禁酒法後の米国は、ワイン作りも、ワイン市場も、ほぼゼロに近いところからの再出発でした。手探りで進む中、ワイン作りの推進役となったのカリフォルニア大学Davis(デーヴィス)校、通称UC Davisです。


例えば、最初のうちは、どのブドウをどこに植えるのがいいのか、といったことも分かっていませんでした。例えば、Pinot Noirは涼しいところがよく、Zinfandelは比較的暑いところを好むといった、今では常識的な知識もなかったのです。UC Davisの研究者だったMaynard Amerine(メイナード・アメリン)はWinkler(ウィンクラー)とともに、広範囲における実験から、温度が最も重要であるということに気付き、1944年に「積算温度」による「気候区分」を考案しました。


積算温度とはブドウが生育する4月~10月の日中の平均気温(華氏)から50を引き(華氏50°=摂氏10°)、その総和を求めたものです。これが2500未満だとリージョンIで、後は500単位でリージョンII~リージョンVまでを決めています。これが気候区分です。AmerineはリージョンIではChardonnay、Pinot Noir、Gewurztraminer、リージョンIIではCabernet Sauvignon、Merlot、Sauvignon Blanc、リージョンIIIではZinfandelなどが向いていることも見つけました。カリフォルニアをリージョンで分けた地図も作りました。


現在では積算温度のモデルはあまりにもシンプルすぎるという意見はありますが、ゼロから実験によって発見したことを考えると、その功績は大きいと思います。


ワイナリもUC Davisの研究を積極的に取り入れてワインを作るようになりました。後年、それは「技術偏重」として非難されることもあるのですが、未熟だったワイン業界が、ワインをきちんと作れるようになるためには必要なステップだったのです。