フランスのアクサ生命のグループでワインビジネスを行っているアクサ・ミレジムがソノマのプラット・ヴィンヤード(Platt Vineyard)を買収しました。ワイナリーではなく畑の買収です。

アクサ・ミレジムという名前は初めて聞きましたが、フランスやハンガリー、ポルトガルと米国にワイナリーを所有しています。例えばボルドーではメドック2級格付けのシャトー・ピション・ロングヴィル・バロンを、ブルゴーニュではドメーヌ・ド・ラルロ、カリフォルニアではアウトポストのオーナーになっています。

プラットはウエスト・ソノマ・コーストにある畑。リヴァース・マリーの2018年のプラット・ヴィンヤード・ピノ・ノワールがヴィナスで100点を取っています。リヴァース・マリーのトーマス・リヴァース・ブラウンによると、このあたりの「フリーストーン・ベンチ」は「ソノマ・コーストの中でもピノ・ノワールの最も偉大な地域になりつつある」といいます。例えば谷を一つ隔てたところにはスティーブ・キスラーのオクシデンタルの畑などがあります。

Platt

アクサ・ミレジムによると、ピション・ロングヴィル・バロンに呼応してアウトポストを手に入れたように、ドメーヌ・ド・ラルロに呼応して素晴らしいシャルドネとピノ・ノワールの畑を手に入れたということです。今後はトーマス・ブラウンやアウトポスト社長のフランク・ドツラーとこの畑のポテンシャルを引き出していきたいという意向。プラットのワイナリーも作るということなのでしょう。

ちなみに、今回調べていて初めて知ったのですが、プラットのこれまでのオーナーはフラナガン・ワイン。日本ではマッシュ・ワインが輸入していますが、非常に素晴らしいワインを作るワイナリーです。
Flanagan Wines フラナガン ワインズ
また、プラットの畑の名前はこの畑を作った故ルー・プラットから来ています。ルー・プラットはHPにエンジニアとして30年以上勤め、社長兼CEOにまでなった人。有名なカーリー・フィオリーナの前任者です。フィオリーナの就任時には半ば追われるようにやめたプラットでしたが、その後フィオリーナが成果を上げられずに退任するに至り、改めてプラットの功績が見直されたようです。HP退任後はケンダル・ジャクソンのCEOに就任し、ワイナリー売却などの道筋を探りましたが、結局ケンダル・ジャクソンは創業一族が見ることになり1年ほどで退任。退任の際に、ソノマに小さな畑を作り、そこに専念すると言っていたのがこのプラットの畑のことでしょう。

プラットは2003年にはボーイングの非常勤会長になりましたが2005年に脳動脈瘤で亡くなってしまいました。ワイン業界ではそれほど大きな足跡を残したわけではありませんが、こうして注目される畑を作ったことは彼の最後の大きな功績だったのかもしれません。