米国産ワイン、5年ぶりの安値に カリフォルニア州のブドウが供給過剰」という記事がCNNに出ていました。供給過剰の状況は「カリフォルニアワイン、供給過剰で2019年は収穫量減少」の記事でも書いていますが、2018年に大豊作になった結果、収穫されずにそのままになってしまった畑が少なからずあったとのことです。「カリフォルニアワイン、オーバーサプライでセントラル・ヴァレーではアーモンドに転換も」でもその状況は紹介しています。
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2019年は25年ぶりに米国におけるワインの販売量が下がりました。グラフで分かるように、特に10ドル未満の安い価格帯のワインが減っています。

実はトータルの販売額は減っているというよりも横ばいなのですが、量では明らかに減っています。

これまで、米国のワイン消費を支えてきたのはベイビーブーマーと呼ばれる世代で、現在は50代後半から70代なかばになっています。ロバート・パーカーなどのワイン評論家の評価に敏感に反応するのもこの世代でした。ただ、この世代は引退の時期に入っており、これまでより所得も減ることが予想されています。加えて年齢的なこともあってこれからはワイン消費が減っていくだろうと考えられています。

代わってワイン消費の担い手になることが期待されているのが、ミレニアル世代ですが、この世代はあまりワインを飲んでいない。そこが今一番大きな問題になっています。

ワインを飲まないのには様々な理由があります。一つには金銭的な問題。

この世代は所得自体がこれまでほど伸びていないため、単価がワインには手を出しにくいという状態があります。

ただ、前述のように安いワインほど、落ち込みは大きいですから、価格だけの問題ではないと考えた方がいいと思います。

例えば健康志向。昨年来、アルコールの健康への悪影響が従来考えられていたよりも少ない量で起こるといった報道が繰り返されました。そのため、アルコールそのものを避ける動きも大きくなっているし、飲む場合にも度数の低いものを選ぶ傾向が増えているといいます。例えば、アルコール度数の低い「ハード・セルツァー」(日本の缶チューハイのようなもので、アルコール度数は低い)に流れているなどが浮かび上がっています。

ナチュラル志向というのもあります。ワインは基本的にナチュラルなものですが、マーケティング的にはそれを打ち出すのに失敗しているのではないかという意見もあるようです。

また、ミレニアル世代は「個」を大事にするため、スターバックスコーヒーなどのカスタマイズできるものに惹かれる傾向があります。ここも今のワインが弱い部分です。

カリフォルニアワインもこういった市場変化への対応がこれから先必要になってくるでしょう。2020年はその構造変化が始まる年として記憶されそうです。