有機栽培の畑が増えてきています。これまでは高級ワインにだけ使われていた印象がありますが、「2バック・チャック」の愛称で知られるCharles Shawなどの安ワインを作るブロンコ・ワインはセントラル・ヴァレーの4万エーカーのうち8000エーカーを有機栽培に転換し、4ドルのワインとして売っています。モントレーのシャイド・ファミリー(先日紹介したオッド・ロットの生産者)も3000エーカーの自社畑を有機栽培に転換している途中です。実は経済的に有機栽培の方が慣行栽培よりも儲かるという記事が出ていました(Why Organic Winegrowing Can Be More Profitable Than Conventional | SevenFifty Daily)。

大きく分けると有機栽培と慣行栽培のコストには以下の要素が絡んできます。
・栽培にかかわるコスト
・ブドウの収穫量
・ブドウ樹の寿命

栽培に関するコストはさらに以下のようなものからなります。
・薬剤などのコスト
・労働力
・資材などのコスト
・機材などのコスト

これらはこれまで有機栽培の方がかなり多いと思われてきましたが、近年はほとんど変わらなくなっているといいます。
例えば薬剤では慣行栽培の除草剤はかなりコストがかかっていました。肥料は有機栽培の方が少しかかりますが、防カビ剤などは有機の方が安くなっているといいます。トータルするとあまり変わらなくなっているとブロンコ・ワインの有機転換のアドバイザーであるルカ・ブリランテ助教授はいいます。

労働力は有機栽培の方がかかると言われ、実際畑のマネジメント会社によっては有機栽培で30%高い料金を設定しているところもありますが、ナパの有名な栽培家であるスティーブ・マサイアソンは、これも上手にやることでほとんど変わらなくなっているといい、実際に有機も慣行栽培も同じ料金にしているとのことです。

Monarch Tractor

ロバート・モンダヴィの孫でありRaen(レイン)ワイナリーでピノ・ノワールなどを作るカルロ・モンダヴィが携わる新世代のトラクター「モナーク」(写真)も労力の低減に役立っており、引く手あまたの大人気だそうです。太陽光発電で動き、さまざまなインテリジェントな機能を搭載しています。5万8000ドルと高価ですが、購入にはかなりの補助が出るようです。

ブドウの収量に関しては、有機の方が少なくなっています。ブロンコ・ワインでは面積あたりの収量は30%ほども減っているとのこと。ただ、これは慣行栽培の方がNPKと呼ばれる肥料によって「水栽培のように」(スティーブ・マサイアソン)育てているからだという見方もあります。実際、チリのエミリアーナのCEOであるクリスチャン・ロドリゲスによるとクローンやコンポストや栽培の向上でほとんど違いはなくなったといいます。

ブドウの寿命については有機栽培の方がかなり長いと見られています。実際どれだけ長寿になるかの数字はまだないようですが、「10年寿命が延びれば経済モデルとしてはすごくよくなる」とスティーブ・マサイアソンは言います。

最後に、販売面でのメリットがあります。フランスではオーガニックやバイオダイナミックの生産者の方がより利益が出ているというデータがありますし、評論家の評価が高くなり価格も高く付けられるとされています。過剰生産が問題になりつつあるカリフォルニアでは差異化を図れるという意味でも有機栽培のメリットは大きいと見られています。

栽培に関するコストなどは地域性も大きくかかわるため、この議論がすべての地域に通用するとは限りませんが、カリフォルニアに関して言えば、有機栽培のメリットはデメリットを上回ることが多くなってきそうです。

興味深い記事でしたが、より定量的な評価を見てみたいものです。