トランプの関税問題はカリフォルニアワインにどう影響するか

トランプ米大統領が「解放の日」で関税政策を公表してから1週間経ちました。3月にはEUからのアルコールに対して200%の関税をかけるという脅しとともに「これは米国のワインとシャンパンのビジネスにとって素晴らしいことだ」とSNSに投稿しましたが、現状はアルコールを直接ターゲットにした関税ではなく、EUに一律20%の関税をかけるなどになっています。また、カナダでは、すでに報復として米国のアルコール飲料を店頭からはずしており、実質的にカナダ市場は閉じた形になっています。
これらを受けて、カリフォルニアワイン協会のロバート・コッホCEOは4月2日に次のように表明しています。
ワイン産業は人々を結びつけ、経済的価値を高め、全国の家族や農家の勤勉さと伝統を反映しています。
本日の新たな関税の発表は、米国のワイナリーがカナダへの再進出を困難にするだけです。カナダはこれまで最も重要な輸出市場でした。3月初旬、カナダは米国産ワインを全て棚から撤去し、販売を阻止し続けています。この紛争が長引くにつれ、業界がすでに大きな圧力にさらされている時期に経済不安が生じています。
これは単なる貿易の問題ではありません。人々、生活、そして何世代にもわたって築き上げられた農業の成功物語の問題です。私たちの産業が混乱すると、その影響はワイナリーをはるかに超えて、農場労働者、流通業者、中小企業、レストラン、そして全国のコミュニティ全体に及ぶのです。
ナパヴァレー・ヴィントナーズの顧問弁護士兼業界関係担当シニアディレクターのミシェル・ノビ氏は、ワインを貿易紛争に利用すべきではないと語り、カリフォルニアワイン協会の表明にも賛同の意を表しています。
実際、カナダは米国産ワインの輸出先の35%を占めていて、ここが閉ざされたことは大きなデメリットになっています。
特にカナダへの輸出が多いワシントン州はかなり危機的な状況に陥っている可能性があります。そうでなくても、ここ数年余剰ワインの問題に苦しんでおり、それに追い打ちをかけることになっています。
今回の関税は米国が輸入品にかけるものなので、日本などへの輸出品の価格にいますぐ影響することはありませんが、米国においてボトルや樽など、資材の多くが値上がりするのは確実であり、ワイン価格に転嫁されていくでしょう。
また、米国内では輸入品のアルコール類がすべて値上がりすることになります。米国製品のシェアが高い西海岸ではそれほど大きな影響はないかもしれませんが、欧州産のワインが多いニューヨークなど東海岸では値上がりの影響は大きいでしょう。それによって、カリフォルニアなどのワインの販売が伸びるかと言えば、そうではないと思います。今回の問題がなくても、近年はアルコール離れが進んでおり、特にZ世代では全く飲まない人や、グラス1杯だけなど、制限を付けて飲む人が増えています。アルコールの値段が上がることによって、ノンアルコール飲料へのシフトがさらに進んでいくでしょう。それはワイン業界全体にとって、後戻りできないほどの大きなダメージになってくると思います。