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Date: 2022/0918 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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ちょっと前のこと、質問箱にこんな質問をいただきました。うーん、と考えた結果送った回答がこれ。
ニンニクのパンチがありますから、それを受け止める強さがあるワインが良さそうに思います。赤身ということでロンバウアーのシャルドネやモンダヴィのフュメ・ブラン・リザーブのような樽の効いたタイプの白が合いそうな気がします。赤ならばダックホーンのメルローとかでどうでしょうか。後はソノマ・コーストのちょっとダークなフルーツ感のあるピノ・ノワール、例えばハーシュあたりを試してみたい気もします(ちょっと冒険ですが)。
質問箱は匿名なのでどなたが質問されたのかはわからないのですが、Twitterで質問された方から「モンダヴィのフュメ・ブラン・リザーブを買ったので一緒に試してみませんか」とお誘いを受け、まだお会いしたことはない方でしたが、それまでも何回かやり取りはしていたので、一緒に食事にいったのでした。


肉だから赤と考えてしまうところですが、馬刺しは肉の味自体は割とさっぱりとしているので白の方が合わせやすいかと、そしてニンニクのパンチに樽の風味、と考えたのですが、実はそれ以上に個性的で風味が強いのが馬肉と一緒に仕入れているという熊本の醤油です。九州ならではの甘く少しねっとりとした醤油で、モンダヴィのフュメ・ブランとこの醤油が予想以上によく合い、刺し身の味も引き立てる効果がありました。2013年で少し熟成感が出ているのも良かったのかもしれません。

モンダヴィはワイナリーを作った60年代後半に、それまでカリフォルニアでは甘口のワインくらいしか作られていなかったソーヴィニヨン・ブランでシリアスなワインを作りたいと、樽を効かせて「フュメ・ブラン」(ピュイィ・フュメへのオマージュも含まれています)という名前を付けて売り出し、大ヒットになったのでした。

畑はト・カロン。カベルネ・ソーヴィニヨンならば1本200ドルはくだらないほどの高級ワインを作る畑ですが、ソーヴィニヨンは1945年に植えられた「iブロック」という有名な一角にあります。無灌漑で仕立て用のワイヤーを使わないヘッド・プルーンの仕立て。ブドウは生き延びるために深く根を張り、生産量も自然に生き残れるだけのバランスを取った形になります。


結局それ以外に、私が持っていったニュートンと、もう1本持ってきていただいていたKenzoのAsuka(カベルネ・フラン)も開け、料理もおいしく、話も楽しくちょっと飲みすぎて帰りました(無事に帰宅できましたが)。

お店はこちら。
フレンチ割烹 kamenote (カメノテ) - 八丁堀/フレンチ | 食べログ
Date: 2022/0915 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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先週の土曜日の話になりますが、豪徳寺のワインステーションさんで開かれた「安旨ピノ・ノワール」に参加してきました。

参加者は税込み3000円以下のピノ・ノワールを持参し、ブラインドで試飲して、トップ3のワインに1位=3点、2位=2点、3位=1点で投票。合計点で順位を付けるというものです。

私が持参したのはデコイのピノ・ノワール2020。デコイのピノ・ノワールは親会社のダックホーンがカレラを買収した後、カレラのセントラル・コーストで使っているブドウも使えるようになったため、品質がかなり上がりました。2000円台だとガーネット(外の人が持参していました)とかアルタマリアとかも候補に上がりますが、こういった「訳あり」系はあえて外した洗濯です。

ピノ対決

表の点数は、私が付けたもの。16種類もあると順位を付けるのも大変なので、思い切って点数を付けてしまって順位を決めることにしました。

自分が持参したワインに一番高い点を付けていますが、これはご祝儀点です。銘柄が見えないようにアルミホイルを巻いて持参していますが、ホイルの巻き方で自分が持って行ったのは分かってしまいました。持参したデコイはややタニックで閉じた感じがありました。そのときの状態で評価するなら87から88といったところだったと思います。

それを除くと一番高い点を付けたのは11番の「Pali Huntington Pinot Noir 2017」。これもカリフォルニアです。パリのハンティントンは「アイコニック ワイン・ジャパンの試飲会で美味しかったワイン(2019年春)」など、これまで何回も紹介しているワインで個人的にも非常に高く評価しています。ただ、現在の定価が4400円になっているので、3000円以下で買える候補としては見逃していました。

実は16種類のうち、一番最初に試飲したワインがこれでした。ちょっとそれでいきなり予想した水準よりかなり美味しいワインが来たのでかなりびっくりしたのでした。90点を付けるときも、これ以上美味しいのばかりだったらどうしようとちょっと躊躇したのですが、結果的にはこれを超えたのは個人的にはなかったです。

なお、全体の投票ではこのワインは2位。1位になったのはあいさん持参のブルゴーニュのピノ・ノワールでした。

3位を付けたのは15番のワイン。なんと私が持参したのと全く同じワインです。でも味わいはこちらの方が開いていました。ボトル差の範疇なのか、ショップや輸送の条件などによるものなのかわかりませんが、同じワインとは思いませんでした。

ただ、これも自分のワインよりかなり早くテイスティングしたのですが、味わい的には「自分が持ってきたワインかも」と思ったんです。でもホイルの巻き方が違うので、そんなはずはないと、同じワインと見抜く可能性を自分でつぶしてしまっていました。これわかったらかっこよかったんですけどね。結果的にはこちらのデコイは4位くらいだったと思います(私のは7位か8位かかろうじて半分より上でした)。

なお、より詳しいレポートは安ワイン道場師範のページをご覧ください。
2022年9月:稽古日誌

今買ったらやっぱり3000円超えてしまいますね(しあわせワイン倶楽部)。


ココスです。

Date: 2022/0815 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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カルディで「決算チャンスボックス」という、ワインくじを買ってみました。
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1200円(税抜き)で、一番高いワインだと7500円のシャンパーニュが入っています。安くても1800円ということで損はありません。知り合いの中にはボトルの重さなどから見事シャンパーニュを選んだ人もいます。

こういったものには手を出すことはあまり多くないのですが、店頭で残り5本ということで気が向いて買ってみました。

結果はこれ。ラベルが安っぽい印象だったので、「こりゃ外れだな」と思ったのですが、チラシを調べてみたらシャンパーニュの次に高い4500円のイタリア産ボルドーブレンドでした。

というわけで、残り物には意外に福がありました。ただ、個人的には、どうせイタリアワイン飲むならネッビオーロとかモンテプルチアーノが飲みたかったかな、とも。

たまにこういうのも楽しいですね。
Date: 2022/0812 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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1990年代末から2000年代初期に「カルトワイン」のブームが起こり、スクリーミング・イーグルやハーラン・エステートなど超高品質なワインを少量作るワイナリーが脚光を浴びました。今世紀に入ってからも、その成功をなぞるようなワイナリーがいくつも出てきましたが、その中でもトップの一つに位置するのがレアム(Realm)です。

例えば、「パーカー100点」のワインをこの10年(2012年以降)のヴィンテージで何本取っているかを見ると、一番がハンドレッド・エーカーの18本、2番がコルギンの15本で、3番にレアム(と同率でシネ・クア・ノン)が13本となっています。

レアムは2002年にオークランドで看護師をしていたホアン・メルカドが設立しましたが、実は当初は芽が出ず、2011年には倒産寸前にまで追い込まれていました。ワインメーカーもやめてしまい、新たなワインメーカーとして就任したのがブノワ・トゥケ。この人はボルドー大学を出て、ミシェル・ロランに師事し、ロランの命を受けて米国に行き、アンディ・エリクソンのもとで働いていました。そして偶然ホアンと友人になり、ルームメイトにもなっていたのでした。さらに、ハーランやボンドで財務を担当していたスコット・ベーカーが経営に参加。ベクストファー・ト・カロンのブドウが使えるようになり、一気にスターダムに躍り出たのでした。

そんなレアムのワインを12本も開けるというワイン会に参加させていただきました。

ラベルも非常に素敵なものが多いです。

ワインはソーヴィニヨン・ブランが1本とロゼが1本のほかはすべてボルドー系でした。

最初はソーヴィニヨン・ブランの「フィデリオ(Fidelio)」2018。ナパのワイナリーが作るボルドー系の高級ソーヴィニヨン・ブランというイメージ通りのワイン。酸は中程度で全体に丸みを感じます。樽のニュアンス、青リンゴ、濡れた石、ハーブ。

次は2020年のロゼ。品種はメルロー90%でカベルネ・ソーヴィニヨン10%。2020年は山火事でナパの多くのワイナリーで収穫を諦めたり、ワインを作っても売らない判断をしたりしています。レアムの場合は、煙の害を防ぐために早く収穫したブドウを使ってロゼにしてみたということ。レアムにとって初のロゼであり、もしかしたら最後のロゼになるかもしれません。直接圧搾法で、黒ブドウで白ワインのように作ったワインです。なので色はかなり薄め。トマトやクランベリーの風味がします。色の割には、味わいは意外とふくよかです。

次は「テンペスト(Tempest)」2018。レアムのワインは単一畑の名前と品種名を冠したものと、畑名も品種名も入れていない「プロプライエタリー・ブレンド」のものとに分かれますが、これはプロプライエタリー・ブレンドの中でも初期からあるワイン。メルローが80%とメインになっています。まだ少し若さを感じます。タンニンはやや強く、フルボディで余韻も長いです。

4本目は「ファルスタッフ(Falstaff)」2019。カベルネ・フラン50%にカベルネ・ソーヴィニヨン38%、メルロー12%。ワインの名前はシェイクスピアの劇に登場する喜劇的キャラクターから取っています。ちなみに、プロプライエタリー系のワインの名前はどれもシェイクスピアのモチーフになっています。

第一印象で重心の高さを感じます。一方でインクや黒鉛のしっかりした風味もあります。非常にシルキーなタンニン。ブルーベリーやオリエンタル・スパイスなど、重層的で多彩な味わい。引き寄せられるような魅力があります。その多彩な味わいがファルスタッフの名前にふさわしいのだと思います。この日のワインの中でもかなり人気の高かったワインでした。

5本目は「ザ・バード(The Bard)」2018。The Bardとはシェイクスピアのニックネームで、ラベルにはリチャード二世のテキストが描かれています。レアムの中ではエントリー的な位置付けのワインで、日本にも比較的多く輸入されています。エントリー的といっても評価は高く2018年はワイン・アドヴォケイトで96+、2019年は97点となっています。様々なブランドのセカンドワインの中でも非常にいいワインの一つです。様々な畑のブレンドになっており、非常にバランスが良く、若くても飲みやすいのが特徴。早飲みという意味でもレアムの入門には最適なワインです。

ここから先は単一畑に入っていきます。

6本目はクームズヴィルにある自社畑ファレラ(Farella)のカベルネ・ソーヴィニヨン2018。2018年に自社畑になりましたが、ワインを作り始めたのは2003年。長年調達していた畑を購入した形です。ミネラル感が強く、ハーブや鉱物のニュアンスもかなりある硬質なカベルネ・ソーヴィニヨン。パワフルで、やや山っぽい雰囲気のあるカベルネ・ソーヴィニヨン。

ようやく半分を超え、7本目はプリチャード・ヒルにあるホウイ(Houyi)のカベルネ・ソーヴィニヨン2016。この畑は今年レアムが買い取っています。これもミネラルやハーブのニュアンスがありますが山っぽくはなくシルキーなタンニンが印象的です。美味しい。

8本目は「ムーンレーサー(Moonracer)」2017。2015年に買収したスタッグス・リープの畑のワイン。非常にパワフルですが、濃いだけではなく芯の通った味わい。

9~11本目はベクストファーの3つの畑のカベルネ・ソーヴィニヨン。最初はセント・ヘレナにあるベクストファー・ボーン2018。暖かい地域の畑ですが、ワインからは重心の高さを感じます。非常に美味しい。

次は「ベクストファー・ト・カロン」2018。なんというかスケールの大きなワイン。とても濃くフルボディのワインですが、同時にバランスもよく総じて素晴らしいワイン。さすがト・カロンという出来です。

11本目は「ベクストファー・ドクター・クレーン」2019。ト・カロンよりもさらにパワフルで濃厚。言う事ありません。バランスもよく完璧。2012年から2019年の8ヴィンテージで6回100点を取っていますが、その凄さを垣間見られるワインです。

最後の12本目は「アブサード(Absurd)」2017。レアムのフラッグシップといっていいでしょう。すべてのワインの中から最良のものを選んでブレンドしたワインです。同じようなコンセプトのワインとしてはハンドレッド・エーカーの「レイス(Wrath)」がありますが、アブサードもレイスを彷彿とさせるようなスケールの大きなワイン。

ト・カロンでほぼ完璧と思い、ドクター・クレーンで完璧と思ったわけですが、アブサードはさらにそれを超えてくるような迫力と美味しさがあります。こりゃすごいですね。

後半はすごいとしか書いていない気がしますが、レアムのワイン、期待を裏切らない出来でした。最後の3本は間違いなくナパのカベルネ・ソーヴィニヨンのトップ中のトップに入るレベルですし、カベルネ・フラン主体のファルスタッフも非常に魅力的でした。また、ザ・バードは圧倒的に安いのに品質は高い。ナパにあまたあるセカンドラベルのワインの中でトップクラス間違いないワインです。レアムを体験したければ、まずそこから飲んでみてください。


ワインを提供してくださった谷口慎一郎さん


右は会場となったイル・ド・コリンヌの香奈さん

しあわせワイン倶楽部



柳屋

Date: 2022/0702 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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ウェンテ(Wente)のカベルネ・ソーヴィニヨン サザン・ヒルズ(サウザン・ヒルズ)2018を飲みました。ウェンテといえば、カリフォルニアのほとんどのシャルドネの元祖と言ってもいいほどシャルドネが有名で、特に「モーニング・フォグ」のシャルドネは個人的フェイバリット。2000円弱で買えるシャルドネとしては驚くほどバランスよく、いつ飲んでもおいしいワインです。

今回のサザン・ヒルズもモーニング・フォグと同じく「エステート・ティア」という自社畑のシリーズ。リヴァモア・ヴァレーの自社畑のブドウを使っています。国内価格は2000~2500円といったところ。

カリフォルニアに最初にカベルネ・ソーヴィニヨンを持ち込んだのはチャールズ・ウェットモアという人で、リヴァモアにシャトー・マルゴーからの苗木を植えたのですが、この畑も現在はウェンテの所有になっており、実はカベルネも元祖的存在なのです。

このサザン・ヒルズのカベルネ・ソーヴィニヨンも、モーニング・フォグと同様に非常にバランスよく、ミディアムプラスボディで酸もタンニンも中庸。きれいな果実味と余韻があって2000円クラスとは思えないレベルです。このクラスだと、樽を強めに効かせたり、ちょっと甘めの造りにするなどボディを強めに作って印象を強くしたワインが多いのですが、そういう奇をてらわずに正攻法でおいしいワインを作っている感じがします。

そもそもこのワイン、ワイナリー価格が20ドルで、輸送費とかを考えずに単純に計算しても3000円。普通は国内価格が4000円台になるくらいのワインです。ちょっと値付けが安すぎる感じがします。

とはいえ昨今の円安だと、今後値上がりする可能性もかなりありそうなので、今のうちに買っておくのが吉かもしれません。




Date: 2022/0621 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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カリフォルニアのロゼばかりを持ち寄ったワイン会に参加してきました。

写真の左から
★Daou Discovery Rose Paso Robles 2020 (Grenache, Sauvignon Blanc)
★Pax Trousseau Gris Russian River Valley 2019 (Trousseau)
★Eugenia Rose of Cinsault Central Coast 2017 (Cinsaut)
★Mattiasson Rose California 2020 (Syrah, Grenache)
★Cedarville "Susan Marie" Rose Fair Play 2020 (Syrah, Grenache)
★Flowers Rose Sonoma Coast 2020 (Pinot Noir)
★La Sirena Rosato Amador County 2018 (Primitivo)
★Amuse Bouche Pret a Boire Rose Napa Valley 2017 (Grenache, Syrah)

事前に「泡もあり」と聞いていたので1本くらいは泡があるかと思ったら全部スティルでした。

最初に開けたのは左から3番めのサンソーのロゼ。日本未輸入のものです。8本の中で一番色が薄かったのでこれから開けましたが、意外と味わいはしっかり。オレンジ系の風味が印象的でした。ロゼというよりオレンジワインぽい雰囲気。

2本目はマサイアソン(左から4番目)。私が持参したワインです。これはしみじみ旨いワイン。マサイアソンは全般にしみじみ系ですが、これは特にそれを感じました。

次はフラワーズ(だったかな?)。右から3番めです。意外にも唯一のピノ・ノワール・ベースのロゼです。これは皆大好きな味。やっぱりピノ・ノワールのロゼはいいですね。

パックス(左から2番め)は真っ白のラベルにエンボス加工でPaxの字が入っています(写真だと全然わかりませんが)。トゥルソーグリを使ったワインで、チャーミングな味わい。

ダオ(一番左)はグルナッシュとソーヴィニヨン・ブランのブレンドという珍しい組み合わせ。グルナッシュらしい風味がしっかりあります。酸もきれいで個人的にはかなり気に入ったワインです。

残り3本はブラインド(といってもラインアップは公開)で飲みました。

一番左のアミューズ・ブーシュは見るからに濃厚で、一番しっかりした味わい。赤ワインに近い味を求めるならこれですね。
ラ・シレナは非常に親しみやすい味。ちょっと残糖もあるかもしれません。
シダーヴィルはマロンペーストの風味が面白いワイン。輸入元のMitsyさん持参のワインです。

料理もロゼに合わせた形で用意していただきました。店は西馬込のイルドコリンヌです。





2時半からのワイン会で終わってもまだ6時前。この季節だとまだ外は明るいです。ロゼはこんなシチュエーションにも似合います。

正直、ロゼだけで飽きないかとか、ちょっと心配だったのですが、杞憂でした。ロゼばかり飲む機会とかめったにないので、こんなに違うんだということも分かり面白かったです。
Date: 2022/0531 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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ワインセラーに入り切らないワインが一向に減らないため、その消費を兼ねてワイン会を開きました。せっかくなのでセラーにずっといた熟成ワインを中心に飲みました。



ワインのラインアップはこの6本。
Bevan Cellars Sauvignon Blanc Dry Stack Vineyard 2019
Patz&Hall Chardonnay Alder Springs Vineyad 2000
Saint Joseph Lou Dumont lea Selection AOC Saint Joseph 1999
Saintsbury Syrah Rogers Creek Vineyard 2007
Patz&Hall Pinot Noir Pisoni Vineyard 2000
Spottswoode Cabernet Sauvignon 2005

3本目だけローヌのシラーです。ブルゴーニュ「ルー・デュモン」の仲田晃司さんが蔵出し古酒を厳選した「レア・セレクション」として販売されたもの。元々、これとカリフォルニアの熟成シラーを比べてみたいというのも、会の目的の一つでした。

お店は赤坂の「あじる亭Annesso」です。あじる亭は赤坂に2店舗ありますが、こちらに来るのは初めてです。



酸化したワインばっかりだときついなあと1本目は古酒でないソーヴィニョン・ブランです。

Bevan Cellars Sauvignon Blanc Dry Stack Vineyard 2019

ビーヴァン・セラーズのオーナー・ワインメーカーであるラッセル・ビーヴァンは、ワインマニアからワイン造りに転向した中でも稀有の成功例といわれています。ナパとソノマの様々な畑からワインを作っており、ナパのワインでは「パーカー100点」を10回以上取得しています。

このソーヴィニョン・ブランはソノマのベネット・ヴァレーのドライ・スタック・ヴィンヤードのもの。イタリア由来のクローンを使っているとのことです。カリフォルニアでもトップクラスのソーヴィニョン・ブランに名を連ねようとしているワイン。

無濾過で作られているため、ワインに濁りが見られます。ソーヴィニョン・ブランではかなり珍しい。青っぽい要素や、グレープフルーツ的な軽い苦味を伴う酸味もありません。はちみつやメロンの香り、パッションフルーツ、白い花。非常に香り豊かです。甘ったるいわけでもなくほどよい酸味でバランスもいい。とてもレベルの高いソーヴィニョン・ブランです。前の週に飲んだシェアード・ノーツとは全く違ってそれもまた面白い。


暑い日に嬉しいガスパチョ。ソーヴィニョン・ブランにもよく合いました。

Patz&Hall Chardonnay Alder Springs Vineyad 2000

2番めのワインは一番心配だった2000年のシャルドネです。
パッツ&ホールはドナルド・パッツ、ジェームス・ホール(ワインメーカー)と二人のパートナーであるヘザー・パッツ、アン・モーゼスが1988年に設立したワイナリー。当時は珍しかった「ネゴシアン」タイプのワイナリーで、ソノマを中心に優れた畑と契約してシャルドネとピノ・ノワールを造っています。現在はドナルド・パッツ夫妻はパッツ&ホールを離れて別のワイナリーを始めています。アルダー・スプリングス・ヴィンヤードはメンドシーノの畑で、有名なアンダーソン・ヴァレーよりもまだだいぶ北の人里離れたところにある畑です。海から18km程度、標高600~900m、急斜面という厳しい環境でブドウを栽培しています。この畑のワインは、カリフォルニアワインにしては珍しいほど果実味よりもミネラル感などを感じられるもの。2000年のこのワインについてはロバート・パーカーは「バタール・モンラッシェを彷彿とさせる」と書いています。


琥珀から、やや褐色になりかかった色合い。味はまだかろうじて生きています。シャルドネであるのはわかりますが、さすがに熟成のピークは過ぎてしまっています。杏やちょっと紹興酒っぽさもでています。


前菜のお皿はいろいろ乗っていて楽しい。マヨネーズを使っていないポテトサラダがお気に入りでした。

さて次はシラー仏米対決?です。
Saint Joseph Lou Dumont lea Selection AOC Saint Joseph 1999

グラスの写真を取り忘れましたが、茶褐色でかなり熟成は進んでいます。シラーのスパイス感や獣っぽさなどはほとんどなく、赤ワインとしかいいようのない状態。これはこれで美味しくいただきましたが、シラーとして期待するものとはちょっと違うところに行ってしまった感じはありました。


魚介の煮込みです。

Saintsbury Syrah Rogers Creek Vineyard 2007
さて、一方カリフォルニアのシラーはセインツベリーのもの。セインツベリーというとピノ・ノワールが有名ですが、実はシラーも作っています。このワインはインポーターの布袋ワインズがワイナリーの在庫から発掘してきたもの。現在は別の畑の熟成シラーが売られています。

こちらも写真を取り忘れましたが、まだ赤紫色がかなり残っており、若々しさもあります。スパイスやグラファイト、鉛筆の芯、ブルーベリーなどまだまだ元気。本当に15年経っているの? と思うほどでしたが、ボトルには大量の澱が残っておりそこに熟成感を感じました。まだ10年くらいは全然大丈夫そうな雰囲気です。シラー好きとしてはやっぱりこれくらいシラーらしさがある方が美味しく感じます。

Patz&Hall Pinot Noir Pisoni Vineyard 2000
ピゾーニですよ、ピゾーニ! サンタ・ルシア・ハイランズをピノ・ノワールの銘醸産地として世界に認めさせたその立役者といっていいでしょう。パッツ&ホールは1990年代からピゾーニのピノ・ノワールを作っています。私自身ピゾーニの畑のことを最初に知ったのはパッツ&ホールのメーリングリストでのことでした。なかなかこれくらい熟成したピゾーニを飲む機会はないので、私自身この日一番楽しみにしていたワインです。


写真でみてもわかるように、22年経っているとは思えないほどの若々しさ(ちなみに右のグラスがセインツベリーですね)。フランボワーズやザクロなどの赤系果実の風味もしっかりのこっています。熟成によるマッシュルームのような要素もあります。さすがにリリースしたてのような爆発感はないですが、非常にきれいに熟成しつつ、若さも保っておりとても美味しい。ここまで元気とは予想しませんでした。素晴らしい。


料理は赤ワイン煮込みで、この後の稚鮎のパスタは写真撮り忘れました。どちらかというと稚鮎にピノ・ノワールをあわせたほうがよかったかも。

Spottswoode Cabernet Sauvignon 2005
最後はスポッツウッドのカベルネ・ソーヴィニヨンです。

これは、まだまだ行けるに決まっているだろうと思って出しましたが、その通り。もう10年くらいしたほうが良かったかもしれません。パワフルでしなやか。素晴らしいカベルネ・ソーヴィニヨンです。



デザートも美味しゅうございました。店長兼ソムリエの野村美紀子さんには古いワインの抜栓ばかりでだいぶ苦労をおかけしてしまいましたが、気持ちよくサービスしていただきました。

うちのセラーには、これくらいのもう飲んであげたほうがいいだろうなというワインがまだいくらかありますから、お暇な方はお付き合いください。

セインツベリーの熟成シラー。むちゃくちゃお買い得だと思いますよ。

Date: 2022/0523 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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ネット上では20年来の知り合いであり、でもリアルで合ったのは半年前が初めてという安ワイン道場師範のサイト25周年パーティに参加してきました。場所は豪徳寺駅近くのワインステーションさん。南アフリカワインとオレンジワインを主体とするワインバーです。

ワインは各自の持ち寄り。総勢17名でワインも17種です。
会の詳しいことは「2022年5月:稽古日誌」に記されているので省きますが、私が持って行ったのがシェアード・ノーツ(Shared Notes)の「レ・ルッソン・デ・メートル(Les leçons des maîtres) 2019」です。記事の中でのNaotakaさんのコメントは「カリフォルニアの美味しい白ワイン」。そりゃそうですが、あまりにも情報量がないので、自分の感想を書いておきます。

このワインを選んだのはワインの名前が「師匠(師範)の教え」という意味だからですが、カリフォルニアの中でも素晴らしいソーヴィニヨン・ブランだと思っているからでもあります。

このワインはソーヴィニヨン・ブランとセミヨンを使ったいわゆるボルドー系のブレンドです。シェアード・ノーツではこれとソーヴィニヨン・ブラン100%のロワール系の2つのソーヴィニヨン・ブランだけを作っています。

ワインメーカーは元ウェイフェアラー(Wayfarer)のビビアナ・ゴンザレス・レーヴと、ピゾーニ(Pisoni)のジェフ・ピゾーニという超一流ワインメーカー夫婦。ビビアナはボルドーのシャトー・オー・ブリオンで修行していたことがあり、そのためにこの「師匠の教え」という名前を付けたそうです。

自分の持って行ったワインなので、ちょっとだけ真面目に飲みました。華やかな香りですが、トロピカルというよりは道端の白い花のイメージ。いきいきとした酸味、熟し切る手前の桃、セージのようなハーブ。うっすらと木の香り。

このワイン、新樽100%なのですが、いわゆる樽香ムンムンではありません。ローストをかなり軽くしているそうで、どちらかというと新しい家のようなすがすがしい木の香りに近い感じがします。また、マロラクティック発酵をしていないので酸もフレッシュな感じを保っています。ちなみに、このワインを最初に作るとき、マロラクティック発酵をするかどうかで夫婦げんかがあったそうです。ビビアナは「師匠の教え」通りにマロラクティック発酵をするつもりだったのですが、ジェフがしない方がいいといい、結局はなしにしました。今ではビビアナもしなくて良かったと言っています。

近年増えているソーヴィニヨン・ムスケを使った香りむんむんのソーヴィニヨン・ブランも好きですが、これはこれでとてもスタイルを持っていて好きなワインです。持って行ってよかったと自画自賛。


Date: 2022/0517 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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どうしてもピノ・ノワールが飲みたくなったのですが、手頃なワインが見当たらず、ちょっといいワインを開けてしまいました。

桃井隆弘さんが作るアーサー・セラーズのピノ・ノワール、2019年のKR Ranchです。KR Ranchは以前はKeefer Ranchと呼んでいましたが、コスタブラウンが畑を買って、その名前が付けられなくなったため変更したのでした。それだけの銘醸畑です。

味わいは赤系のベリーにかつお節系の旨味がたっぷり。酸も強すぎず、癒やし系のワインです。カリフォルニアワインというとガツンとした味わいのものばかりというイメージもありますが、こんな優しくて美味しいワインもあります。

2020年は火事の煙の影響でワイン作れず、今年のリリースはないそうですが、毎年楽しみなワインの一つです。



Date: 2022/0425 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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スペシャリスト
ちょっと傷を入れてしまいましたが、印象に残るラベルのワインです。インポーター情報によると、ワイナリー名の由来は以下の伝説で、ラベルはそれを描いたもののようです。
「スペシャリストの伝説を知っている?ロダイの伝説的な古木ジンファンデルに登り夜遅くまで月明かりに照らされながら、ブドウにセレナーデを聞かせる姿を畑で見たと何人かが証言している。彼は錬金術師だ。元素を超自然的なワインに変換させる事が出来る。
ブドウ畑とジンファンデルのブドウに献身的に尽くし、その深い知識が真にジンファンデルに特化したワイン造りを後押しする。」

ブラックベリーやアメリカンチェリーの風味。タンニンは少なめでスムーズな飲み心地。甘やかさはありますが、濃すぎず、美味しいジンファンデルです。実売2000円程度のワインとしてはかなり秀逸といっていいでしょう。

後から知ったのですが、実は2021年のサクラアワードで、ダイヤモンド・トロフィーと特別賞(コストパフォーマンス賞)を受賞しているのだそうです。

これからの季節は10℃くらいまで冷やして飲むのもお薦めです。酸やタンニンが強い赤ワインは冷やすと渋さや酸っぱさが引き立ってしまいますが、これはひやしても大丈夫。温度が上がっての変化も楽しめます。