ブリュワー・クリフトン(Brewer-Clifton)やダイアトム(Diatom)のワインメーカーとして知られるグレッグ・ブリュワーが、杉本隆英・美代子夫妻のブランド「シャトー・イガイタカハ(Ch.Igai Takaha)」創設以来続けていた「漢字ワイン」のワインメーカーを退任しました。

グレッグ・ブリュワーは1995年にスティーブ・クリフトンとブリュワー・クリフトンを設立。サンタ・リタ・ヒルズ(当時はまだAVA設立前)の様々な畑から、すべて同じレシピでシャルドネとピノ・ノワールを作るというテロワールを表現したワイン造りを行い、大人気となりました。また、ダイアトムでは樽熟成をしないシャルドネに特化して独自のワインを作りました。

2004年には杉本夫妻が東京の麻布十番に持っていたレストラン「カリフォルニアワインガーデン」でブリュワー・クリフトンのワインメーカーディナーを開き、以来夫妻とグレッグ、スティーブとの交友が続きました。
復刻:2004年のBrewer-Cliftonワイン会実録

2006年には杉本夫妻がグレッグにに「ダイアトムを樽熟成させたら、より和食に合う美しいワインになるのでは?」と提案し、それに賛同したグレッグがニュートラルな樽を使った「Samurai Beauty」を作り、「シャトー・イガイタカハ」のワインとしてリリースしました。このワインがワイン・アドヴォケイトで95点という高評価を得て一躍注目を集めました。
Ch. Igai Takaha "Samurai Beauty"についてのRAQ

これをきっかけに2010年ヴィンテージからはダイアトムの5つのワインに杉本美代子さんの書による「漢字ラベル」を採用して絆は深まっていきました。このダイアトム時代の漢字ワインは漫画『神の雫』にも取り上げられています。
今週の「神の雫」にDiatomの「波紋」が登場
神の雫のダイアトム続編

さらにシャトー・イガイタカハでもシャルドネの「侍」、ピノ・ノワールの「園」という2つのフラッグシップのワインをグレッグが作るようになりました。その後、グレッグは一時的にダイアトムをやめることになり、「シャトー・イガイタカハ」ブランドで、5つの漢字ワインも引き継ぐことになりました。こうして、シャトー・イガイタカハの漢字ワインはグレッグの手により作られてきました。2016年からは「園」がJALの国際線ファーストクラスのワインに採用され、今も使われ続けています。

2017年にはブリュワー・クリフトンをジャクソン・ファミリーが買収。それ以来、漢字ワインは「侍」と「園」の2つに絞ることになりました。また2020年にはグレッグがワイン・エンスージアストのワインメーカー・オブ・ザ・イヤーに選ばれています。非常に喜ばしいことでしたが、グレッグのジャクソン・ファミリーにおける重要さが増したことで、他社向けのワインを作るのが難しくなったということもあるようです。

「侍」と「園」は2022年のヴィンテージ以降はバブコックなどで修行したケネス・ガミア(Kenneth Gummere)氏が担当します。2011年からシャトー・イガイタカハにも携わっている優秀なワインメーカーです。

また、花偲・美夜・風音・鼓動の4種の漢字ワインについては、著名なポール・ラトー(Paul Lato)氏がワインメーカーに就任。「カリフォルニアのテロワールを表現する。産地を限定することなく、カリフォルニアの多様性を感じられる自由な発想と更なる進化を
目指したワイン造りを行う」としています。
イガイタカハ
2022年11月にはポール・ラトー氏による新たな漢字ワインの出荷が始まる予定です。

長く続いてきた杉本夫妻とグレッグのビジネス上の絆が、切れてしまうのは残念ですが、グレッグは日本の文化にも造詣が深く、きっとこれからも日本のことを大事に思ってくれるでしょう。それに友人としての絆は今後も続いていくと思います。また、新たなワインメーカーも才人ばかり。今後のワインにも大変期待ができます。

今後のシャトー・イガイタカハにもますます期待したいと思います。