先週「衝撃!Wine Advocateのニール・マーティンがVinousへ電撃移籍」というびっくりするようなニュースがありましたが、空席となったボルドーのレビューは編集長のリサ・ペロッティ・ブラウンが担当することになりました(Perrotti-Brown named Bordeaux reviewer at The Wine Advocate)。

リサはこのほかカリフォルニアのソノマとナパ(公式アナウンスはありませんが、最新号からパーカーに代わって担当しています)の担当があり、以前のロバート・パーカー並みのカバー範囲を受け持つことになります。

また、ブルゴーニュは英デカンター誌で編集をしていたウィリアム・ケリーがWine Advocateに移籍して担当することになります。ウィリアム・ケリーはカリフォルニアのセントラル・コーストも担当します。ウィリアム・ケリーはこれまでデカンターでカリフォルニアワインの記事を数多く書いており、かなり面白いものが多かったので今後も期待できそうです。

2017年6月にはWine Enthusiast誌からジョー・チェルウィスキーが移籍してきましたが、それに続く大手メディアからの移籍ということになります。

ワイン・メディアの戦国時代が始まり、という感もありますが、一方で専門家の権威が以前ほど絶対的でなくなってきているという感じも強く受けます。

例えば、今回のニール・マーティンの移籍でWine Advocate誌のフォーラムではさまざまな意見が出ていましたが、アントニオ・ガッローニのヴィナス(Vinous)を評価する声の中で意外と大きかったのが、「ヴィナスのサイトはセラー・トラッカーと連携していて便利」というものでした。

セラー・トラッカーはいわゆるCGM(Consumer Generated Media)で、一般のユーザーがワインの感想を書き合う形です。もちろん、個々のレビューの品質で言えば専門家にはかないませんし、好みの違いということもあります。ただ、複数のレビューを見ていると、なんとなく傾向だったり熟成の度合いだったりが見えてくるということもあります。日本で言えば食べログのレビューにも通じるところがありますが、評点そのものよりも書かれている内容には参考になる部分があります。

これがただちに評論家の権威失墜につながるとは思わないのですが、ワインのレビューにもいろいろな形があり、「パーカーポイント」だけではない、ということは重要な動きなのだと思います。この問題については、半年くらい前からずっと考えていて、実は書きかけの記事をずっと放ってあるのですが、まだ結論は出ていません。

ともかく、今回のニール・マーティンの移籍に伴うさまざまな動きは、ワイン・メディアの大きな地殻変動であり、それは評論家だけの問題ではないということは、ワイン・マニアとして心にとめておきたいことだと思います。