ロス・カーネロスのソノマ側で秀逸なピノ・ノワールやシャルドネを造るドナム(Donum)のディナーに参加しました。ドナムを輸入するワイン蔵Tokyoがイルドコリンヌで開催したイベントで、ドナム以外にもワイン蔵Tokyoが輸入するワインが供されました。

ワインメーカーのダン・フィッシュマンさん


グローバル・エステート・アンバサダーのマーク・デ・ヴィアMW

ドナムは2001年に設立されたワイナリー。ワイナリー名はギリシャ語でGiftの意味。土地からもらうギフトをワインにするという考えから名付けられたそうです。創設者のアン・モラー・ラッケは1981年にドイツから米国に渡り、1983年にカリフォルニア最古のワイナリとして知られているブエナ・ヴィスタでワインメーカーになりました。その後カーネロスの畑を大幅に拡張して、多くのワイナリにブドウの提供も始めました。2001年にブエナ・ヴィスタがアライド・ドメック社の手に渡った後、アンの手にTula Vista Ranchという土地が残り、そこが現在の本拠地となりました。2005年にはケネス・ユーハスをワインメーカーに迎えました。2011年にデンマークの投資家が買収、同年ダンさんもドナムで働き始めました。

オーナーが芸術好きで、畑にはそこかしこにアート作品が置かれています。
Love me

畑はDonumヴィンヤードのほか、そこから1マイル離れたTFVヴィンヤード、ロシアン・リバー・バレーのWinsideヴィンヤード、ソノマコーストに2019年に植樹したばかりのBodegaヴィンヤード、メンドシーノのアンダーソン・ヴァレーにAngel Campヴィンヤードと2023年に買収した有名なSavoyヴィンヤードがあります。栽培はオーガニックで、2023年にはROC(リジェネラティブ・オーガニック・サーティファイド)の認証も取っています。ROCは土壌の状態を昔のように健康な状態に持っていくことを主旨とした認証で、土壌にエネルギーとバイタリティを与えるとドナムでは評価しています。カーネロスでは初の認証です。ドナムは非常に栽培を重視しており、畑のテロワールを表現するワインを造ろうとしています。

カーネロスは粘土質の土壌が多く、必ずしもピノ・ノワールに最適な土壌というわけではありません。しかし、ROCを採用したことにより、土壌の状態がよくなって水はけも良くなってきています。ピノ・ノワールの栽培にはROCが特に大きな意味を持つようです。


生産の8割はピノ・ノワールで、あとはシャルドネです。カーネロスの畑にはごく少量だけメルローがあるとのことですが、ワイナリーを訪問した人しか買えないようです。

ワインの感想に移ります。

シャルドネは2021年のカーネロス・エステート(15950円)。柑橘の心地よい酸味とヴァニラの風味、白桃やネクタリンの柔らかな味わい。きれいで美味しいシャルドネです。ジェームズ・サックリングで95点。

シャルドネのクローンはオールド・ウェンテが中心。樽の風味はあまり付けたくないので新樽は1/3でトーストも軽くしています。MLFはしていません。ワインは結構ヴァニラ感があったので新樽率は高いのかと思いましたが、意外と低くて驚きました。


オーナーの夫人が中国人とのことで、ラベルには干支をモチーフにした絵柄があしらわれています。

ピノ・ノワールも2021年のカーネロス・エステート(18700円)。ワイナリー創設から毎年作り続けている唯一のワインとのことで、まさにドナムを代表するワインと言っていいでしょう。

ラズベリーやザクロの果実味に、紅茶やマッシュルームの風味。意外とタンニンもしっかりあります。カーネロスらしい落ち着きのあるピノ・ノワールです。


この後、このディナーのためにとダンさんが特別に持参されてきた「East Slope」という単一ブロックのピノ・ノワール(2022年)をいただきました。
East Slopeは東向きの斜面なので、朝日をしっかり浴びる一方で、午後の強い日差しはさえぎられます。またここはカレラ・クローンしかないそうです。わずか180ケースの生産量という貴重なワインです。

エステートのピノ・ノワールもかなりエレガントと感じたのですが、こちらを飲むと果実味のピュアさ、繊細な味わいがより強く感じられます。デリケートでありながら、芯には強さもあるピノ・ノワール。すばらしかったです。

ディナーでは、このほかカドレ(Cadre)のアルバリーニョ(これ、好きなんです)、ナパのエーカー(Acre)のメルロ、パソ・ロブレスのダオ(Daou)のカベルネ・ソーヴィニヨン・リザーブも供されました。個人的にはやはりCadreのアルバリーニョが良かったです。