カリフォルニアワインあとりえとワインライター/翻訳家の立花峰夫さんのコラボ第4弾でトレフェッセンのワインが紹介されていました。

立花峰夫さん紹介のワイン一覧

それに便乗して、一つエピソードを紹介します。

カリフォルニアワインがフランスワインを打ち負かした話というと1976年の「パリスの審判」が有名ですが、その3年後にも一つの事件がありました。フランスのレストラン批評で有名なゴ・エ・ミヨ誌が世界一のワインを決めようと「ワールド・ワイン・オリンピックス」というイベントを開いたのでした。もちろんフランスのワインが1位を取ることが期待されていたわけですが、33カ国のワインを集めた中でトレフェッセンのシャルドネ1976が1位を取ったのです。

ブルゴーニュの一流ワインも参加してのこのイベントでカリフォルニアワインが1位を取ったことはパリスの審判と同様、フランスにとっては大きなショックであり、納得できるものではありませんでした。そこで半年後にドルーアンが主催して、舞台をブルゴーニュに移して改めて対決が行われたところ、そこでもトレフェッセンが勝利。ロベール・ドルーアンもこの結果には納得するしかなく、トレフェッセンのシャルドネは「ほかのすべてのシャルドネを測る尺度になる」と褒め称えました。

実はトレフェッセンはこれらの結果が出るまで自社のワインがエントリーされていることすら知らされていませんでした。1位になったと聞いて最初は間違いか悪い冗談ではないかと思ったそうです。というのはゴ・エ・ミヨどころかフランスにワインを送ってもいかなったからです。世界一が間違いないとわかってから後も、どうしてトレフェッセンのワインがエントリーされたのかはミステリーのままでした。

この謎が解けたのはなんと40年近く経った2018年のことでした。トレフェッセンは創設50周年のイベントをロンドンで開き、そこでこの1976年のシャルドネも提供してこのエピソードを披露しました。そこでもエントリーの謎の話題が出たのですが、イベントに出席していたスティーブン・スパリア(パリスの審判の主催者です)が、実は自分がエントリーしたのだと明らかにしたのです。スティーブンはトレフェッセンの英国のインポーターで、1978年のワールド・ワイン・オリンピックスの審判の一人でもあったのですが、これまでエントリーについては一言も触れたことがなかったのでした。

今回のエピソードはこちらから。
World Wine Olympics

パリスの審判で1位になったシャトー・モンテリーナと比べるとトレフェッセンの世界一はあまり知られていないような気がしますが、フランスでフランスワインに勝ったという価値は同じくらいあります。さらに、トレフェッセンのワインはすべてナパの自社畑から作っており、栽培家としての栄誉もあります(モンテリーナのシャルドネはソノマのバチガルピなどからの買いブドウで作られていました)。

トレフェッセンのワインは決して派手ではないのですが、どれも実によくできています。安心して飲めるブランドと言っていいでしょう。個人的にはシャルドネ以外にカベルネ・フランもお薦めです(マルベック・ブレンドのドラゴンズ・トゥースがないのがちょっと残念)。