TwitterやYoutubeを拝見している「Nagi@ドイツでワイン醸造家(@Gensyo)さん / Twitter」さんが一時帰国中にアカデミー・デュ・ヴァンでセミナーを開くというので受講してきました。タイトルは「1日醸造家体験:ワインと添加剤」です。

このセミナーは、ワインに添加することがEUの規定で認められている添加剤について、EU規定量を添加するとどれくらい味が変わるのかを実際に実験して確かめるというもの。添加剤はメタ酒石酸、アラビアガム(アカシア)、アスコルビン酸、二酸化硫黄(SO2)の4種類です。なお、ベースにするワインは市販の酸化防止剤無添加のものでした。

メタ酒石酸は、酒石が析出するのを防ぐための添加剤。日本では使われておらず、代わりにカルボキシメチルセルロース(CMC)が使われることがあるそうです。なお、酒石は析出してもワインの品質が悪くなるわけではないので、どうしても必要な添加剤というわけではありません。最大2年間の効果とか、気温が高いと効果が薄れてしまうとか、なかなか使いにくそうですが、安ワインでは結構使われているようです。

EUにおける添加の上限は1000リットルあたり10gとなっています。これに相当する濃さになるようにグラスにスポイトでワインや添加剤を入れます。

こんなの簡単にわかるだろうと思っていたのですが、意外にもほとんど違いがわかりません。レモン系の香りがちょっと減ったような気がしたのですが、それも気のせいかも。これ、単独で味わってみると名前に「酸」が入っているように、結構酸味を感じます。でも意外なほどワインに入れてしまうと、ちょっと変わったかなあというくらいで、比較しなければわかりません。

2番めはアラビアガム(アカシア)。安ワインでは安定化剤としてしばしば使われており、これの味が嫌いといった投稿も見かけます。金属製の化合物が沈殿するのを防ぐ効果があります。なお、EUでは上限の規制がないそうです。

これ単独で匂いをかぐと「アラビアガム」という名前の通り、ちょっと焼けるようなゴムの匂いがします。ワインに入れたときの味わいも微妙にゴムっぽく変化した感じがあります。ただ、これも予想以上にわからなかったです。

3番めは「アスコルビン酸」、いわゆるビタミンCです。酸化防止剤として使われています。EUでは1リットルあたり250mgまで添加できます。

これはビタミンCですから、単独で味わうとかなりシャープな酸を感じます。ワインにいれたときも少し酸が増えた感覚がありました。一番わかりやすいですが、酸好きな人ならむしろ入れたほうが美味しいと思うケースもありそうです。

最後は二酸化硫黄=SO2です。何かと評判の悪いやつですね。酸化防止剤ですが、それだけでなく酵母を含む微生物の活動を抑えるためにも使われています。その両方の働きをする添加剤はほかにないそうです。ワインに添加するときはガスを直接タンクの中に添加する方法と、「メタカリ」と呼ばれるカリウムと結合させた粉を少量の水などに溶かして加える方法があるそうです。今回は後者の方法を取っています。

なおEUにおける添加上限は1リットルあたり400mg。今回は「遊離SO2」が30mgくらい残るような形で準備いただいています。

ワインに入れる前に水溶液を単体で臭ってみると、刺激臭を感じます。温泉ぽい感じもしましたが、ナギさんには「気のせいでしょう」と一笑に付されてしまいました。ワインに入れてみると、意外なほど違いがわかりません。多めに入れてみるとなるほどなあという感じがしましたが、EU規定ではほぼわかりませんでした。

いずれも添加剤として認められているものですから、それほど味に影響がないのは当然かもしれませんが、もっと簡単にわかるだろうと思っていたので、かなり予想外で面白い結果でした。

セミナー後半ではナギさんのワインを試飲しました。口直しというかなんというか、前半の実験ではベースワインそのものが、それほどおいしいものではなかったので、とにかく美味しかったです(語彙力!)。

来年の一時帰国ではさらにパワーアップした実験を考えているというのでまた楽しみです。