米国では,州間のワインの送付がかなり不自由であるというのは,多くの人がご存知かと思います。禁酒法の流れで,州内における酒類の流通を,特定の業者に限定している州が多いからです。そういった州では他州の業者が郵便や宅配便でワインを送ることが「若年層の酒類購入につながる」などの理由を付けて禁止されています。数年前に裁判所で特定業者への制限が憲法違反だという判断が下されましたが,その後も状況は大きく進展していません。ただ,実際には「サンプル」などの名目や,「アルコール飲料」といった表示を“付け忘れ”たりすることで,アンダーグラウンドの流通があったのも事実です。

オンライン・ワイン販売の大手Wine.comがこの状況に噛み付きました。Wine.comはワシントン州で実際に州外のある業者からワインを購入し,それを違法な販売が行われている証拠としてワシントン州に提出。違法な業者を取り締まってほしいと強く訴えました。

Wine & Spirits Wholesalers Americaがこれに賛同する一方でワインブログとして著名なVinographyが,Wine.comのこの行動に強く反発。同ブログのコメント欄でもさまざまな意見が交わされる状況になっています。

Wine.comが取った行動は大人気ないと思いますが,法律を遵守して事業を進める中で,法律を守らない事業者が横行するのがいらいらする事態であったことは想像できます。一番いいのは州間移送の制限自体がなくなることですが。