「宮部みゆきってすごいなあ」と思ったことがあります。模倣犯の前半を読んだときでした。日本のミステリーで面白いと思ったことはほとんどないのですが(経験値が低いというのも確かですが),このときはためいきが出るくらい面白かったです。ただ,それは最後まで続かず,後半も終わりに近付くほどグダグダになってしまったのはいただけなかったのですが。さて,ちょうどこの本を読んだところで「吉川英治文学賞」受賞ということで,感想を書いてみることにしました。

で,せっかく書くのになんですが,正直に言って「これが賞をもらうほどの本なの」というのが感想です。確かにうまい。文章の上手さ,組み立ての確かさでいえば100点あげていいくらい上手です。この人はきっと三題話でもさせたら右に出る人はいないのではないかなあと思うほど。でもそれだけ。後に何も残らないし,もう一回読みたいとも思いませんでした。

何がそう感じさせるのかを考えてみたところ,結局登場人物,特に主人公の魅力の低さがすべてのような気がします。あえて普通の人を登場させることで,普通の人に普通に起こりうる怖さを伝えたかったのかもしれませんがそれではねえ…。ミステリーってやっぱりそこに尽きるような気もするので。

力がある作家なのは分かるので,魅力ある人物の創造にもっと力を入れてほしいなあと思いました。

でもまあ,2,3時間ひまつぶしするにはいいと思いますよ。それようの本としては最適かも。



ちなみにこの本,図書館で借りたのですが,予約をしたときは単純計算で一人2週間ずつ借りたら1年後くらいに順番が回ってくるという状況でした。ところがみるみるうちに順番が上がっていき,実際に待ったのは4ヶ月くらい。つまりみんなすぐに読み終わって返しているということなんですね。