ナパツアー5日目その2ーーミシュラン星付きレストランの真髄を感じる
最終日のランチはセント・ヘレナにあるPRESS Napa Valley。2023年1月にミシュラン一つ星を獲得したレストランです。ナパのワインのコレクションでは世界一とのこと。ワイナリー「Rudd」が設立したレストランで、かつてはステーキハウスだったのをモダンな料理のレストランに変化させています。
今回はこのレストランを我々のグループで貸し切りです。というのはなんと、厨房に入れてもらって、シェフ自ら料理教室をしてくれるというのです。これには驚きました。シェフはフィリップ・テシエ。ボギューズ・ドールという世界最高の料理コンクールで2015年に2位に輝いています。
教えてくれるのは、ここの代表的なメニューの一つであるヌーディ(Gnudi)。Gnudiを検索するとイタリアではラビオリの中身だけといった料理のようですが、ここのヌーディは一種のパスタ。材料は特別なものではありませんが、手間暇かけて素晴らしい料理に仕上げます。
材料は自家製のレモン風味リコッタチーズとパルメザンチーズ、卵黄、タピオカ粉、乳製品ベースの粉、色止めの酸、塩です。基本的にはこれをミキサーでミックスし、ピンポン玉大に丸めて指の腹でつぶし、小麦粉の中に入れて丸1日冷蔵庫で保存します。最初は柔らかかったのが、これでゴムのような弾力になり、周りの粉をきれいに取ったら完成です。
難しいところはないですが、ひびが入らないようにきれいに丸めるには打ち粉を付けすぎないようにする、きれいに粉を払うなど、気を使うところはいくつかあります。また何より1日寝かせるため時間はかかります。これを1日200個くらい作るそうです。
レストランで実際に料理として供するときは、これを3分蒸して、季節ごとのアレンジで提供します。下ごしらえは手間がかかりますが、料理を出すときは3分で用意できる手軽さもレストランにとってはいいとのこと。春から秋はカボチャ系の花でくるんだようなアレンジをするそうですが、今年は寒くて遅れているので冬から続いているマッシュルームのアレンジです。マッシュルームの出汁を取り、トリュフで風味を付けます。Gnudiの上には飾りで薄切りのマッシュルームを載せ、マッシュルームとトリュフのソースは客席でかけます。このようにシンプルな食材で手間を掛けて少しだけ高級なものを使ってほかとは違う料理にするのがこのレストランの趣向だそうです。
グループに分かれてワイワイとGnudiを作ります。混ぜる人、粉をはたく人と分担して楽しく料理(のマネごと)をしました。
料理教室の後はセラーの見学です。
ここの初代のソムリエは前の日の「レジェンドワインメーカーたちが語るナパカベの歴史」でモデレーターを務めていたケリ・ホワイトさん。「Napa Valley Now & Then」という大著の著者でもあります。彼女がナパでもナンバーワンのワインリストを作り、現在はマスター・ソムリエのヴィンセント・モローさんが引き継いでいます。ワイン・スペクテーターのグランド・アワードという最高の賞も受賞しています。
セラーは3カ所に分かれていて、2600本を超えるコレクションがあります。
これは1935年のSIMIのワイン。9500ドル。
一番高価なワインはこれ。「パリスの審判」で1位になったスタッグス・リープ・ワイン・セラーズの1973年のカベルネ・ソーヴィニヨン。35000ドルです。
ここのワインリストはこちらで見られます。
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セラー見学の後はいよいよ食事です。
料理では先程のGnudiも。もちろん我々が作ったのではありません(シェフは明日お店で出すとジョークを言っていましたが、おそらくスタッフの口に入ったのではないかと)。食感が面白く、トリュフマッシュルームのソースも絶品でした。
それ以外にはTruffle Glazed Chickenという名物料理もとても美味しかったです。
シンプルな鶏の胸肉のローストのように見えますが、実は身と皮の間に旨味の多いチキンの脚などを使ったペーストが挟まれており、見た目と比べて遥かに複雑な味わいでボリュームもあります。これも準備に2日間くらいかかるという手の込んだ逸品。Gnudi同様、シンプルな食材に手間をかけて少し高級な食材でアクセントを付けた料理になっています。
もちろん、今回もすばらしいワイナリーの代表者やワインも一緒です。今回のワイナリーはダリオッシュ(Darioush)、パイン・リッジ(Pine Ridge)、ラッド(Rudd)、シルバーオーク/トゥミー(Silver Oak/Twomey)の4つです。
今回のツアーでは白はオープニングの立ち話をしながらの談笑時間に飲むことが多く、あまりちゃんとコメントが書けていないのですが、このランチではRuddとTwomeyのソーヴィニヨン・ブランが対照的で面白かったです。Ruddの方はMt. Veederのブドウを使っておりフレッシュ感とミネラル感があり、Twomeyはナパとソノマのブドウをブレンドすることで、豊かな酸とリッチな味わいを持っています。どちらも美味しい。
ナパでヴィオニエのイメージはあまりないと思いますが、今回はシャペレーで素晴らしいヴィオニエを飲み、このランチでもDarioushのヴィオニエとPine Ridgeのヴィオニエとシュナン・ブランのブレンドを飲みました。Darioushはとにかく華やか。白い花の香りやトロピカル・フルーツの香りで「アロマティック」という言葉そのままに感じます。Pine Ridgeのヴィオニエ+シュナン・ブランは以前から好きなワイン。日本でも安いところでは1000円台というコスパの良さも抜群です。
赤はまずはシルバーオークのカベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー2018。説明不要かと思うくらい有名で人気のあるワインですが、長年スタイルを保ちつつ進化もしているのが素晴らしいと思います。シルバーオークはアメリカンオークの樽を使うことで知られており樽のメーカーも持っているほど力を入れていますが、決して樽香が強すぎるわけではなく、ボディも酸もきれいなレベルでまとめています。また、このヴィンテージからはラベルを変更しています。
以前はボトルにエッチングを施していたのですが、カーボンフットプリントの観点からはあまり良くないと考え、シンプルな紙のラベルに変えたのです。シルバーオークは環境保全への取り組みでも先進的であり、その姿勢がここにも現れています。
Pine Ridgeは、前回のナパ訪問のときにワイナリーにも行っていますが、スタッグス・リープ・ディストリクト(SLD)に4つの自社畑を持っています。今回はそのSLDのカベルネ・ソーヴィニヨン2019です。ドライプルーンなど青系の完熟した果実の風味やリコリスなど、やや甘やかさがあります。完熟した果実の風味というのはSLDの特徴とも言えるでしょう。かなり強いタンニンがありますが、非常にこなれています。これもSLDの特徴の一つで「鉄の拳を持った貴婦人」などと称されています。総じてSLDらしさの出た美味しいワインでした。このワインはこれまで輸出には出していなかったのですが、今後日本に入ってくることになりそうです。
Ruddからは2019年のSamantha's Cabernet Sauvignon。オークヴィルにある自社畑からのセレクションで、若いうちから飲みやすいスタイルに仕上げています。ナパらしい果実を前面に出したスタイルを目指し、新樽率は51%、エレガントで複雑さも持つワインに仕立てています。果実味が非常にきれいなのが特徴でリッチで洗練された雰囲気がいかにもオークヴィルです。
DarioushからはMt.VeederにあるSage Vineyardという自社畑の赤ブレンド。良年しか作られないワインで、これは2019年です。75%カベルネ・ソーヴィニヨン、15%カベルネ・フラン、10%メルロー。山カベらしいしっかりとしたストラクチャーが出たワイン。
4ワイナリーそれぞれの特徴やAVAの特徴も出た素晴らしいワインばかりでした。料理もワインも堪能。
この後はホテルに戻って1時間半ほど自由時間の後、いよいよクライマックスのディナーを迎えます。
豪華なランチを食べたばかりで、今度はディナー? と思われそうですが、そうなのです。強靭な胃袋が必要です。
今回はこのレストランを我々のグループで貸し切りです。というのはなんと、厨房に入れてもらって、シェフ自ら料理教室をしてくれるというのです。これには驚きました。シェフはフィリップ・テシエ。ボギューズ・ドールという世界最高の料理コンクールで2015年に2位に輝いています。
教えてくれるのは、ここの代表的なメニューの一つであるヌーディ(Gnudi)。Gnudiを検索するとイタリアではラビオリの中身だけといった料理のようですが、ここのヌーディは一種のパスタ。材料は特別なものではありませんが、手間暇かけて素晴らしい料理に仕上げます。
材料は自家製のレモン風味リコッタチーズとパルメザンチーズ、卵黄、タピオカ粉、乳製品ベースの粉、色止めの酸、塩です。基本的にはこれをミキサーでミックスし、ピンポン玉大に丸めて指の腹でつぶし、小麦粉の中に入れて丸1日冷蔵庫で保存します。最初は柔らかかったのが、これでゴムのような弾力になり、周りの粉をきれいに取ったら完成です。
難しいところはないですが、ひびが入らないようにきれいに丸めるには打ち粉を付けすぎないようにする、きれいに粉を払うなど、気を使うところはいくつかあります。また何より1日寝かせるため時間はかかります。これを1日200個くらい作るそうです。
レストランで実際に料理として供するときは、これを3分蒸して、季節ごとのアレンジで提供します。下ごしらえは手間がかかりますが、料理を出すときは3分で用意できる手軽さもレストランにとってはいいとのこと。春から秋はカボチャ系の花でくるんだようなアレンジをするそうですが、今年は寒くて遅れているので冬から続いているマッシュルームのアレンジです。マッシュルームの出汁を取り、トリュフで風味を付けます。Gnudiの上には飾りで薄切りのマッシュルームを載せ、マッシュルームとトリュフのソースは客席でかけます。このようにシンプルな食材で手間を掛けて少しだけ高級なものを使ってほかとは違う料理にするのがこのレストランの趣向だそうです。
グループに分かれてワイワイとGnudiを作ります。混ぜる人、粉をはたく人と分担して楽しく料理(のマネごと)をしました。
料理教室の後はセラーの見学です。
ここの初代のソムリエは前の日の「レジェンドワインメーカーたちが語るナパカベの歴史」でモデレーターを務めていたケリ・ホワイトさん。「Napa Valley Now & Then」という大著の著者でもあります。彼女がナパでもナンバーワンのワインリストを作り、現在はマスター・ソムリエのヴィンセント・モローさんが引き継いでいます。ワイン・スペクテーターのグランド・アワードという最高の賞も受賞しています。
セラーは3カ所に分かれていて、2600本を超えるコレクションがあります。
これは1935年のSIMIのワイン。9500ドル。
一番高価なワインはこれ。「パリスの審判」で1位になったスタッグス・リープ・ワイン・セラーズの1973年のカベルネ・ソーヴィニヨン。35000ドルです。
ここのワインリストはこちらで見られます。
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セラー見学の後はいよいよ食事です。
料理では先程のGnudiも。もちろん我々が作ったのではありません(シェフは明日お店で出すとジョークを言っていましたが、おそらくスタッフの口に入ったのではないかと)。食感が面白く、トリュフマッシュルームのソースも絶品でした。
それ以外にはTruffle Glazed Chickenという名物料理もとても美味しかったです。
シンプルな鶏の胸肉のローストのように見えますが、実は身と皮の間に旨味の多いチキンの脚などを使ったペーストが挟まれており、見た目と比べて遥かに複雑な味わいでボリュームもあります。これも準備に2日間くらいかかるという手の込んだ逸品。Gnudi同様、シンプルな食材に手間をかけて少し高級な食材でアクセントを付けた料理になっています。
もちろん、今回もすばらしいワイナリーの代表者やワインも一緒です。今回のワイナリーはダリオッシュ(Darioush)、パイン・リッジ(Pine Ridge)、ラッド(Rudd)、シルバーオーク/トゥミー(Silver Oak/Twomey)の4つです。
今回のツアーでは白はオープニングの立ち話をしながらの談笑時間に飲むことが多く、あまりちゃんとコメントが書けていないのですが、このランチではRuddとTwomeyのソーヴィニヨン・ブランが対照的で面白かったです。Ruddの方はMt. Veederのブドウを使っておりフレッシュ感とミネラル感があり、Twomeyはナパとソノマのブドウをブレンドすることで、豊かな酸とリッチな味わいを持っています。どちらも美味しい。
ナパでヴィオニエのイメージはあまりないと思いますが、今回はシャペレーで素晴らしいヴィオニエを飲み、このランチでもDarioushのヴィオニエとPine Ridgeのヴィオニエとシュナン・ブランのブレンドを飲みました。Darioushはとにかく華やか。白い花の香りやトロピカル・フルーツの香りで「アロマティック」という言葉そのままに感じます。Pine Ridgeのヴィオニエ+シュナン・ブランは以前から好きなワイン。日本でも安いところでは1000円台というコスパの良さも抜群です。
赤はまずはシルバーオークのカベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー2018。説明不要かと思うくらい有名で人気のあるワインですが、長年スタイルを保ちつつ進化もしているのが素晴らしいと思います。シルバーオークはアメリカンオークの樽を使うことで知られており樽のメーカーも持っているほど力を入れていますが、決して樽香が強すぎるわけではなく、ボディも酸もきれいなレベルでまとめています。また、このヴィンテージからはラベルを変更しています。
以前はボトルにエッチングを施していたのですが、カーボンフットプリントの観点からはあまり良くないと考え、シンプルな紙のラベルに変えたのです。シルバーオークは環境保全への取り組みでも先進的であり、その姿勢がここにも現れています。
Pine Ridgeは、前回のナパ訪問のときにワイナリーにも行っていますが、スタッグス・リープ・ディストリクト(SLD)に4つの自社畑を持っています。今回はそのSLDのカベルネ・ソーヴィニヨン2019です。ドライプルーンなど青系の完熟した果実の風味やリコリスなど、やや甘やかさがあります。完熟した果実の風味というのはSLDの特徴とも言えるでしょう。かなり強いタンニンがありますが、非常にこなれています。これもSLDの特徴の一つで「鉄の拳を持った貴婦人」などと称されています。総じてSLDらしさの出た美味しいワインでした。このワインはこれまで輸出には出していなかったのですが、今後日本に入ってくることになりそうです。
Ruddからは2019年のSamantha's Cabernet Sauvignon。オークヴィルにある自社畑からのセレクションで、若いうちから飲みやすいスタイルに仕上げています。ナパらしい果実を前面に出したスタイルを目指し、新樽率は51%、エレガントで複雑さも持つワインに仕立てています。果実味が非常にきれいなのが特徴でリッチで洗練された雰囲気がいかにもオークヴィルです。
DarioushからはMt.VeederにあるSage Vineyardという自社畑の赤ブレンド。良年しか作られないワインで、これは2019年です。75%カベルネ・ソーヴィニヨン、15%カベルネ・フラン、10%メルロー。山カベらしいしっかりとしたストラクチャーが出たワイン。
4ワイナリーそれぞれの特徴やAVAの特徴も出た素晴らしいワインばかりでした。料理もワインも堪能。
この後はホテルに戻って1時間半ほど自由時間の後、いよいよクライマックスのディナーを迎えます。
豪華なランチを食べたばかりで、今度はディナー? と思われそうですが、そうなのです。強靭な胃袋が必要です。