ロバート・パーカーが世界の著名ワイナリを紹介している本「ロバート・パーカーが選ぶ[最新版]世界の極上ワイン」(原題は「The World's Greatest Wine Estates: A Modern Perspective」)を読みました。720ページの大著で,うちカリフォルニアには100ページ強割かれています。一番多くのページが使われているのは言うまでもなくフランスで約300ページ。米国は2番目で,3番目のイタリアをわずかに上回っています。

正直に言ってカリフォルニアのワイナリのところだけを目当てに買うにはもったいない本だと思います。他国の著名ワイナリと合わせて読むことで価値が高まるでしょう。

なお,カリフォルニアで取り上げられているワイナリは,Abreu,Alban,Araujo,Beringer,Bryant,Colgin,Dalla Valle,Dominus,Dunn,Harlan Estate,Kistler,Marcassin,Peter Michael,Robert Mondavi,Montelena,Newton,Pride,Ridge,Screaming Eagle,Shafer,Sin Qua Non,Togni。このほか米国ではワシントン州のQuilceda Creekが掲載されています。

各ワイナリ記事の構成は,歴史や醸造法などファクト部分,Parkerによる解説,ワインのレビューの三つからなっています。レビュー部分の比重が案外多く,もっと解説中心かと思っていたのでちょっと意外な感じがしました。個人的にはワイン・レビュー部分は時間の経過と共に風化していきやすいので,風化しにくい解説がもっと充実していた方がよかったのではないかと思いました。例えば,Bryantでワインメーカーが交代した話は解説部分ではなくワインのレビューの中で書かれています。このあたりはちょっと違和感がありました。

とはいえ,全体的に見れば非常によくまとめていると思います。もちろんあまたあるワイナリの中でどうしてこの選択になったのか,というのはいろいろあるでしょうが,それを言い出すときりがないので… 個人的にはそれなりにバランスが取れたよい選択だと思います。

なお,今回読んだのは日本語版ですが,はっきり言って翻訳はぎごちないです。例えば,フランスのシャトー・オー=ブリオンの解説で,ここの白ワインは「生産量が非常にわずかなため,所有者の要請で格付けされたことがない」と書いてありますが,この「格付け」とはパーカーによるレイティングのことでしょう。「格付け」というと別の意味合いに取られそうな気がしました。(この部分は私の勘違いでした)。アラウホの解説の最初の文など「1971年以来,カリフォルニアで最も熟成させる価値がある数本のワインであり,強烈な風味を持つカベルネ・ソーヴィニョンが,ナパ・ヴァレーの北端近くのカリストガのすぐ東にある,評価の基準となる土地に位置するエイゼル・ヴィンヤードで栽培されたブドウから生み出された」とほとんど意味不明です。「評価の基準となる土地」ってなんでしょうか。

ということで,英語が苦手でなければ英語版を買うのもいいと思います。値段もほぼ半額と安いですし。