ソノマのワイナリー「ポール・ホブズ」のオーナーのポール・ホブズが先日来日し、セミナー兼食事会に参加しました。カリフォルニアのワイナリー、特にカベルネ・ソーヴィニヨンに強いワイナリーの場合、ステーキハウスを使うことが普通ですが、今回は珍しく中華。

「空飛ぶワインメーカー」として世界各地でコンサルタントを務めていることでも知られているポール・ホブズ氏。栽培よりも醸造よりの人というイメージがありましたが、現在はポール・ホブズ・ワイナリーで作るワインの大部分は自社畑になっています。ナパのハイドや、ベクストファーのト・カロン、ドクター・クレーンなど一部(といってもどれもすごい畑ばかりなので目立ってしまう面はあります)だけが契約畑です。自社畑の栽培はほとんどがオーガニックで、もちろんサスティナブルの認証を得ています。

試飲したワインは6種。ピノ・ノワールが3つとカベルネ・ソーヴィニヨンが3つです。

ピノ・ノワールは2017年のハイド・ヴィンヤード、2016年のキャスリン・リンゼー・エステート、2016年のゴールドロック・エステート。キャスリン・リンゼーはロシアン・リバー・ヴァレー、ゴールドロックはソノマコーストのAVAになります。ピノ・ノワールについて、ポール・ホブズ氏はかつてアンリ・ジャイエに学んだことがあり、すべて除梗して作っていましたが、最近はホール・クラスターを増やしているそうです。

この中で一番暖かいのはハイド、一番寒いのはゴールドロックですが、ワインは暖かいところほど色が薄くなり、寒いところほど濃くなるとのこと。ハングタイムの違いなどが影響しているのでしょうか。

実際、ハイドが一番色が薄く、味わいも濃厚というよりも軽やかさを感じるもの。イチゴやラズベリーなどの赤系の果実に少しカシスの風味もあります。きめ細かいタンニンがあり、意外とボディもしっかりしています。

キャスリン・リンゼーもガーネット色で、かなり濃い目の色。ラズベリーに、ブルーベリー、紅茶の風味、酸とボディのバランスが良く、個人的にはすごく好きなピノ・ノワールでした。

ゴールドロックはミネラル感が強く、ミントやチョークのような風味もあります。複雑さではこれが一番でした。

カベルネ・ソーヴィニヨンは3本いずれもナパのもの。2015年のベクストファー・ドクター・クレーン、2015年のベクストファー・ト・カロン、2014年のネイサン・クームズ・エステートの3つです。ドクター・クレーンはセント・ヘレナ、ベクストファー・ト・カロンはオークヴィル、ネイサン・クームズはクームズヴィルの畑です。暖かさもこの順で上ほど暖かいところになり、やはり寒いところほどワインの色は濃くなります。

ドクター・クレーンは太陽の暖かさを感じるワイン。ブルーベリーやブラックベリーの風味、ちょっと甘さを感じるようなふくよかさ。きれいな酸にチョーク。ドクター・クレーンはブロックによっては、ポール・ホブズ氏的にはあまり品質が高くないところもあるそうですが、ポール・ホブズでは一番条件のいいブロックを使っているとのこと。

ベクストファー・ト・カロンは素晴らしいバランス。ストラクチャーあり、きめ細かいタンニン。濃厚でパワフルですが、重すぎず軽やかささえ感じます。統一感がすごい。料理とか関係なく、ずっと飲んでいたい(笑)。ポール・ホブズ氏はこの著名畑も初期から利用しているため、中央あたりの非常にいいブロックを使っています。

ネイサン・クームズは一番タニックでパワーあふれるワイン。杉の風味など複雑さもあり熟成しても美味しそうなワインです。クームズヴィルはナパの中では新しい産地で、オークヴィルあたりと比べるとかなり冷涼なはずですが、カベルネ・ソーヴィニヨンでも高いポテンシャルがあることを、このワインは示していると思います。

ところで、中華との相性ですが、スパイスの効いた料理などに、ピノ・ノワールがよく合っていました。カベルネ・ソーヴィニヨンはやはり肉には最高です。中華は味わいがはっきりした料理が覆いので、メリハリのきいたカリフォルニアワインとの相性はいいと思います。