カリフォルニアの2025年の収穫を総括、バランスよくエレガントな秀逸ヴィンテージに

カリフォルニアワイン協会が2025年の収穫レポートを公表しました。その主な内容を紹介します。
2025年のカリフォルニアにおけるワイン用ブドウの収穫は、穏やかで安定した生育シーズンに支えられ、品質面で非常に高い評価を受けるヴィンテージとなっています。春は冷涼に始まり、夏も極端な高温に見舞われることがほとんどなく、成熟期から収穫期にかけても比較的温和な気候が続きました。この結果、ブドウは急激に糖度を上げることなく、ゆっくりとバランスよく成熟しました。
収穫開始時期は地域によって差がありましたが、多くの産地で例年より最大2週間ほど遅れました。9〜10月にかけて一部で降雨があったものの、収穫時期の判断や入念な選果、キャノピー管理によって品質低下を回避しています。特に水はけの良い畑では、降雨がかえって果実の表現力や風味の奥行きを高めたと評価されている。
収量については「平均〜やや少なめ」とする声が多くなっています。USDAは2025年のカリフォルニア全体のワイン用ブドウ生産量を約300万トンと予測しており、前年比では増加したものの、直近3年平均を下回っています。一方、カリフォルニア・ワイン用ブドウ生産者協会(CAWG)は、これよりやや低い250万トン弱と見積もっており、数量よりも品質重視の年であることが示唆されています。
ワインのスタイル面では、2025年は「エレガンス」「抑制」「テロワール表現」がキーワードとして繰り返し語られています。赤ワインは過度なパワーに寄らず、深みと構造を備えた洗練されたスタイルになり、白ワインは明るい酸と精密さが際立つと予想されている。糖度が比較的低い段階で収穫されたブドウが多く、結果としてアルコール度数は控えめになり、現代的な嗜好に合致したバランスの良いワインが期待されています。
以下では地域別の状況を紹介します。
ナパ・ヴァレー
ナパ・ヴァレーでは、冷涼なシーズンと十分な冬季降雨により、健全な樹勢と均一な成熟が実現しました。収量は予想以上に多く、品質も非常に高い年となりました。カベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フランは、低めの糖度でも十分なフェノール熟度と深い色調を示しています。晩夏の降雨はありましたが、水はけの良い畑ではむしろ風味の立体感を高める結果となりました。全体として、長期熟成に耐えるクラシックなスタイルが期待されています。
ソノマ・カウンティ
ソノマでは、冬から春にかけての安定した降雨と冷涼な夏が理想的な条件を生みました。シャルドネやピノ・ノワールは、酸と果実味のバランスに優れ、風味の純度が高い仕上がりです。収穫は平年並みの時期に始まりましたが、秋の降雨を見据えて多くの生産者が迅速に対応しました。その結果、全体的に非常に健全な果実が確保され、品質重視のヴィンテージとなっています。
ローダイ
ローダイでは、シーズン全体を通して冷涼で安定した気候が続きました。酸がしっかりと保持され、赤品種では濃い色調と深い風味が得られています。特にジンファンデルは、凝縮感とバランスに優れた仕上がりが期待されています。古木の収量はやや少なめでしたが、品質面での評価は非常に高い年です。
パソ・ロブレス
パソ・ロブレスでは、記録的に涼しい夏が成熟をゆっくりと進めました。カベルネ・ソーヴィニヨンは十分なハングタイムを確保でき、色調、構造、香味が向上しています。白ワインも非常にクリーンで成熟度が高く、全体として2023年ヴィンテージに近い高評価が見込まれています。
サンタ・バーバラ
サンタ・バーバラでは、低糖度ながら高い熟度を達成したことが特徴です。ピノ・ノワールは特に高品質で、自然な酸と低アルコールのエレガントなスタイルが期待されています。一部地域では山火事の煙の影響がありましたが、適切な選果によって品質は確保されました。
その他地域(サンディエゴ、テメキュラ、サスーン・ヴァレーなど)
南部や内陸の小規模産地でも、冷涼な気候の恩恵により良好な品質が報告されています。テメキュラでは収量は少なめでしたが、酸と品種特性が際立つ年となりました。サスーン・ヴァレーでは、一部で課題はあったものの、全体として安定した仕上がりです。