚感を与えるということで加えているプティ・シラーがありそうです。また、デイブ・ガフィさんいわく「山カベの味に慣れすぎているから、平地のカベルネで造ってもそういった味わいにしていってしまうのかもしれない」とのことでした。

二番目はライオン・テイマーというレッド・ブレンドの2015年。マウント・ヴィーダ―の畑ではマルベックがよいものができるということでマルベックが50%入っています。そのほかはジンファンデルが23%、プティ・シラーが11%など。自社畑のブドウが主体ですが、一部買いブドウも入っています。

これもかなりタニックではあるのですが、重さはあまりなく、なにか軽やかな味わい。面白いワインです。

3番めがマウント・ヴィーダ―のカベルネ・ソーヴィニヨン2013。カベルネ・ソーヴィニヨン82%でマルベックが18%。ブルーベリーなど青系の果実味が濃厚ですが、それ以上にガツンと来るタンニン。酸もきれいで、洗練されています。ストラクチャーのしっかりしたワインでまさに山カベ。山カベのお手本のようなワインです。

最後はフラッグシップのザ・ライオン2014。このワインについてはスケアクロウのワインメーカーであるセリア・ウェルチがコンサルタントを務めています。

色は紫から黒と見間違えるほどの濃厚さがあります。香りも重厚。さすが「ライオン」の名を冠すだけのことはあります。タンニンは非常にこなれて洗練されています。個人的にはカベルネ・ソーヴィニヨンの荒々しさに惹かれるところはありますが、こちらの洗練さもたいしたものです。



このほか、試飲コーナーでは、買いブドウで造っているコスパの高い「ヘス・セレクト」のワインもいろいろ出ていました。個人的には、ここのワイナリーの味で一番好きなのはやはりカベルネです。そのほかではプティ・シラーやシラーなどをブレンドした「トレオ」というレッド・ブレンドもうまみがあってなかなか良かったです。