Old vine
先日、「Vineration」というサイトに物議を醸す記事が投稿されました。シルバー・オーク(Silver Oak)が元ソーサル(Sausal)のワイナリーと畑を買い取ってソノマの新しい醸造設備やテイスティングルームを作ったという話は先日「サスティナブルに生まれ変わったシルバー・オークのアレキサンダー・ヴァレー」で紹介しましたが、このときに1877年から続くソーサルの畑を引き抜いてしまった、というものでした(Preservation and Progress in California)。

これにシルバー・オークのデイビッド・ダンカン社長兼CEOが反論し、現在は記事の公開は差し止められています。

まず、事実としてソーサルの畑の木を引き抜いてしまったのは間違いではありません。ただ、それには理由がありました。

シルバー・オークはソーサルの畑購入直後からヒストリック・ヴィンヤード・ソサエティ(HVS)と協力して、畑の維持に努めようとしました。

しかし、実際には2エーカーのその畑に1877年からあるという古木の存在は認められませんでした。すべての木は接ぎ木で植えられていたとのことです。また、植え替えはまばらに何度も行われていたので、どの木が古く、どれがより古いのかといったことを判別するのは不可能でした。

さらに、そこの木はleaf roll virus, corky bark virus, red blotch virus, grapevine sanleaf virusといったさまざまな病気にかかっていることも判明しました。「mealie worms」も確認されました。この畑をそのままで置いておくと、近隣のブドウ畑にまで病気をうつすことになるため、放っておくことはできませんでした。

これらが、「古木の畑」であったはずのところを引き抜いた理由だとのことです。

この話が示唆するものはいろいろあると思います。

まず、元の畑はHVSで認定されていたものだったにもかかわらず、実際には認定通りの状況ではなかったこと。そもそも古木であることを証明するのは非常に難しく、品種でさえ分からないことも多いといいます。植えたときのドキュメントが残っていればいいですが、まずそういうことは期待できないでしょう。ある意味、「言い伝え」の部分も多分にあるのではないかという気がします。こういった部分をどうしていくのかは、HVSにとっても課題のような気がします。

また、年取った木はどうしても病気にやられやすくなります。その分管理には手間暇かかります。付ける実も少ないものです。それでも、ジンファンデル系のワインに付けられる値段はナパのカベルネと比べたら何分の1かです。経済的にはメリットの少ないものを続けていっている農家や、ワイナリーには最大限の賛辞を送りたいと思います。

病気にかかったら、周囲への迷惑を防ぐために抜かざるをえないという状況も増えるでしょう。周りから隔絶されたブドウ畑でないと維持は難しいかもしれません。

現在古木の畑と言われているものは大体が19世紀の半ばから後半に植えられたものです。この後20世紀に入ると禁酒法でワイン造りがほとんどストップした時期もあり、今後100年を超えるような古い畑、特にジンファンデル系のものが増えていくことはなかなかないのではないかという気がします。

カリフォルニアワインの貴重な文化、どう守っていくか、大きな問題だと思います。