ナパツアー4日目その3――レジェンドワインメーカーたちが語るナパカベの歴史
今回の記事はナパヴァレー・ベスト・ソムリエ・アンバサダーの山田琢馬君に書いてもらいました。琢馬君、ありがとう!
午後からはフリーマークアビーにて"ナパ・ヴァレーワインの歴史と未来"というテーマのパネルディスカッションへ。ホストでもあるフリーマーク・アビー(Freemark Abbey)を長年ワインメーカーとして支えてきたテッド・エドワーズ(Ted Edwards)。
ナパ・ヴァレーにおける女性醸造家の先駆け的な存在キャシー・コリソン(Cathy Corison)。
マスター・ソムリエでハイツセラーズ(Heitz Cellar)などの複数のワイナリーを手掛けるカールトン・マコイ(Carlton McCoy)。
そして1895年創業の老舗ワイナリー、ラークミード(Larkmead)のエイブリー・ヒーラン(Avery Heelan)。
モデレーターは重さ10kgを超える大著"Napa Valley, Then & Now"の著者で、ナパ・ヴァレー屈指のエデュケーター、ケリ・ホワイト(Kelli White)を迎えて進行するという、超豪華なメンバーにひたすら目を輝かせていました(笑)
冒頭の30分はケリ・ホワイトによる、ナパにおけるカベルネの歴史とスタイルの変遷の話でした。ナパにおいてカベルネにスポットが当たり始めたのは禁酒法が終わってしばらくしての事で、それ以前はジンファンデルやリースングで造られるワインが人気だったようです。また禁酒法の最中、ワイン製造自体は禁止されていなかったため、自宅でワイン製造する人が急増し、ブドウ栽培農家への需要が集中したという面白い現象についても語っていました。
1961年のハイツ・セラーズ(Heitz Cellar)や1966年のロバート・モンダヴィワイナリー(Robert Mondavi Winery)などの創業を皮切りにナパにおけるカベルネの黄金期に入ったとの事で、当時は強いタンニンながら早摘みによって酸を残し、アルコール度数が抑えられたスタイルが一般的だったようです。
パリスの審判(Judgement of Paris)でのナパワインへの注目や、名だたる評価メディアの誕生(Wine SpectatorやWine Advocateなど)によって大きく躍進した1970年代、より食事に寄うために酸の残ったエレガントなワイン造りが主流となった1980年代、密植の流行・評価メディアで評価されやすいワイン造りが主流になり、97年に経験した長いハングタイムによって濃厚でリッチなスタイルが確立された1990年代、現在のクラシックへの回帰など、カベルネ一つとってもかなり激動の時代を歩んできた事が分かりやすく語られました。
ケリの話の中で特に印象的だった事は、流行りに乗るためにクラシックに回帰したというよりは、干ばつや熱波、山火事などの気候変動に対応するための自然かつ最善の方法がクラシックへの回帰だったという事です。
さて、テイスティングでは4種類のカベルネベースのワインをテイスティングしました。
まずはFreemark Abbey Bosche Vineyard 2002。
カベルネをベースとしたブレンド。マグナムボトルで供されました。黒系フルーツの香りに黒鉛、レザーや腐葉土のような熟成のトーンが相まって非常に複雑な香りですが、未だに若々しさすら感じます。綺麗な酸と丸みのあるタンニンによって非常しなやかな質感となっていました。
続いてCorison Cabernet Sauvignon2011。ここ30年で最も難しいビンテージだったという2011年。雨が多く冷涼な年だったという事で、果実の乗り方こそ穏やかでしたが、未熟なニュアンスは一切なく、瑞々しい酸と穏やかなタンニンを纏ったエレガントなテイストでした。
3杯目はLarkmead Solari Vineyard 2013。日本未輸入、長い歴史を持つカリストガのワイナリーの単一畑です。2013年は干ばつが始まった年との事で、香りと味わいともに凝縮感とボリュームを感じさせる印象でした。しかし全体を支える酸も豊富に感じる事が出来たため、重々しさはほとんど感じませんでした。
ラストはカールトン・マコイが持つブランドの一つ、バージェス(Burgess)のハウエル・マウンテン(Howell Mountain)にある標高300mの単一畑Sorenson Vineyard 2021を。赤黒いフレッシュなフルーツの香りに黒鉛やハーバルなトーン、生き生きした酸と口中を掴むようなグリップを感じるタンニンによって引き締まった印象を受ける、まさに"山カベ"といった洗練されたテイストでした。
全てのワインに精通して感じた事は、重々しい雰囲気はなく、そのどれもに一定の"清涼感"と"瑞々しさ"を持っているという事でした。
これこそまさにナパ・ヴァレーのクラシックな味わいである事を再確認できた素晴らしい機会となりました。
=====琢馬君の記事はここまで====
さすがソムリエ。ワインの表現は素晴らしいですね。琢馬君はナパの2次試験のペアリングコンテストでも1
位になっており、僕にないものをいろいろ持っています。また機会があったら書いてもらおうと虎視眈々、狙っています(笑)。
なお、この後は趣向を変えて、日本のナパワイン事情について、レストランやホテル、小売店などの立場から説明するという逆向きのセッションもありました。私も少しお話させていただきました。
午後からはフリーマークアビーにて"ナパ・ヴァレーワインの歴史と未来"というテーマのパネルディスカッションへ。ホストでもあるフリーマーク・アビー(Freemark Abbey)を長年ワインメーカーとして支えてきたテッド・エドワーズ(Ted Edwards)。
ナパ・ヴァレーにおける女性醸造家の先駆け的な存在キャシー・コリソン(Cathy Corison)。
マスター・ソムリエでハイツセラーズ(Heitz Cellar)などの複数のワイナリーを手掛けるカールトン・マコイ(Carlton McCoy)。
そして1895年創業の老舗ワイナリー、ラークミード(Larkmead)のエイブリー・ヒーラン(Avery Heelan)。
モデレーターは重さ10kgを超える大著"Napa Valley, Then & Now"の著者で、ナパ・ヴァレー屈指のエデュケーター、ケリ・ホワイト(Kelli White)を迎えて進行するという、超豪華なメンバーにひたすら目を輝かせていました(笑)
冒頭の30分はケリ・ホワイトによる、ナパにおけるカベルネの歴史とスタイルの変遷の話でした。ナパにおいてカベルネにスポットが当たり始めたのは禁酒法が終わってしばらくしての事で、それ以前はジンファンデルやリースングで造られるワインが人気だったようです。また禁酒法の最中、ワイン製造自体は禁止されていなかったため、自宅でワイン製造する人が急増し、ブドウ栽培農家への需要が集中したという面白い現象についても語っていました。
1961年のハイツ・セラーズ(Heitz Cellar)や1966年のロバート・モンダヴィワイナリー(Robert Mondavi Winery)などの創業を皮切りにナパにおけるカベルネの黄金期に入ったとの事で、当時は強いタンニンながら早摘みによって酸を残し、アルコール度数が抑えられたスタイルが一般的だったようです。
パリスの審判(Judgement of Paris)でのナパワインへの注目や、名だたる評価メディアの誕生(Wine SpectatorやWine Advocateなど)によって大きく躍進した1970年代、より食事に寄うために酸の残ったエレガントなワイン造りが主流となった1980年代、密植の流行・評価メディアで評価されやすいワイン造りが主流になり、97年に経験した長いハングタイムによって濃厚でリッチなスタイルが確立された1990年代、現在のクラシックへの回帰など、カベルネ一つとってもかなり激動の時代を歩んできた事が分かりやすく語られました。
ケリの話の中で特に印象的だった事は、流行りに乗るためにクラシックに回帰したというよりは、干ばつや熱波、山火事などの気候変動に対応するための自然かつ最善の方法がクラシックへの回帰だったという事です。
さて、テイスティングでは4種類のカベルネベースのワインをテイスティングしました。
まずはFreemark Abbey Bosche Vineyard 2002。
カベルネをベースとしたブレンド。マグナムボトルで供されました。黒系フルーツの香りに黒鉛、レザーや腐葉土のような熟成のトーンが相まって非常に複雑な香りですが、未だに若々しさすら感じます。綺麗な酸と丸みのあるタンニンによって非常しなやかな質感となっていました。
続いてCorison Cabernet Sauvignon2011。ここ30年で最も難しいビンテージだったという2011年。雨が多く冷涼な年だったという事で、果実の乗り方こそ穏やかでしたが、未熟なニュアンスは一切なく、瑞々しい酸と穏やかなタンニンを纏ったエレガントなテイストでした。
3杯目はLarkmead Solari Vineyard 2013。日本未輸入、長い歴史を持つカリストガのワイナリーの単一畑です。2013年は干ばつが始まった年との事で、香りと味わいともに凝縮感とボリュームを感じさせる印象でした。しかし全体を支える酸も豊富に感じる事が出来たため、重々しさはほとんど感じませんでした。
ラストはカールトン・マコイが持つブランドの一つ、バージェス(Burgess)のハウエル・マウンテン(Howell Mountain)にある標高300mの単一畑Sorenson Vineyard 2021を。赤黒いフレッシュなフルーツの香りに黒鉛やハーバルなトーン、生き生きした酸と口中を掴むようなグリップを感じるタンニンによって引き締まった印象を受ける、まさに"山カベ"といった洗練されたテイストでした。
全てのワインに精通して感じた事は、重々しい雰囲気はなく、そのどれもに一定の"清涼感"と"瑞々しさ"を持っているという事でした。
これこそまさにナパ・ヴァレーのクラシックな味わいである事を再確認できた素晴らしい機会となりました。
=====琢馬君の記事はここまで====
さすがソムリエ。ワインの表現は素晴らしいですね。琢馬君はナパの2次試験のペアリングコンテストでも1
位になっており、僕にないものをいろいろ持っています。また機会があったら書いてもらおうと虎視眈々、狙っています(笑)。
なお、この後は趣向を変えて、日本のナパワイン事情について、レストランやホテル、小売店などの立場から説明するという逆向きのセッションもありました。私も少しお話させていただきました。