ダラ・ヴァレとオルネライアの新プロジェクトが日本上陸、貴重なワインを試飲
カルトワインMayaのワイナリーとして知られているダラ・ヴァレ(Dalla Valle)とイタリアの「スーパータスカン」の代表格であるオルネライア(Ornellaia)。この2つの超一流ワイナリーの友情から生まれたプロジェクト「DVO」(名前は両者の頭文字を取ったもの)の国内輸入が始まり、輸入元のJALUXによるセミナーに出席しました。ダラ・ヴァレのワインメーカーであるマヤさんとオルネライアのアクセル・ハインツ氏はナパからのリモートでの参加です。
マヤさんの亡き父グスタフがイタリア出身(有名なスキューバ・ダイビング・グッズのScubaPro創業者)ということもあり、ダラ・ヴァレ家とオルネライアとの間には以前から親交があり、2013年にはマヤさんがインターンでオルネライアで修行しました。さらに、その後マヤさんがボルドーの大学院で修士課程に取り組んだ際も、修士論文のメンターになったのが同じ大学出身だったアクセル・ハインツ氏でした。ちなみにその論文はナパを詳しく掘り下げたもので、新しいブランドの構築をどうすればいいか、といったことにも言及しており、それもDVO設立の元になったとのことです。
オルネライアとしても、以前ロバート・モンダヴィがオルネライアを所有していたことや、ナパのカベルネ・ソーヴィニヨンのシンポジウムなどでナパにはなじみがあり、いつかはナパでワインを作りたいという希望があったそうです。そのときに単独で進出するのではなく、ナパに深く根ざした人とパートナーになることを考えていたため、その意味でもダラ・ヴァレがベストマッチであり、同じ価値観を共有できるパートナーだと言います。
プロジェクトを考え始めたのは2015年、2017年から実際にワインを造っています。ただ、2017年は少し難しいヴィンテージだったので、最初のワインとしてリリースするのはやめ、今回の2018年が世界的に初リリースのワインとなっています。2017年もいつかは世に出す予定ですが、まだ時期は決まっていないとのこと。
同じ北半球にあるイタリアとカリフォルニアでは収穫時期も近いため、アクセル氏はあまり頻繁にはナパには来れませんが、ブドウの生育期、収穫時期、ブレンドするときと3回は必ず来ており、それ以外にも綿密に連絡を取り合ってプロジェクトを進めています。コロナ禍においてもサンプルを送るなどで乗り切ったそうです。
ダラ・ヴァレはナパのオークヴィルに自社畑を持っていますが、DVOはこのブドウは使わず、すべて購入したブドウで造っています。両者で作るワインは「間違いなくナパのワインでありながらイタリアの考えを持ったもの」にしようということで、使用するブドウの畑を選んだとのこと。その結果オークヴィル、マウント・ヴィーダー、クームズヴィルの3地域を選びました。オークヴィルのリッチさに、やや冷涼なマウント・ヴィーダーとクームズヴィルのハーブの風味を加えたいという理由です。
使う畑はヴィンテージによっても多少変わりますが、今回リリースした2018年についてはオークヴィル2つ(Wine Spectatorの記事によると、うち一つはVine Hill Ranchのようです)、マウント・ヴィーダー、クームズヴィル各1つとなっています。比率で言うと50:40:10。品種はカベルネ・ソーヴィニヨン86%でカベルネ・フランが14%。カベルネ・フランはオークヴィルとマウント・ヴィーダーのものです。
マヤさんによると、マウント・ヴィーダーのような山のブドウは、ダラ・ヴァレのブドウと比べて優しく扱うことが必要であり、低い温度でゆっくりと抽出しているそうです。新樽率は70%で22カ月樽熟成後ボトリングしています。樽もダラ・ヴァレのものとは別に選んでいて、ミディアムからミディアムプラスでトーストしてもらっているとのことでした。
試飲しました。
色は非常に濃く、見るからにダーク。パワフルでフルボディのワインです。カシスやブラックベリーの黒果実の風味に加え、レッド・チェリーなどの赤果実の風味もあります。杉や森の下草の香り、スパイス、熟成肉、豊かな酸がナパのカベルネ・ソーヴィニヨンに欧州の雰囲気を加えています。タンニンもきめ細かいですが、かなりしっかりしており、20年以上の長期間の熟成でさらに良くなるだろうと思います。
デビューのリリースとしては非常に完成度の高いワイン。アクセル氏も考えていた方向性がちゃんと出たワインだと自信を持っている様子でした。
このほか、質疑応答ではナパとトスカーナ(ボルゲリ)との違いなどを聞きました。
一番の違いはナパの方が海に近く、その影響を大きく受けていること。特に昼と夜との温度差がナパは非常に大きいとのことでした。一方、トスカーナは灌漑なしで栽培しているのに対し、ナパでは多くの場合灌漑が必要です。また、ナパの方がオープンで、皆で助け合う風潮が強いそうです。
このほか、DVOのトスカーナ版の計画はないのか、という質問には「計画にはなかったが、よく聞かれるので考え始めている」ということで、今後さらに発展があるかもしれません。
ただ、生産量は年間400ケースと非常に少なく、日本に入ってきている数もごく少量です。日本での希望小売価格は5万円。
しばらくは生産量が大きく増えることはなさそうで、かなりのレアワインになりそうです。