カリフォルニアのAVAでどこが好きか一つだけ挙げるとしたら、サンタ・クルーズ・マウンテンズ(Santa Cruz Mountains)かなあと思っています。オークヴィルとかソノマ・コーストとかロシアン・リバー・ヴァレーといったメジャーなところではないですが、非常に魅力的なワインが作られる産地です。
SCM
この地図で示したように、サンタ・クルーズ・マウンテンズはサンフランシスコの南方の半島を中心にしたAVAです。シリコンバレーと太平洋の間の山地になります。

歴史的に見ると、境界を標高で決めた初めてのAVAとして重要です。標高で霧の入り具合が決まるからです。

サンタ・クルーズ・マウンテンズで一番有名なワイナリーといえばリッジ(Ridge)です。2006年の「パリスの審判30年後」のブラインド・テイスティングで1位になったモンテベッロのカベルネ・ソーヴィニヨンがこの地域の畑です。というとカベルネ・ソーヴィニヨンが有名なようですが、実はカベルネ・ソーヴィニヨンはサンタ・クルーズ・マウンテンズの中では内陸よりの標高が高いところくらいしかなく、地域でメジャーな品種というわけではありません。太平洋に近いところは非常に冷涼で、酸のくっきりとしたピノ・ノワールやシャルドネが生まれます。個人的には特にこの地域のシャルドネは非常に好きです。リッジやマウント・エデンのシャルドネなど、凛とした味わいがあります。

一方、この地域の弱点はリッジを除くと小規模な生産者ばかりなこと。サンタ・クルーズ・マウンテンズのAVAの面積はナパの1.5倍もありますが、畑の面積は30分の1以下。1300エーカーしかなく、そのうち1割を超える140エーカーほどがリッジの畑です。文字通り山地が中心であり、畑を切り開くのはかなり大変です。特に近年は斜面の畑の開発には自然保護の面からなかなか許可が得られなくなっています。今後も大規模な生産者が登場する可能性は低いでしょう。

反面、小規模な生産者を探す楽しみはある産地だと思います。大量生産ができる地域ではないので、作られるワインはほぼ高級品といってもいいでしょう。アルノー・ロバーツやセリタスといった、注目されている生産者がこの地域のブドウを調達してワインを造っているのは決して偶然ではありません。