ワイン・エンスージアスト誌が2020年のナパやソノマのカベルネ・ソーヴィニョンを総括する記事を上げています(Don’t Be Afraid of Napa and Sonoma’s ‘Smoke Vintage’ | Wine Enthusiast Magazine)。

2020年は二つの山火事によって煙の被害が出て、多くのワイナリーがワイン造りをあきらめた年。8月17日に発生したLNU Lightning Complex Fireはナパやソノマ、ソラノ郡などで雷から同時多発的に発生した火事で、特にナパの東部やソノマの西部で広い範囲が火事になりました。さらに9月27日に発生したGlass Fireはスプリングマウンテンなどナパとソノマの間で大きな火事になり、いくつかのワイナリーやブドウ畑、ホテルも焼失し煙の広がりも大きくなりました。こちらが特に多くのワイナリーが煙被害でワイン造りをやめた理由になっています。

結論としては97本のナパとソノマのカベルネ・ソーヴィニョンを試飲した結果、煙の影響が感じられたワインはほとんどありませんでした。ただ、ワインの数自体が例年よりずっと少ないため、2020年のワインを見つける機会はあまり多くないかもしれません。また、ヴィンテージ評価は88点と2011年以来初めて90点を下回りました。とはいえ難しかった2011年(あるいはこれも難しい年として知られている1998年も)は、熟成するときれいに飲みやすいという評価もあり、ヴィンテージ評価をうのみにする必要もないかもしれません。

評価の高かったワインの一つがコリソン(Corison)。セント・ヘレナの西側にあるワイナリーです。コリソンは他のワイナリーよりも早摘みの傾向があることと、セント・ヘレナのそのあたりが比較的煙の影響が少なかったことなどにより、問題なくワインが作れたといいます。同じセント・ヘレナ西部にあるスポッツウッドも他の評価誌で高く評価されていることから、セント・ヘレナは2020年のねらい目かもしれません。

また、2020年は掘り出し物が見つかる可能性もあります。例えば通常ならリザーブとして高く売るものも通常のボトリングにするなどワインの種類を減らしたワイナリーも多く、通常版のクオリティが上がっているケースもありそうです。Precision Wineは、主に買いブドウでコスパの高いワインを作るワイナリーですが、2020年はワイン造りをあきらめたワイナリーから多くのブドウを購入しています。そこから煙の影響を調べ、問題なかったものをワインにしています。結果として2020年のナパのワインの1割がPrecisionによるものだという試算があるというから驚きです。

白ワインも収穫の早さと、醸造時に皮を使わないことから煙の影響はほとんどありません。

2020年のワイン、少なくとも避けて通る必要はなさそうです。