日本ワインブドウ栽培協会(JVA)が輸入した苗木からのワインを試飲するセミナーに参加してきました。

代表理事の鹿取みゆきさんとは、私の従兄が鹿取さんと大学の同級生だったという縁もあり、ずいぶん前からSNSでは交流がありましたが、実際にお会いするのはこれが初めてでした。というか、こそっと参加していようと思ったら簡単に見つけられてしまいました。


この協会は日本ワインの未来のために、世界基準のワインの苗木の原木園を作ろうとしており、クラウドファンディングには私もわずかながら支援させていただきました。

日本ワインについては、ワイナリー数が増え、品質が向上し、ファンも年々増えている様相です。余市のドメーヌ・タカヒコを筆頭に、入手困難銘柄もどんどん出てきています。その中で、協会の問題意識は以下のようなところにあります。


ウイルス感染比率が半分近いというのはさすがに驚きました。ウイルスに感染すると、収量が3割から5割ほども低下し、着色不良や糖度が十分に上がらないなどの問題が起こります。ちなみに、ブドウの葉は紅葉しないので、秋に畑に行って紅葉していたら、それはウイルスに感染している樹です。また、感染した樹からウイルスを取り除くことはできないので、ウイルスがない苗木に植え替えることしかありません。

ただ、現状ではウイルスがない苗木を調達するのも難しいのです。畑から取ってきた枝で接ぎ木をするのでは、ウイルスがないと保証はできません。そのためにもウイルスがない苗木を作る原木園が必要なのです。

使える品種の少なさも、米国の8分の1ほどとかなり深刻です。これでは適切な品種やクローンを選ぶのはかなり難しいと言わざるを得ないでしょう。

ということで、JVAでは米国などから苗木を輸入して増やすことをしています。


既に27の品種と12種の台木を輸入しており、今回はその中から6品種について試飲をしていきます。栽培や醸造は大分県の安心院葡萄酒工房で行っています。



ワイナリーとしては、病気への強さや生産性なども品種選びの重要な要素になると思いますが、純粋にできたワインの品質だけで見ると、今回はアルヴァリーニョが素晴らしかったです。今回の苗木はポルトガル由来のクローンだそうです。酸の豊かさと厚みのある果実の味わいが魅力的で、これはまた飲みたいと思いました。安心院にはこのアルヴァリーニョ以外にもいくつかのアルヴァリーニョの畑があり、それぞれ全く違う味わいになるということで、そのあたりも興味深いです。温暖な環境でも酸が落ちにくい特徴を持つアルヴァリーニョは、カリフォルニアでも注目の品種の一つですが、日本ではさらに可能性があるような気がしました。

赤は白に比べるとちょっと難しいところがありました。安心院のワインメーカーの古屋浩二さんによると、カベルネ系の品種は安心院では色づきが悪いということで、カベルネ・ソーヴィニヨンは抜いてしまったそうです。今回はカベルネ・フランがありましたが、これも色づきは十分ではなかったようでした。

色づきが悪いのは気温のためだそうで、お話を伺ってみると、昼間の気温はカリフォルニアの温暖産地であるパソ・ロブレスあたりとそれほど変わらないようでしたが、夜の気温も高いのが難点だそうです。九州ではカベルネ系は難しいということでしたが、プティ・ヴェルドは割といいものができるそうで、品種の違いはいろいろと大事だと思いました。

赤の中では、タナは凝縮感あり、いい出来でした。品種特性的に非常にタンニンが強いため、万人受けするワインとはいいがたいかもしれませんが、ブレンドなどでも可能性はあるように思いました。ただ、個性としてはプティ・ヴェルドと被る部分もあるので、どういうワインに仕上げるのがいいのかは悩ましいかもしれません。

気候変動で、今年のような夏の暑さが平常になることを想定すると、これまで以上に品種選びやクローン選びは重要になってきそうです。JVAの果たす役割も大きくなるだろうと思いました。