たまには読んだ本の感想を。大した本は読んでいないし,特に新刊本はほとんど買わないので,古い本ばかりになると思いますが,思い出したときに書いていきたいと思います。

で,この本ですが,第二次世界大戦の後約5年間の沖縄を見事に描き出しています。主人公である「金城夏子」はウミンチュの町として知られる糸満の生まれ。フィリピンでの短い結婚生活(相手は与那国の男性で戦死)の後,戦後与那国・台湾・香港・沖縄本島・さらに近畿地方をまたにかけたた密貿易にその身を置きます。綿密な情報収集と先を読む力で多くの人に尊敬され,まさに「親分」的存在だったようです。

夏子さんは多くの人に勇気と力を与えましたが,三十台半ばで亡くなり,築いた会社も人に売られ,歴史の闇に埋もれるところでした。12年にもわたる聞き込みからここまで夏子さんの人生を再現した,作者は立派です。