先週開催されたプルミエ・ナパ・ヴァレー・オークションに合わせて、ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズは2018~2020年のヴィンテージについての論考を3人のワイン評論家によるワインメーカーとのオンライン・パネル・ディスカッションで開催しました。その様子とそこから考えたことをW.ブレイク・グレイ氏が記事にしています(Napa Cabernet Explores its Non-binary Side | Wine-Searcher News & Features)。

まず、評論家は2018年の担当がジェームズ・サックリング、2019年がワイン・アドヴォケイトのリサ・ペロッティ・ブラウン、2020年はジェブ・ダナックでした。グレイ氏は3人のパネル・ディスカッションの進め方の違いを指摘します。ジェームズ・サックリングがワインメーカーの意見を聞きながら進めていたのに対し、リサ・ペロッティ・ブラウンは基本的にワインメーカーの意見は聞く気がなく、むしろ教えるような態度、ジェブ・ダナックは聞き役に徹して自分の意見はほとんど出さなかったもようです。
ジェームズ・サックリング
リサ・ペロッティ・ブラウン

ジェームズ・サックリングの担当した2018年とリサ・ペロッティ・ブラウンの2019年はワインのスタイルも大きく異なっています。2018年は非常に問題の少ない年で、比較的エレガントなスタイルでタンニンのしっかりしたワインになったようです。一方、2019年は暖かく柔らかで濃厚なワインが多かったもよう。リサ・ペロッティ・ブラウンは明らかに2019年が気に入っています。

グレイ氏によると、ワイン・アドヴォケイトはロバート・パーカーの時代から「エレガント」という言葉は褒め言葉になっていないとのこと。実際100点が付いたワインのレビューでエレガントという言葉が使われているのはごくわずかしかないようです。

一方、サックリングは2018年のスタイルが気に入っており「人々がワインをフルーツでなくタンニンで定義するようになったことを嬉しく思う」と語っています。サックリングのパネル・ディスカッションに登場したワインメーカーも2018年を非常に高く評価しており、むりやり濃いワインにする必要なく、きれいなワインになったと言っています。

確かに評論家による違いは結構あるし、ワイン・アドヴォケイトは一貫して濃厚よりだと思います。ただ、その一貫性がワイン・アドヴォケイトのいいところでもあるんですよね。時系列的に同じワインの評価を見るときにはなるべく評価軸がぶれないでほしいので、そういうときはワイン・アドヴォケイトにまさるメディアは今のところないと思います。

個人的には個々のレビューに関してはアドヴォケイトよりヴィナスを信頼することが多いですが、今回のパネルにはアントニオ・ガッローニは出てきていませんでした。ちょっと残念なところです。