バックナンバーなので入手にちょっと時間がかかってしまいましたが,東洋経済の12月5日号に載っていた「バリューワイン最前線2010」という記事を読みました。

全体としては,割と当たり前のことを書いていますが,文章が良くないし,フランスなど「伝統国」を上に見ているところが不必要に現れています。例えば次の一節。

通常,ワインはその年のブドウの出来や収穫量と需要などによって価格が決まる。対して新興国ワインの場合,毎年ワインに使えるブドウを一定量確保できるため,価格変動要素が少ない。


流して読んでしまいそうですが,前半では主に高級ワインにあてはまることが書かれているのに対して,後半ではこの記事の中心である「バリューワイン」について書かれています。つまり,比較の対象にならないものを比較したような文になっています。

この少し後に出てくる
「ボルドーはカベルネやメルローが中心だが,そのあたりは世界中で造られている。生産量でもブルゴーニュの10倍と圧倒的に多い」
というのも意味不明な文章です。

次のページでは「1000円以下“安ウマ”ワインの実態」として「木で香りづけ」とか「酸素注入」といったテクニックが使われていることが半ば揶揄するような調子で書かれています。

たとえば豊かな香りに欠かせない「樽香」。オーク樽などでワインを熟成させないと出せない香りだが,「プールいっぱいに溜められたワインの中に,木のチップや粉を投げ込んで香りをつける」(業界関係者)。酵母を安定させるためにボンベで酸素を加えたり,粉末でタンニンを加えることもあるというから驚きだ。


木の樽の代わりに「オークチップ」を使う手法は確かに安ワインでは一般的に使われているようですが,今の技術では木の樽と遜色ないレベルという話も聞きます。また,酸素を加えるテクニックは必ずしも安ワインだけのものではなく「ミクロビュラージュ」としてボルドーあたりでもかなり使われている手法だと思います。

また,フランスの味が時代遅れだという声に対して
あるフランス人のワインバイヤーは「ニューワールドワインはまるで加工食品。本来,ブドウの味を生かした農産物であるべき」と痛烈に批判する。

とあります。このようにここかしこにニューワールドを下に見る意識が現れています。

それに対して「輸入濃縮果汁」と使って作られる「国産ワイン」に対しては
低価格かつ国内産という安心感が,安定した人気を誇っている。

と微塵の批判もありません。

なんだかなあ。