ナパの秘境、チャイルズ・ヴァレーを学ぶ

By Unknown author - TTB.gov, Public Domain, Link
ナパのチャイルズ・ヴァレー(上のマップで右上ピンクのAVAです)をご存じでしょうか。ナパにある程度詳しくても、チャイルズ・ヴァレーのワインを飲んだことがある人は少なさそうです。今回はチャイルズ・ヴァレーのマックスヴィル(Maxville)ワイナリーのCEOであるスコットさんが来日して、初代ナパヴァレー・ベスト・ソムリエ・アンバサダーの富満さんとセミナーと開いたセミナーに参加してきました。ちなみにスコットさんは前Silenusのジェネラルマネージャーで、日本語はペラペラです。

富満さんも、今年初めてチャイルズ・ヴァレーに行ったとのことですが、ナパヴァレーの中心部から車で30分くらいかかるそうです。途中で不安になるほどの田舎で、携帯電話の電波も通じません。
ヴァレーと名前が付いているように、ヴァカ山脈を越えた先の谷になります。標高はナパヴァレーのヴァレーフロアと比べれば高いですが、ハウエル・マウンテンなどの山のAVAと比べれば低いです。土壌も火山性の岩もありますが、シルトローム層など沖積世の土壌もあり、場所によって様々です。
AVAが策定されたのは1999年で、ナパの中では11番目と比較的遅くなっています。歴史を紐解くと1841年にジョセフ・バリンジャー・チャイルズという人がメキシコ総督から土地を譲り受けて入植し、製粉所を造ったというのが、この地に人が入っていった最初のようです。このあと、フランシス・シーバスという人に土地を一部売却し、その人がワイナリーを設立しました。人里離れたところでフィロキセラの被害もあまりありませんでしたが、禁酒法でブドウ栽培は中断し、1970年代にVolker Eisele(フォルカー・アイズリー)が設立されて、ようやく本格的なワイン造りが始まりました。AVAの申請もVolker Eiseleが中心になって行いました。現在でもワイナリーは5つくらいしかない知られざるAVAです。
気候的には、海から遠く暖かいのかと思っていましたが、夏でも夜には気温が10℃を下回るという意外なほどの涼しさです。霧も入ってくるのだそうです。また、風が強いのも特徴です。
Maxvilleはここで1025エーカーという広大な土地を所有しています。その中の625エーカーは「Napa Valley Land Trust」に登録してあり、その土地は永久に開発の対象外となっています。ワイナリーの設立は1974年で、近くを流れるMaxwell Creekという川と「ville」を組み合わせたそうです。ワイナリーは太陽光発電などを採用して自然と調和して作っていくことを狙っています。
4種類のワインを試飲しました。
2021 Malbec
黒っぽい果実味に土や埃のようなテクスチャー。酸高く、渋みもしっかりあります。オレンジピールのような風味も。洗練されたというよりもどっしりとした力強さを感じるワイン
2021 Merlot
ブルーベリーとレッド・チェリーの風味、酸もタンニンも高い。マルベックと比べると少しトーンが明るいが、力強さを感じるのは共通。酸の高さも共通する要素です。
2021 Cabernet Sauvignon
カシスに黒鉛、しなやかなタンニン。酸はマルベックやメルローと比べると柔らかでまろやか、全体になめらかなテクスチャーが印象的で素晴らしいカベルネ・ソーヴィニョン。
2022 High Valley Cabernet Sauvignon
やや廉価版のワイン。カシスにブラックベリー、酸豊かで芳醇。バランスよくできている
トミーはスモーキーなニュアンスがあると言っていました。
四つのワインに共通するのは、酸が味わいの中心にあること。夜間には10℃以下に下がるという冷涼さがもたらすものでしょう。Chiles Valleyのワインは非常にサンプルが少なく、ジンファンデル系が中心のため、ボルドー系品種はほぼ今回が初めての試飲となりました。とても興味深い産地です。
スコットさんに、今後力を入れたい品種を聞いてみたところカベルネ・フランとのこと。この冷涼感はカベルネ・フランにも非常に合うだろうと思います。
なお、Maxvilleは現在インポーター募集中です。