会社のロッカーの中から古いワインスペクテーター誌を発掘しました。2003年7月31日号、特集は「California’s New Generation」というタイトルで、ワインメーカーを中心に10人のワイン業界人を取り上げています。たぶん、この特集が読みたくて買ったのでしょう。日本の紀伊國屋書店のシールが貼ってありました。価格は1270円。米国では4ドル95セントとなっており、おそらく航空便で運んでいるのだと思いますが、価格は結構リーズナブルに感じます。

さて、特集の10人ですが、以下のようになっています(肩書は当時)
・Greg Brewer(Brewer-Clifton、Melvilleのワインメーカー)
・Thomas Brown(Outpost、Chiarello、Nicholson Ranch、Schrader、Tamber Bay、Frank Familyのワインメーカー)
・Marc Cuneo(Sebastiani)
・Kris Curran(Sea Smokeワインメーカー)
・Mat Garretson(Hospice du Rhone主宰など)
・Agustin Huneeus Jr.(Constellation Brandsの高級ワイン部門CEO)
・Brian Loring(Loring創設者)
・Philippe Melka(Bryant Family、Vineyard 29などのワインメーカー)
・Cecilia de Quesada(Ristowのビジネス・マネジャ)
・Vanessa Wong(Peay Vineyards)

特に興味深かったのがトーマス・リヴァース・ブラウン。

ワインマニアとしてトーマスがナパに移住したのが1996年。1997年にTurley Wine Cellarsで職を得、それからOutpostのジンファンデルなどで有名になりつつあったころです。Wine AdvocateでSchraderのワインが次々と100点を獲得して注目を受けたのはおそらくこの2、3年後でしょう。既に多くの顧客を抱え始めていますが、今ほど注目される存在ではなかったと思います。

ワインも常に高得点というわけではなく、アウトポストのジンファンデルでは1998年に早くも93点を取っていましたが、ニコルソン・ランチ ピノ・ノワール ソノマ・ヴァレー2001は84点とかなり低い点にとどまっています(いずれもスペクテーターで)。このワインのレビューでは「土っぽい、皮のようなアロマがスパイシー、ハーブ、ルバーブ、煮詰めたプラムのフレーバーへと続く。 滑らかなテクスチャーだが、リッチさと風味には欠ける」とスペクテーターの編集者ジェームズ・ロービーが書いています。この評価に対してトーマスは「ピノは常に色が明るく果実味豊かなものだ。私はピノらしい香りと味わいのピノが好きなんだ」と反論しています。暗に、ジェームズ・ロービーのピノの好みを批判しているようなコメントではありますが、信念を強く持ってワインを造るトーマスらしさも感じられます。

次のようなやり取りも書かれています。
ある日、顧客とワインの価格設定について話していたとき、ブラウン氏は「ワインを作るのにいくらかかったかを見て、そのように価格設定したらどうですか」と提案した。顧客は笑ってその考えを却下した。「初年度のワイン販売で全額回収することではなく、プロジェクトの長期的な成功に目を向けてほしいと願うだけです」とブラウン氏は言う。(日本語はGoogle翻訳による)
このとき、トーマスは理自身のブランドであるリヴァース・マリーを立ち上げかけているところで、まだワイナリー名も決まっていなかったのですが、リヴァース・マリーのリーズナブルな値付けは、上記のような考えから来ているのかと思われます。

また、彼はワインマニアであり、ワインの教育は全く受けずにナパに来たのですが、このころはワインマニア心をまだ多分に持っています(今でも内心はそうなのかもしれませんが)。
「ワインメーカーになったことで、ワインをもっと高く評価できるようになりました。今では、テイスティングのときに、ワインを逆から味わうことができるからです。完成した製品から感じ取ったものを、それが作られたプロセスと関連付けることができるようになりました。」(日本語はGoogle翻訳による)
このように、ワインマニアとしてワインメーカーになったことを喜んでいる様子がうかがえるのも面白い記事でした。

というか、こんなことをサラッと言えてしまうのが、やっぱりトーマスは天才だと改めて思った次第です。

ちなみに、表紙の写真、トーマスだけ入っていません。何か理由はあったのでしょうけど、彼らしいと思いました。

このほかの記事ではグレッグ・ブリュワーの寿司職人のようになりたいという話も興味深いものがありました。寿司職人が、魚という素材をシンプルな調理で寿司に仕上げるように、ブドウの味わいをワインに反映させたいというような意味です。彼のミニマリスト的アプローチ、特にこの後のダイアトムでのワイン造りに強く通じていると感じました。