Sanfordのピノとシャルドネは,アメリカにいたときに一番よく飲んだワインの一つです。ピノもその頃は10ドル台でしたが,これよりおいしいかどうかが僕にとっては高級ピノかどうかを判断するベンチマーク的存在でもありました。その後,創設者のRichard Sanford氏が喧嘩別れのような形でSanfordをやめてAlma Rosaを設立し,正直言ってSanfordがこれからどうなってしまうのか,かなり懸念していました。しかし今回のピノ,少なくとも柳屋の稲村店長は,激賞しています。ちょっと長くなりますが,テイスティング・ノートを引用しておきます。
ここまで安くなっているセール・ピノの味わいにこんなに驚かされることになろうとは…。最初に青い香りが感じられ、スモークのかかった樽のロースト香、さらには樽からくるヴァニラやクリーム、そしてラズベリージャムなど多彩なアロマが漂います。飲めばドライフラワーや品の良いカシス・リキュールなどにある果実味が口中にぶわっと広がり、それにしたがって塩気のある鉄分やミネラル、あるいは動物臭など複雑な味わいが展開されていきます。

繊細な蜘蛛の糸で織り込まれたようなキメこまやかなデリケートな舌触りがあり、少な目の酸を抱え、色合いに透明感はありながらエキス分たっぷりの果実味。アタック軽やかで素朴な印象を感じさせますが、時間とともにあらわれるフランボワーズなどの核果実のふくらみや官能的な風味は、ここしばらくアルコリックなスタイルが続いたサンフォードの魅力的な原点回帰を見ることが出来るもの。

この若さにもかかわらず既にしっとりとした落ち着きや色合いにもある完成した熟成間の表現は見事。タフでジャミーなカリフォルニアのスタイルとは一線を引くこの魅惑的なピノは、ブルゴーニュ通にも受けるに違いない相当のレベルの高い完成度。2,000円台??いやいや、ブラインドで飲んだら絶対に(価格の高いほうに)外します。

二日目以降にはさらに酸味はシルキーで洗練され、華やかな香りがなお広がり、ビロードのような肉厚な果実の深い味わいと多彩な変化を楽しめます。
2007.11.13 イナムラ@てんちょ
(ピノ・ノワール100%)

ちなみに価格は税抜き2990円。ワイナリ価格の29ドルより安いですが,米国では22ドル前後で売っているところもあるので,あえて現地価格とは書きませんでした。

なお,柳屋の解説にも書いてありますが,このピノ,ブドウはすべてSanford & BenedictとLa Rinconadaという単一畑で使われる畑のブドウを使っています。ワイナリの説明には「三つの畑」と書いてあり,柳屋にも上記の二つのほか「もう1箇所のエステート・ヴィンヤード」と書いてありますが,説明を総合するとSanford & BenedictとLa Rinconadaの二つのようです。それから,もしかしたらSanford & Benedictを「自社畑」と書いていることに「あれ」っと思う人もあるかもしれませんが,実はSanfordの現オーナーであるTerlato Wine Groupが今年11月5日付けで,この畑を買い取っています。したがって,ワインを作ったときにはまだ自社畑ではなく,ワインのラベルにも「Estate」とは書いてありません。ややこしいですが「現在の自社畑」であって,ワインを作ったときの自社畑ではないわけです。だからといってSanford & Benedictの価値が下がるわけではありませんが。

思い入れのあるワインだけに,説明が長くなってしまいましたが,このワインが税抜きとはいえ2000円台というのは,今の相場的には十分お買い得だと思います。僕は今は超金欠なので,買うのをためらっていますが,11月中はこの価格ということなので,きっと給料日を過ぎたら買うことでしょう。