カリフォルニアにおける有機栽培の認証というと、先日ト・カロンの有機栽培化で紹介したCCOFがあり、このほかバイオダイナミクスやそのフランス語読みのビオディナミという名前で知られるデメター(Demeter)があります。有機栽培はその名の通り、化学肥料や農薬を使わずに栽培する農法であり、バイオダイナミクスはオーストリアのルドルフ・シュタイナーが提唱した農法で、単に化学肥料や農薬を使わないだけでなく、天体の作用に基づく暦で作業が決まったり、特別な調合剤を使うといった取り決めも数多くあります。一般的に言うと、バイオダイナミクスの認証を受ける方が有機栽培よりも大変です。

ところが、これ以上に合格するのが難しいとされる認証があります。それが環境再生型有機認証(Regenerative Organic)です。土壌を改善して環境を修復するといった目的があり、地面を極力耕さないなどの特徴があります。また、従業員や動物の福祉といったところも審査対象になっており、理念としては「よりよい」活動をめざすSDGsに近いといえるかもしれません。

これをナパのニール・ファミリーがナパのワイナリーとしては初めて取得しました。カリフォルニアではほかにパソロブレスのタブラス・クリーク、メンドシーノのボンテラ(フェッツァー)が取得しています。世界的に見てもそれ以外のワイナリーではオレゴンのTroon Vineyard、アルゼンチンのDomaine Bousquet S.A.だけが登録されており、ニール・ファミリーは世界で5番目ということになります。

審査においては、従業員のインタビューなども含まれるのがユニークです。また、前述のように土地を耕さないというのが項目に入っていますが、ブドウ畑では土地を耕すのが一般的です。また、土を耕すと二酸化炭素が放出されるのがデメリットとされていますが、土を耕さない場合は、灌漑用の水がより多く必要になり、灌漑のための電力も必要になります。耕さなければいいというほど単純ではありません。そこでニール・ファミリーでは畑の畝の間を1列おきに耕すところとカバークロップを植えるところ、と分けて50%の耕起ということで認証を受けたといいます。

「自然派」の流れはこれからどうなっていくのでしょう。