すでにいろいろなところで記事になっていますが、私もちょっとだけ関係している話なので改めて書いておきます。

UCデーヴィスの研究で、赤ワインがなぜ頭痛を引き起こしやすいのか、その原因物質の可能性が高いものが判明しました。

この研究については2022年2月に記事を書いております(赤ワインが頭痛を引き起こす真の原因は何か? UCデーヴィスがクラウドファンディングを開始)。
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研究費の調達が大変とのことで、クラウドファンディングをしていたのですが、結局約4000ドルと目標の6分の1程度しか集まらなかったようです。その中で、私はささやかな額ではありますが寄付をしており、今回の研究成果についてもDavisからメールでお知らせをもらっています。これだけ話題にする人が多いのなら、もうちょっと寄付する人も多くてもいいのでは、とは思うのですが…。なお、今回の研究発表のプレスリリースの最後には「この初期調査の資金は、2022クラウドファンディングUCデイヴィスを通じてプロジェクトを支援した人々から寄せられた」と記されております。

それはさておき、今回の研究成果を簡単に説明します。

まず、アルコールを摂取すると頭痛を起こしやすいことは知られていますが、大きく関係しているのがアセトアルデヒドです。体内に入ったアルコールは2段階のプロセスで分解されます。まず、アルコール脱水素酵素(ADH)によってアセトアルデヒドに変換されます。次に生成したアセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によってアセテートに変換されます。この中間生成物であるアセトアルデヒドが頭痛などの副作用を引き起こします。

様々なアルコール飲料の中でも赤ワインは頭痛を引き起こしやすいことが分かっています。赤ワイン頭痛(RWH)は、ワインを1~2杯飲んだだけでも、30分~3時間後に誘発されます。その主な誘因として明確に関与している化学成分はなく、頭痛を誘発するメカニズムも分かっていない。それが今回の研究で明らかにしたかったところです。

赤ワインにはフェノール類が多く含まれ、特にフラボノイドと呼ばれるポリフェノールが多く含まれます。さまざまなポリフェノールの中で、アセトアルデヒドを分解するためのアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)を生成しにくくするものがあるのではないかと考え、それを実験で調べた結果が次の表です。
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この結果からケルセチン-グルクロニドという物質が、アセトアルデヒドを分解するための酵素の生成を他のフラボノイドよりもかなり大きく阻害しているということがわかりました。ケルセチン-グルクロニドはケルセチンをアルコールと一緒に摂取したときにできる物質です。赤ワインを飲むとその中のケルセチンのせいでアセトアルデヒドが分解されにくくなって、その結果頭痛を起こしているという仮説が有力となりました。

今回は、試験管内の実験ですが、今後は人間の被験者を使ってケルセチンの含有量が違うワインで臨床試験を行っていくとのことです。

ちなみに、ワインに含まれるケルセチンの量は、太陽の光をよく浴びたブドウで多くなることが判明しています。ある研究では大量生産のカベルネ・ソーヴィニヨンと比べてウルトラプレミアムなカベルネ・ソーヴィニヨンは4倍ものフラボノイドを含んでいるそうです。ということは安ワインを飲む方が頭痛を起こしにくいのかもしれません。

クラウドファンディングは終了していますが、今後も寄付は受け付けるとのことですので、ご興味ある方はぜひ。