カリフォルニアのスパークリング・ワインといえば、マム、シャンドン、ロデレールなど、フランスの大手シャンパーニュ・メーカーのものが中心になっているという印象があります。また、クオリティ的にはどうしてもシャンパーニュにはかなわないと考える人が多いのではないかと思います。

ソムリエの千葉さんに言わせると、そもそもカリフォルニアでいいスパークリングを作るのは難しいとのこと。
基本的にカリフォルニアでスパークリングを作るというのは、シャンパーニュで濃厚なカベルネを作ろうとするぐらい無謀な事だ。(繰り返すが、カリフォルニアの方が気候が多様である為、極一部でスパークリングに適した畑はある。)
多くのスパークリングは糖度だけシャンパーニュのそれと合わせて作るだけでフレーバーが無い。光合成が活発になるカリフォルニアでは仕方がないことだ。


その千葉さんをして、これまでのカリフォルニアのスパークリングとは別物というのが、「ウルトラマリン(Ultramarine)」。
このウルトラマリンは別物。表面的にシャンパーニュを模倣して作った痩せ細ったものでもなく果実味だけで奥行が無いタイプでもない。カリフォルニアらしくかつ滋味深さがある。



このウルトラマリンを作っているのがマイケル・クルーズという人です(California's new garage sparkling - and the winemaker behind it - Decanter)。

この人、UCデイヴィスを卒業していますが、ワインを学んだのではなく、分子生物学で学位を取っています。卒業後もUCバークレーやUCサンフランシスコの研究所で働いていました。そして2006年に初めてワイン業界に職を得、2008年にはウルトラマリンを設立しています。

その過程では、シャンパーニュにおけるグロワーズ・シャンパーニュへの興味というのがかなり影響したもようで、ウルトラマリンは最初からスパークリング専業、しかも他のワイナリーからの依頼によるスパークリングを作るカスタム・クラッシュを兼ねるという形になっています。

また、スパークリング・ワインの醸造といえば、一番の特徴は瓶内二次発酵で、その過程で、ボトルを少しずつ回転させて便の口に澱を集めるという作業がありますが、大手ではそれを機械で行うのに対し、ウルトラマリンではすべて人手で行います。

畑はソノマ・コーストの銘醸畑チャールズ・ハインツ。太平洋から12kmほどしか離れていない、非常に涼しいところにある畑です。

実はウルトラマリンのスパークリング、日本にも昨年ごくわずかだけ入荷していました。残念ながらあっという間に売り切れ、その後は入ってきていないようですが…

ウルトラマリンのほかにも、ベッドロックのモーガン・ピーターソンが手がけるアンダー・ザ・ワイヤー(「スパークリングワインにもテロワールを!モーガン・ピーターソンの新プロジェクト」で取り上げています)など、カリフォルニアのスパークリングにも新しい息吹が出てきているのは興味深いことです。

こちらもベッドロックのモーガンが作るロゼ・スパークリング。カリニャンが80%で残りがピノ・ノワールとシャルドネ。