カレラの創設者ジョシュ・ジェンセンと現在のワインメーカーであるマイク・ウォーラーが来日し、雑誌「ワイン王国」とコラボしたセミナーが開かれました。ワイン王国の「ただいま!から20分でおうちワイン」で料理を担当する沢樹舞さんが、カレラのワインに合わせた料理を作り、それとのマリアージュを楽しむというイベントです。

ジョシュ・ジェンセン氏。現在はワイナリーをダックホーンに売却してしまったため、創設者という立場です。

2009年からワインメーカーをつとめるマイク・ウォーラー氏。ワイン造りの基本メソッドはジョシュ・ジェンセン氏時代と変わっていません。

ワインはセントラル・コーストのシャルドネとピノ・ノワール2015年とジョシュ・ジェンセン・セミナーのシャルドネとピノ・ノワール2016年。また最後にライアンの2012年を試飲しました。



料理は、シャルドネに合わせたのがグラタンフィーノワ、野菜肉巻きフライ(菜の花と新生姜)、蟹とネギとオレンジのピンチョスの3品。ピノ・ノワールに合わせたのが鴨スモークとイチゴのピンチョス、四川風麻婆豆腐、トマトのすき焼きの3品。

手前の3品がシャルドネに合わせた料理です。




シャルドネはグラタンのまったりとした風味にもよく合いますし、フライともいいマッチングでした。ピノ・ノワールは四川風麻婆豆腐や、トマトのすき焼きに入っていた山椒の風味とよく合います。そういえば「神の雫~マリアージュ」で麻婆豆腐に合わせていたのもカリフォルニアのピノ・ノワールでした。特にすき焼きは、ワインメーカーのマイク・ウォーラー氏絶賛でした。

トマトすき焼きを調理する沢樹舞さん


さて、今回のワインのセントラル・コーストは、自社の畑でなく購入したブドウで作っているワインですが、品質は非常によくなってきています。例えばピノ・ノワールで見ると2007年以降、ワイン・アドヴォケイトで90点を切ったことがありません。それもそのはずで、実は使っている畑は一流のところが多いのです。サンタ・バーバラのビエン・ナシードやシエラ・マードレ(シャルドネ、ピノ・ノワールとも)、ピノ・ノワールのソロモン・ヒルズ、シャルドネのタリー、etc。単一畑のワインになってもおかしくないような畑ばかりです。ジョシュ・ジェンセン氏によると、畑のブドウの木が成熟して根を深く張ったことにより品質が上がったのだろうとのことでした。また、セントラル・コーストのワインも自社畑のワインと同様、天然酵母で醸造しているとのことでした。ただ、新樽率は10%程度と自社畑の15%程度より低くなっています。

そして、今回明らかになったのが、日本オリジナルのキュベであるジョシュ・ジェンセン・セレクションの作り方。セントラル・コーストのワインに自社畑のワインを少しブレンドして作っているのかと思っていましたが、だいぶ違いました。

カレラにとって日本は最大の輸出国であり、多いときは4割ものワインが日本向けになると聞いていますが、ジョシュ・ジェンセン・セレクションもその日本に向けたワインなので、セントラル・コーストのワインと並行してブレンドを決めていっているのだそうです。

特にシャルドネの場合は、和食に合わせることを意識して、セントラル・コーストと比べて酸がしっかりとしたブレンドに仕上げているとのこと。シャルドネは自社畑のワインはピノ・ノワールと比べて少ないので、ブレンドは3%程度にとどまっています(入らないときもあります)。

一方、ピノ・ノワールの場合は自社畑の生産量もそこそこありますから、そちらが豊作かどうかによって、ジョシュ・ジェンセン・セレクションに回せる量が変わります。そこが味のベースになっているとのこと。例えば今回試飲した2016年でいうと17%も自社畑のブドウが使われています。

実売価格でいうとジョシュ・ジェンセン・セレクションの方が数百円高くなっていると思いますが、実際にはセントラル・コースト自体のクオリティも高いので、品質的な差はそれほどなく、個性の違いと感じられました。

シャルドネのセントラル・コーストは柑橘系の味わいに軽くバニラの風味。非常にバランスよく美味しく飲めるワインです。一方、ジョシュ・ジェンセン・セレクションは確かに酸がきれいでミネラルを感じる作りでした。

ピノ・ノワールのセントラル・コーストはダークなフルーツとスパイスが効いたワインで、酸はおだやかですが深みもあります。一方、ジョシュ・ジェンセン・セレクションはもう少し赤系のフルーツが多く、また複雑さもかなりあります。カレラの自社畑はわりとダークなフルーツのイメージがありますから、ブラインドで飲んだら、セントラル・コーストの方をジョシュ・ジェンセン・セレクションだと思ったのではないかと思います。セントラル・コーストのクオリティの高さにはちょっと驚きました。とはいえ、最後に試飲した自社畑のライアン2012はやはりだいぶ格上の味わいでしたが。

先月、アカデミー・デュ・ヴァンのセミナーでカレラを取り上げましたが、試飲ワインは自社畑のものだけだったので、今回のようにセントラル・コースト系をじっくり味わうのは、これはこれで貴重な経験でしたし、あらためてこの普及ラインの品質の高さを感じました。


ボトル写真、ジョシュ・ジェンセン・セレクションのシャルドネが抜けてしまっています。まあご愛嬌ということで。