オレゴン・ワインのパイオニア、デイビッド・アデルスハイム来日セミナー
オレゴンのチュハレム・マウンテンズ(Chehalem Mountains)AVAにあるアデルスハイム(Adelsheim)から創設者のデイビッド・アデルスハイムさんが来日し、セミナーを開催しました。アデルスハイムは国内輸入が途絶えていて、オルカ・インターナショナルが輸入を開始したタイミングでの来日です。
オレゴンのワイン造りの歴史は意外と短く、現在の主要産地であるウィラメット・ヴァレーでピノ・ノワールの栽培が始まったのは1965年と60年前になります。アデルスハイムは1971年に土地を購入、72年から植樹をして78年が商用ワイナリーとして最初のヴィンテージとなりました。オレゴンでは初期からのワイナリーの一つであり、後述するように特にシャルドネ栽培では歴史的な功績があります。ウィラメット・ヴァレーAVAの設立にも大きく貢献しており、まさにオレゴンワイン業界の重鎮です。
と、すごい方なのですが、ご本人はいたって控えめで自分の功績についても、ひけらかすようなところは1ミリもなく。私からしたら、もっとアピールしたらいいのにと思ってしまうほどなのですが、そのあたりも含めてオレゴンらしいなと感じました。
設立後、夫妻でワイナリーを所有していましたが、1994年にジャックとリンのロアッカー夫妻との共同所有になり、2017年にロアッカー夫妻の単独所有、そして夫の死によって現在はリン・ロアッカーさんがオーナーとなっています。デイビッド・アデルスハイムさんは創設者という位置付けでワイナリーに残っています。
アデルスハイムの生産量は3万5000ケース。およそ4分の3はピノ・ノワールで、シャルドネが2割弱。残りはロゼやスパークリング、わずかにシラーやピノ・ブランも作っています。

アデルスハイムはウィラメット・ヴァレーの中のシュヘイラム・マウンテンズAVAに8つほどの畑を持っています。
シュヘイラム・マウンテンズはその名の通り北西方向から南東方向に山脈になっています。AVAの中にはさらに2つのAVAがあります。北側の上の地図で黄緑色のところはローレルウッド・ディストリクトで、ここは玄武岩の上に、コロンビア・ヴァレーの方から砂や粘土やシルトが風で運ばれてきた「ラス土壌」と呼ばれる土壌がかぶさっています。比較的保水力のある土壌です。もう一つ南西のコーナーにあるのがリボン・リッジAVAでここはほぼ海洋性の堆積性土壌。丘の中腹で安定した気温が特徴です。
シュヘイラム・マウンテンズのこれら二つのAVAに属さないところは火山性の玄武岩土壌が多くなっています。アデルスハイムは両サブAVAおよび玄武岩土壌のところにも畑を持っています。
アデルスハイムの畑はLIVEというオレゴンのサスティナブル認証およびサーモン・セーフという認証を取っています。2017年からは除草剤不使用です。
前述のようにアデルスハイムはピノ・ノワールとシャルドネを育てています。
ピノ・ノワールはオレゴンの生産量の約3分の2を占めており、オレゴン全体の最重要品種です。一方、白ワインでは現在ピノ・グリが13%でシャルドネが7%とピノ・グリが少しリードしています。一般的にはピノ・ノワールと組み合わせるといったらシャルドネをまずイメージする人が多いでしょうから、少し意外に思われる方もいると思います。実は、これでもシャルドネはだいぶ増えてきており、以前はもっとピノ・グリの方が多かったのです。
オレゴンにおけるワイン産業が発展し始めた1960年代から70年代、オレゴンではあまりいいシャルドネができませんでした。それがピノ・グリの後塵を拝した理由なのですが、なぜオレゴンでいいシャルドネができなかったかというと、当時植えられていたシャルドネはカリフォルニアから来たクローンで、それがオレゴンの気候にあまり合っていなかったのでした。そこでもっと品質のいいクローンをブルゴーニュから取り寄せようと骨を折ったのがデイビッド・アデルスハイムさんなのです。その甲斐あって、シャルドネの生産は徐々に増えただけでなく品質も上がっています。今年はオレゴンのシャルドネにDecanter誌が初めて100点を付けたことでも話題になりました。
デイビッドさんに、クローンの件について質問したところ、上記のような説明をいただいた後「重要な一歩だったけどゴールではない。あるひとつのクローンが最適ということではない」と、これまた謙虚な答えをいただきました。
さて、試飲に移ります。現在輸入されているのはシャルドネとピノ・ノワール。それぞれ広域AVA(ウィラメット・ヴァレー)、シュヘイラム・マウンテンズAVAの「ブレイキング・グラウンド」、単一畑と3レベルになっています。
Willamette Valley Chardonnay 2022(6160円、税込み希望小売価格、以下同)
フレッシュで酸の高さが印象的ですが、柑橘に白桃のようなまったりした感じもあり、バランスよく仕上がっています。
Chahalem Mountains Breaking Ground Chardonnay 2021(9350円)
55%玄武岩、28%堆積土壌、17%レス土壌の畑から作ったシュヘイラム・マウンテンズAVAらしさを表したシャルドネです。
酸は高いですが、フレッシュで鋭い酸というよりも丸みのあるテクスチャーを感じます。かんきつに白桃、麦わらやぬれた石のニュアンス。ウィラメット・ヴァレーと比べると複雑さが格段に増しています。
Ribbon Springs Vineyard Chardonnay 2021(11880円)
堆積性土壌のリボン・リッジの畑です。ピノ・グリからシャルドネに接ぎ木で替えてみたところ非常にいいブドウができたとのこと。
緊張感ある味わい。シュヘイラム・マウンテンズよりもテクスチャーの滑らかさをより感じます。青リンゴやレモン、ミネラル感ある味わい。今飲むより、数年熟成した方が良くなりそうです。
ピノ・ノワールに移ります。
Willamette Valley Pinot Noir 2022(8800円)
アデルスハイムの生産量の半数を占める主要ワインです。
フレッシュでジューシー。なめらかなテクスチャーにレッド・チェリーやフランボワーズの赤果実ときれいな酸。バランスよく美味しい。
Chahalem Mountains Breaking Ground Pinot Noir 2021(11880円)
47%玄武岩、26%海洋性堆積土壌、27%レス土壌という比率です。
ウィラメット・ヴァレーより滑らかなテクスチャー、酸高く引き締まった味わい。赤果実に加えて少し黒果実の味わいが入りボディに厚みがあります。
単一畑は2種。
Ribbon Springs Vineyard Pinot Noir 2021(18260円)
華やかで酸豊か、柔らかく優しい味わい。
Quarter Mile Lane Vineyard Pinot Noir 2022(25300円)
1972年に植樹された一番古い畑。火山性土壌。
リボン・スプリングスよりもパワフルで緊張感ある味わい。複雑で上品。素晴らしい
オレゴンのワイン造りの歴史は意外と短く、現在の主要産地であるウィラメット・ヴァレーでピノ・ノワールの栽培が始まったのは1965年と60年前になります。アデルスハイムは1971年に土地を購入、72年から植樹をして78年が商用ワイナリーとして最初のヴィンテージとなりました。オレゴンでは初期からのワイナリーの一つであり、後述するように特にシャルドネ栽培では歴史的な功績があります。ウィラメット・ヴァレーAVAの設立にも大きく貢献しており、まさにオレゴンワイン業界の重鎮です。
と、すごい方なのですが、ご本人はいたって控えめで自分の功績についても、ひけらかすようなところは1ミリもなく。私からしたら、もっとアピールしたらいいのにと思ってしまうほどなのですが、そのあたりも含めてオレゴンらしいなと感じました。
設立後、夫妻でワイナリーを所有していましたが、1994年にジャックとリンのロアッカー夫妻との共同所有になり、2017年にロアッカー夫妻の単独所有、そして夫の死によって現在はリン・ロアッカーさんがオーナーとなっています。デイビッド・アデルスハイムさんは創設者という位置付けでワイナリーに残っています。
アデルスハイムの生産量は3万5000ケース。およそ4分の3はピノ・ノワールで、シャルドネが2割弱。残りはロゼやスパークリング、わずかにシラーやピノ・ブランも作っています。

アデルスハイムはウィラメット・ヴァレーの中のシュヘイラム・マウンテンズAVAに8つほどの畑を持っています。
シュヘイラム・マウンテンズはその名の通り北西方向から南東方向に山脈になっています。AVAの中にはさらに2つのAVAがあります。北側の上の地図で黄緑色のところはローレルウッド・ディストリクトで、ここは玄武岩の上に、コロンビア・ヴァレーの方から砂や粘土やシルトが風で運ばれてきた「ラス土壌」と呼ばれる土壌がかぶさっています。比較的保水力のある土壌です。もう一つ南西のコーナーにあるのがリボン・リッジAVAでここはほぼ海洋性の堆積性土壌。丘の中腹で安定した気温が特徴です。
シュヘイラム・マウンテンズのこれら二つのAVAに属さないところは火山性の玄武岩土壌が多くなっています。アデルスハイムは両サブAVAおよび玄武岩土壌のところにも畑を持っています。
アデルスハイムの畑はLIVEというオレゴンのサスティナブル認証およびサーモン・セーフという認証を取っています。2017年からは除草剤不使用です。
前述のようにアデルスハイムはピノ・ノワールとシャルドネを育てています。
ピノ・ノワールはオレゴンの生産量の約3分の2を占めており、オレゴン全体の最重要品種です。一方、白ワインでは現在ピノ・グリが13%でシャルドネが7%とピノ・グリが少しリードしています。一般的にはピノ・ノワールと組み合わせるといったらシャルドネをまずイメージする人が多いでしょうから、少し意外に思われる方もいると思います。実は、これでもシャルドネはだいぶ増えてきており、以前はもっとピノ・グリの方が多かったのです。
オレゴンにおけるワイン産業が発展し始めた1960年代から70年代、オレゴンではあまりいいシャルドネができませんでした。それがピノ・グリの後塵を拝した理由なのですが、なぜオレゴンでいいシャルドネができなかったかというと、当時植えられていたシャルドネはカリフォルニアから来たクローンで、それがオレゴンの気候にあまり合っていなかったのでした。そこでもっと品質のいいクローンをブルゴーニュから取り寄せようと骨を折ったのがデイビッド・アデルスハイムさんなのです。その甲斐あって、シャルドネの生産は徐々に増えただけでなく品質も上がっています。今年はオレゴンのシャルドネにDecanter誌が初めて100点を付けたことでも話題になりました。
デイビッドさんに、クローンの件について質問したところ、上記のような説明をいただいた後「重要な一歩だったけどゴールではない。あるひとつのクローンが最適ということではない」と、これまた謙虚な答えをいただきました。
さて、試飲に移ります。現在輸入されているのはシャルドネとピノ・ノワール。それぞれ広域AVA(ウィラメット・ヴァレー)、シュヘイラム・マウンテンズAVAの「ブレイキング・グラウンド」、単一畑と3レベルになっています。
Willamette Valley Chardonnay 2022(6160円、税込み希望小売価格、以下同)
フレッシュで酸の高さが印象的ですが、柑橘に白桃のようなまったりした感じもあり、バランスよく仕上がっています。
Chahalem Mountains Breaking Ground Chardonnay 2021(9350円)
55%玄武岩、28%堆積土壌、17%レス土壌の畑から作ったシュヘイラム・マウンテンズAVAらしさを表したシャルドネです。
酸は高いですが、フレッシュで鋭い酸というよりも丸みのあるテクスチャーを感じます。かんきつに白桃、麦わらやぬれた石のニュアンス。ウィラメット・ヴァレーと比べると複雑さが格段に増しています。
Ribbon Springs Vineyard Chardonnay 2021(11880円)
堆積性土壌のリボン・リッジの畑です。ピノ・グリからシャルドネに接ぎ木で替えてみたところ非常にいいブドウができたとのこと。
緊張感ある味わい。シュヘイラム・マウンテンズよりもテクスチャーの滑らかさをより感じます。青リンゴやレモン、ミネラル感ある味わい。今飲むより、数年熟成した方が良くなりそうです。
ピノ・ノワールに移ります。
Willamette Valley Pinot Noir 2022(8800円)
アデルスハイムの生産量の半数を占める主要ワインです。
フレッシュでジューシー。なめらかなテクスチャーにレッド・チェリーやフランボワーズの赤果実ときれいな酸。バランスよく美味しい。
Chahalem Mountains Breaking Ground Pinot Noir 2021(11880円)
47%玄武岩、26%海洋性堆積土壌、27%レス土壌という比率です。
ウィラメット・ヴァレーより滑らかなテクスチャー、酸高く引き締まった味わい。赤果実に加えて少し黒果実の味わいが入りボディに厚みがあります。
単一畑は2種。
Ribbon Springs Vineyard Pinot Noir 2021(18260円)
華やかで酸豊か、柔らかく優しい味わい。
Quarter Mile Lane Vineyard Pinot Noir 2022(25300円)
1972年に植樹された一番古い畑。火山性土壌。
リボン・スプリングスよりもパワフルで緊張感ある味わい。複雑で上品。素晴らしい