ナパツアー二日目、といっても初日はナパには行っていないので実質初日です。まずはゴールデンゲートブリッジを通って、カーネロスのトルシャードに向かいます。

トルシャードはカーネロスに260エーカーの畑を持つワイナリー。創設者のトニーとジョアンのトルシャード夫妻はテキサスの出身。トニーは陸軍の軍医でいろいろなところに行っていましたがカリフォルニアでの任務をきっかけにブドウ畑を始めることを考えました。テキサスと比べると土地が高く、比較的安価だったカーネロスは、専門家に意見を求めたところ「ブドウを育てるには涼しすぎる」と否定されました。それでも、カーネロス初期のワイナリーであったカーネロス・クリークから「シャルドネとピノ・ノワールを買い取る」とか「畑作業の人を出す」などの好条件をもらってブドウ畑を始めました。今から50年前の話です。

写真はジョアン。現在は息子のアンソニーが引き継いでいます。

当初は週末だけナパに来るような生活でしたが1989年に完全移住し、ワイナリーも始めました。
栽培はシャルドネとピノ・ノワールとカベルネ・ソーヴィニヨンが中心。ルーサンヌやテンプラニーリョ、プティ・ヴェルド、ジンファンデルといったブドウも作っています。最初にルーサンヌをいただきましたが、イキイキとした酸とやわらかな果実味があってとても美味しかったです。ちなみにルーサンヌはかなり小さな畑だそうですが、成熟が不均一なので収穫は3、4回に分けないといけないそうです。数の多いシャルドネよりもその点では手間がかかります。

ちなみに、カベルネ・ソーヴィニヨンやジンファンデルといった温かいところに向くブドウをカーネロスで育てるのは難しくないか聞いたところ、ジンファンデルの畑などは標高400フィートの小高いところにあって、ほかよりも温かいのだそうです。

このほか貯水池が7つあって、灌漑に使っているとか、1973年の最初のときからドリップイリゲーション(点滴灌漑)のシステムを入れていたといった話を伺いました。

シャルドネの畑は既に芽吹いていますが、向かいにあるカベルネ・ソーヴィニヨンはまだ芽吹いていません。3週間くらい違いがあるそうです。
若い枝(ケイン)を伸ばす、いわゆる長梢剪定(ギヨ)の方式を使っています。樹齢などによって一つの木から2~4本伸ばすとのこと。この剪定はこのように木によって伸ばす本数を変えられるのがメリットと行っていました。

畑を見た後はランチです。この日は、ナパの様々なワイナリーのシャルドネを飲み比べるという形でした。

まずはトルシャードのシャルドネの話から。ここは濃厚になりすぎない、食事に合うようなワインを作ることをモットーにしています。シャルドネでは樽発酵樽熟成を使っていますが、新樽は30%と控えめ。マロラクティック発酵も25%に抑えています。なお、ステンレスタンクの発酵よりも樽発酵・樽熟成の方が樽香の付き方が柔らかくなります。発酵の温度を12、13℃程度と低めに保って過度の抽出を防いでいます。

左から3番めがトルシャード。果実味がきれいで優しい味わい。ほっとするワインです。このシャルドネ、H・W・ブッシュ元大統領の奥さんだったバーバラ・ブッシュさんのお気に入りだったとか。

一番左はアミーチ・セラーズ(Amici Cellars)。ベクストファー・ト・カロンなどナパの銘醸畑のブドウを使って近年注目されつつあるワイナリーです。このシャルドネもナパのハイド・ヴィンヤードのもの。濃厚ですがやりすぎず、うまみを感じる作り。「コシュデリよりうまい」という感想もきかれました。

2番めはガーギッチ・ヒルズ(Grgich Hills)。この4月1日にマイク・ガーギッチが100歳になったのを祝って、スペシャルラベルになっています。

かなり濃くパワフルな作り。樽香も比較的出ています。ミネラル感もあり多くの人に好まれそうな味わい。

4番目のカンパイ・ワインズ(Kanpai Wines)はスティーブ・マサイアソンがワインメーカーを務めるワイナリー。最初はロゼだけを作っていましたが、ラインアップを拡大しているようです。なお、以前は日本への輸入がありましたが、今はありません。
参考:トレンドマイクロの危機対策? 火災の副産物で生まれたロゼ
これもオークノールの自社畑のブドウによるもの。かなりリーンな作り。スティーブ・マサイアソンらしいワインではありますが、個人的にはあまり響きませんでした。

5番目のトロワ・ノワ(Troix Noix)は、かつてアラウホ(Araujo、現アイズリー・ヴィンヤード)を持っていたアラウホ夫妻の娘であるジェイミー・アラウホのワイナリー。シャルドネはMuir Hannaという畑ですが情報がほとんどありません。John Muirというナチュラリストの植物学者の娘がやっているようです。以前はワインも作っていたようですが、現在は畑だけと思われます。ナパ市なのでサブAVAには属していないかもしれません。
ところがこのワイン、個人的にはこの日のトップでした。酸がしっかりしており旨味もあります。バランスよくとても美味しい。

最後はMonne Tsaiというワイナリーのシャルドネ。美味しかったですが、実は畑がソノマだったので略します。

このほかトルシャードのピノ・ノワールもいただきました。赤果実がチャーミングでこれも良かったです。