柳屋でハロウ・リッジのプティ・シラー2015が1000円台で出ています。

プティ・シラーは最近気になっている品種の一つ。カリフォルニア「固有」の品種というと、「ジンファンデル」と考えるのが一般的だと思いますし、実際「ヘリテージ・グレープ」といった言われ方もします。ただ、ジンファンデルはイタリアのプリミティーボと同一品種であることが分かっていますから、カリフォルニアでないと飲めない品種かというと、そんなことはないですよね。もちろん、カリフォルニアの古木のジンファンデルやフィールド・ブレンドのワインなどはイタリアのプリミティーボとだいぶ違うオリジナルのワインといっていいと思っていますが。

一方、プティ・シラーはシラーとプルールサンという品種のかけ合わせで、1880年代に南仏のデュリフ博士が作った品種であることが判明しています。品種の正式名はデュリフ(Durif)です。ちなみに米国でのつづりはPetite Sirahで、プティトゥ・シラーと発音しますが、日本ではプティ・シラーと書くことが多くなっています。Sirahの綴はSyrahともShirazとも違うのでややこしいですね。

さて、この品種が米国に渡ったのは1884年と開発されてすぐのことですが、本国のフランスではほとんど造られていない品種となっています。オーストラリアではそこそこの量が植えられているようですが、ジンファンデル以上に米国以外ではほとんど造られていない品種となっています。一方、知名度ということでは、ジンファンデルはカリフォルニアワインファンでなくても聞いたことはある人が多いと思いますが、プティ・シラーはほとんど知られていません。そういう意味ではもっと知られてほしいと思っています。

余談ですが、米国におけるプティ・シラーの普及団体は「PS I love you」という名前です。自分的には「PS I love you」といえばビートルズなのですが、宮本浩次さんなども同じタイトルの曲を出しているようですね。

前置きが長くなりました。このハロウ・リッジというワイナリーについては全然知らなかったのですが、Two Buck Chuckなどと同じブロンコ・ワインのグループが作っているワインです。コスパワインでは定評のあるグループです。日本だとカルディで売っている「レッドウッド」を作っているところというとわかりやすいでしょうか。

プティ・シラーはとても濃厚な味わいが特徴で、強固なタンニンを持っています。そのためジンファンデルなどに少量ブレンドする形で使われるのが主流です(ジンファンデルはそれ自体は色づきはあまりよくないので、プティ・シラーを入れることでワインの色を濃くする狙いがあります)。

というわけで米国でもメジャーとはいえない品種であり、プティ・シラー単体で飲みやすいワインというとなかなか見つからない、しかも若いヴィンテージ以外のプティ・シラーはそもそもほとんど見つからないというのが現状です。

そういう意味でもこのワイン、1000円台でちょっと熟成した2015年のワインというのはなかなか貴重な位置付けです。

柳屋のセールでは2022年の桜・アワードで「ダイヤモンド・トロフィ」を受賞したスミス・アンド・フックの「プロプライエタリー・レッド」(プティ・シラーが37%で一番多い)もあるので、飲み比べてみるのもいいでしょう。

あるいはオッドロット(モントレーのコスパ王シャイドのブランドの一つです)のレッド・ブレンドもプティ・シラーを使って、実においしく、コスパも高く作っているので、そちらとの比較もいいと思います。