ちょっとややこしいタイトルになってしまいましたが,Wine Spectator(WS)誌のRestaurant AwardsでAward of Excellenceに選ばれたミラノのレストランが実は架空だった,という問題に,WS誌Executive EditorのThomas Matthews氏が反論と弁解をしたわけですが,この反論に対して,架空のレストランを実際にしかけた張本人であるRobin Goldstein氏が再度反論しています。

WSの弁解では,そのレストランに何度も電話したが留守番電話のメッセージが出ただけであったということを実在確認できなかった理由として挙げていますが,Goldstein氏はまじめにコンタクトしようと思ったのならなぜメッセージを残したりメールを送ったりしてこなかったのか,と疑問を呈しています。氏によると,受賞が決まった後,広告担当の部署からは,賞が発表される号に広告を出さないかという連絡を留守電メッセージおよびメールで受けており,同誌が一生懸命コンタクトしようとしたのは,広告によるものだけだと切って捨てます。

また,WSの弁解ではリストに載った256のワインのうち80点未満のワインは15本だけであり,102本は80点以上だった。だからAward of Excellenceに値すると判断した,としていますが,Goldstein氏はWSのデータベースに登録されたもので80点以上のワインは88%に上る。117本中102本というのは87%でWSのデータベースの平均以下であり,それをExcellenceと言っていいものか,と問うています。

最後に,WSは詐欺に引っかかったのであり,だれでも詐欺から完全に逃れることはできないと述べているのに対しては「確かに,これはだまそうとしたものである。ただ,それは読者や一般大衆に正しくない情報を与えているのではないかということを明かすのに必要だった。それに,そのだましはさほど努力が要るものではなかった。どれも数時間もあればできることだった」と反論しています。

前回も書きましたが,私はWSのやっていることは十分ではないと思っています。今回は架空のレストランであり,仕掛けた本人がそれを明らかにしたことで,読者や一般も知ることになったわけですが,実在のレストランが架空のワインリストで賞を得ることだって簡単にできるわけです。WSがチェックする一時期だけ,Webサイトにワインリストを提示するといったことだってできるのですから。まず,最低限の情報公開として,レストランから提示されているワインリストはWSのWebサイトで誰でも見られるようにすることが必要ではないでしょうか。

また,WSが反論を書いたのは同誌のフォーラムにおいてだけ。肝心のRestaurant Awardsのページには何も記載がありません。こういったところも誠実ではないように見えてしまうのですが。