Napa Valley Grapegrowersが2016年11月8日に開催したRootstockカンファレンスで、ブドウの収量とワインの品質の関係について興味深い講演がありました(Balanced Vines Produce Better Wines - Wines & Vines)。

講演者は、E&Jガロのニック・ドクーズリアン(Nick Dokoozlian)博士と、オレゴン州立大学のパトリシア・スキンキス(Patricia Skinkis)助教授。ドクーズリアン博士はUCデイヴィス時代から有名な研究者で、現在はガロで栽培・化学・醸造の副社長を務めています。

一般に、ブドウの収量が少ないほど、ワインの品質は高くなると考えられており、実際に、高品質のワインの説明では畑の収量の少なさを引き合いに出すことがしばしばあります。

しかし、ドクーズリアン博士によると、その相関は明らかでないとのこと。この考えは欧州、主にフランスから来たもので、フランスでは気候の関係などで、確かにそれは成り立っているのですが、カリフォルニアには当てはめられないのだそうです。

ガロは数多くのブドウ畑を持っていますが、収量が多くて高品質のところもあれば、収量が低くて高品質のところもあるとのこと。

問題の一つは、収量の問題は、畑の面積だけを見ており、畑の管理や、剪定などを考慮に入れていないこと。

博士によると、収量と、太陽にさらされる葉の面積との関係は非常に重要だとのこと。カベルネ・ソーヴィニヨンの場合、10cm2/gと14cm2/gの間で、急激に品質が上がるとのこと。ピノ・ノワールでは、品質の上がり具合はカベルネほどではないですが、4cm2/gと8~9cm2/gの間でやはり品質の上昇が見られるとのこと。

ブドウの房の数を減らすこと(クロップ・シンニング)は、収量あたりの葉の面積を上げる手っ取り早い方法ですが、実はそれを20~40%やってもあまり品質には影響せず、品質に影響を与えるには75%も減らさないといけないとのこと。

また、緑の実を落とすことは熟成を早めるのには役立ちますが、品質にはあまり影響していないそうです。

博士は低収量の畑でよく使われている、枝を縦方向に伸ばすバーティカル・シューティングは前述の日照の面であまりよくないとして好まず、スプリット・キャノピーが多くの地域で優勢だとしています。

バーティカル・シューティングの例
オーガニックで栽培されている畑(Ovid)
スピリット・キャノピーの例
ホーニッグの畑

結論としては、バランスの取れたブドウが高品質なワインを作るということで、収穫を減らしすぎない方がいいとしています。「ほとんどのナパとソノマの畑は収量を減らしすぎ」とのこと。

一方、オレゴン州立大のスキンキス助教授はオレゴンのピノ・ノワールについて話をしました。スキンキス助教授は、枝1本あたりの房の数と品質との関係を調べたところ、1枝あたり0.5房だと野菜っぽく、1.5房が最適、自然の平均は1.8房だったとのこと。また、房の数と糖度やPHなどはほとんど関係なく、一番大きな影響があったのはアントシアニンだったとのことです。

ただ、カリフォルニアとオレゴンは生育条件が大きく異なるので、これをそのままカリフォルニアに適用することは難しそうです。

これまで、収量と品質についての研究はあまり見たことがなかったので、これから多く議論されることになるのかもしれないですね。興味深い話題でした。